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金木犀香る季節~いつどこから来たのか謎の花~

金木犀
Written by すずき大和

9月下旬となりました。

まだ暑さが戻ってくる地方もあるようですが、残暑厳しかった8月の頃に比べると、だいぶ秋らしくなってきました。

そろそろ金木犀の香りが街に漂う季節です。

同じ地域にある木がほぼ一斉に同じ時期に咲き、10日から2週間というわずかな花期が終わると、一気に花びらを散らしてしまう金木犀。

春の桜と同じく秋の到来を強く感じさせてくれ、また、やはり桜と同じく短期間で、はかなくも潔くパッと散ってしまいます。

季節感の印象が強く、その香りの強さから誰しもが開花を意識せざるを得ない花ですが、桜のように開花時期を心待ちにされることも、花を見ながら宴に興じる習慣もない、ちょっと気の毒(?)な立ち位置の花かもしれません。

今回は、そんな金木犀と日本人の付き合いについてのお話です。



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日本の三香木のひとつ

一に香り、二に香り

早春の沈丁花、初夏のクチナシ、そして秋の金木犀は、花の香りが良いことで知られる日本の樹木

「三香木」

と言われています。

香りが“良い”というか“強い”、いや、もっと

“キョーレツ”

という印象かもしれません。

中でも金木犀は、手入れが比較的簡単で、大きい物は10m位まで伸び、枝の張り方が程よく楕円形にまとまった感じになるので、街路樹や家の垣根として、街中にたくさん植えられています。

そのため、開花のシーズンになると、町全体が金木犀の香りに包まれたようになっている地域も多いことでしょう。

庭木や街路樹に全く興味がなく、金木犀がどんな花か知らない人は少なからずいると思いますが、その香りを全然知らない人はほとんどいないのではないでしょうか。

開花の気付きは、実際に花を見るよりも、漂う香りによって知ることが多い樹木です。

かつてはトイレの芳香剤の代名詞だった

まだ下水道の整備が今ほど進んでいなかった時代、汲み取り式トイレの窓のすぐ外に金木犀を植えた家が、とてもたくさんありました。

消臭の科学がまだ発達していなかったので、強い匂いはそれよりももっと強い香りを被せることで消すのが一般的でした。

金木犀のキョーレツな香りは消臭にうってつけだったわけです。

といっても、花が香るのは一年でたったの10日余りです。

そこで、時代と共に金木犀の香りの芳香剤が発明され、一年中金木犀香るトイレが日本中でたくさん増えました。

1980年代までは、トイレ用芳香剤はダントツで金木犀の香りが市場を席巻していたのです。

強い香りが仇に・・・

その後、デオドラントの科学が発達し、トイレの水洗化も進み、そんなにキョーレツな香りの芳香剤は必要なくなっていきました。

1990年代に入ると、あっという間に金木犀の芳香剤は市場から姿を消しました。

最近では、悪臭を吸収・分解、原因菌を押さえるなどの化学作用で緩和しつつ、ほのかに良い香りが漂うようにする「消臭剤」が主力となっており、香りのラインナップとしてはラベンダーやバラ、柑橘系の香りが人気です。

金木犀の香り商品を出しているメーカーもわずかながらあるそうですが、探さないと見つからないくらいになっています。

しかし、金木犀の香りは、長い間トイレの芳香剤の定番として君臨してきたので、今でも年配者の中には

「金木犀=トイレの香り」

という印象が抜けない人がたくさんいるようです。

そもそも秋の訪れは、春ほど人々から心待ちにされるものではない、ともいえますが、誰も金木犀のお花見をしながら宴会しようと思わないのは、そんな“トイレ”の印象が影響しているのかもしれませんね。

金木犀のルーツ

花の色が違う仲間、銀木犀と薄黄木犀

金木犀の仲間は、中国南部が原産と言われています。

中でも桂林市は多くの群生地で有名です。

「桂」は木犀(中国語で「桂花」)のことを表わし、地名の由来にもなっています。

金木犀のことは中国語では「丹桂」と言います。

“丹”は朱色の意味があります。

花色が白い種類のものは、和名は「銀木犀」、中国語も「銀桂」です。

淡いクリーム色の花が咲く種もあります。

日本では

「薄黄木犀[ウスギモクセイ]」

と呼んでいますが、中国ではこの色が「金桂」です。

三種は開花の時期もだいたい同じ頃で、いずれの花も強い香りを放ちますが、その香りは微妙に異なり、最も強く香り立つのが金木犀です。

金木犀はどこからきたのか

ネット記事の中には、「金木犀は江戸時代に中国から来た」と書かれているものが多く見られますが、ほとんどが出典不明です。

専門筋から出ている情報を見ると、これはちょっと違うようです。

17世紀に中国から持ち込まれた種は「銀木犀」です(だから“色”の表現が同じなのかもしれません)。

三種の中ではこの銀木犀が原種で、金木犀、薄黄木犀はその変種として枝分かれしていったと考えられています。

日本語でも一般に「木犀」とだけ言うと、銀木犀のことを指します。

しかし、日本には、銀木犀の渡来以前、江戸時代よりずっと昔から、薄黄木犀があったことが確認されています。

静岡県の三嶋大社にある薄黄木犀は樹齢1200年とも言われ、国の天然記念物に指定されています。

古代にすでに銀木犀が渡ってきて日本で薄黄木犀に変化していったのか、薄黄木犀が渡ってきたのか、はたまた薄黄木犀は日本原産だったのか・・・実は未だにはっきりとはわかっていません。

金木犀は、どこかの時代に中国から渡ってきた説と、この日本古来の薄黄木犀が国内で変異した説の両方が言われており、これもまた、真相は解明されていません。

自生地がない木犀の仲間

今、日本で確認される木犀の木は、栽培種が植林されたものがほとんどで、自生地として確認されている所がありません。

木犀属は雌雄が別の木になります。

日本での自生種は6種類と言われ、代表的なのがヒイラギです。

ヒイラギは雌雄両方の株が見られ、金木犀によく似た花が咲いた後、結実しています。

しかし、金木犀と銀木犀に関しては、国内の株のほとんどが雄の木となっており、生け垣を作ろうと苗木屋さんに注文しても、全部雄の苗木がきます。

そのため、日本の金木犀が実を付けている所はほとんど見られません。

増やす時は挿し木によって増やされます。

現在の金木犀の多くは同じ木のクローンであり、だから一斉に同じ時期に咲いて散るものと思われます。(これもソメイヨシノと同じですね)


こう聞くと、やはり金木犀は雄株だけが外から持ち込まれたものであるような気がします。

が、何百年もの間、誰も全く雌木を輸入しようとも種から育てようとも試みなかった、というのも何か不自然な話です。

中国の丹桂は雌雄の木があれば結実しているということですから、そもそも丹桂と日本の金木犀は別の種であり、日本の種は何らかの理由で雌木が退化した、という見解も捨てがたいようです。


中国の桂花と日本の木犀を遺伝子比較するなどの研究は、今の所記録が見当たりません。

秋の到来を感じさせてくれる代表的な風物詩である金木犀の香りですが、その研究はまだあまり進んでおらず、そのルーツには謎がたくさん残されています。

やはり、多くの研究があり、日本の四季を象徴する代表的なものとして愛されている桜に比べると、なんとなく不憫な気がする樹花です。

たまには、香りで開花に気付く前に、蕾が膨らんでいる金木犀の様子を探してみようかな・・・・。

まさケロンのひとこと

車内がすっごい臭いクルマとかあるよね。そういうところに金木犀の花をたくさん置いてみたらどうだろう!

masakeron-happy


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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。