大寒

大寒の水は自然の恵~昔の人の知恵が詰まった寒餅の風習~

冬の川
Written by すずき大和

毎日寒い日が続いています。

暦の上では今は一年で一番寒い時季「大寒」です。

毎年だいたい1月20日頃から節分までの期間です。

季節を感じるために作られた暦が二十四節気ですが、昔は一年の始まりは大寒の直後にくる「立春」からとされていました。

大寒は二十四番目、一年最後の節気です。

新たな一年を始めるための準備の時期とも相まって、昔の人はこの時季に酒・味噌・醤油などを仕込みました。



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自然が育むきれいな水の恵を知っていた昔の人たち

冬場より夏の常備保存食作りのほうが気を使う

電気のなかった時代は冷蔵庫など当然ありませんでしたから、日持ちがして栄養価の高い保存食を作ることは、生きる上でとても大切でした。

冬眠する動物が木の実をたくさん巣に貯め込むように、保存食は、作物の取れない冬場にこそ必要なものであるようにも感じます。

漬物などの発酵食品や干物は、確かに冬場を乗り切るための保存食として収穫期に作られます。

秋に獲れた大量の収穫物を「氷室[ひむろ]」など自然の冷蔵庫を利用して保管できた冬は、実は根菜や果実、豆など多くの農作物もそのままとっておけました。

加工品を含め「保存」自体にはさほど難しい問題はありませんでした。

それよりも、暑い夏の時季に、常備保存する食材、冒頭にあげた味噌や醤油や酒などが腐らないように保存することのほうが、気を付けなければいけない難しいことでした。

寒の水は一年間腐らない

暑い時期に食べ物が痛んでしまうのは、『雑菌が繁殖しやすいため』です。

保存食は、水分を抜いたり(乾物)、塩素や酸を多くしたり(塩漬け・酢締め)して、細菌が生きられない工夫をしたのです。

加工の段階で加熱するものは、そこで一度菌を死滅させました。原材料にも(加熱加工しない場合は特に)気を使いました。

気温が最も低くなる時季は、水の中の雑菌も最も減少しています。

昔は「寒の水は一年間腐らない」と言われました。

わざわざ大寒の日に泉などから水を汲んで、樽に詰めて保存し、夏場に使う習慣もありました。

味噌などの仕込みに寒の水が使われたのも、そんな腐敗防止の工夫のひとつなのです。

酒や調味料の他、高野豆腐(凍り豆腐、凍み豆腐)やそうめん・寒天などの加工品もこの時期に仕込みが行われました。

寒の水で作る寒餅は、縁起担ぎの食文化

寒の水はスビリチュアルなパワーを秘めている

そんな有難い「寒の水」には霊力がある、と言われて尊ぶ文化も生まれました。

経師屋(表具屋)さんでは、ふすまや障子を貼るための糊も、年末で需要が高まるからという理由だけではなく、縁起を担いでこの時季せっせと仕込まれました。

霊力を授かるためにわざわざこの時期に滝に打たれたり水を被ったりして修行する人たちも表れました。

寒中水泳を神事として行う風習が残る地方も複数あります。

今も伝わる寒餅の風習

寒の水で炊いた米で餅をつく「寒餅」の風習も全国各地で見られ、21世紀の現在も尚、餅加工業や和菓子屋さんなどの多くは、この時季になると寒餅の製造販売を行っています。

一般的な寒餅は、のして棒状にしたお餅をスライスした板餅を干したものです。

クチナシやウコン、ヨモギ、黒砂糖、ゴマ、小海老、青のり・・・などなど地方や時代によって様々な材料で色付けしたカラフルな寒餅は、保存食としてももちろん重宝し、焼いたり揚げたりして手軽なおやつとして食べられました。

霊力のある寒の水で作る寒餅は、食べれば一年間病気をしないで元気に過ごせる、という縁起物でもありました。

昔の人の知恵に感謝して寒餅を食べよう

漢方薬としてのもち米

大寒にお餅を食べる風習は、ただ縁起が良いだけではなく、最も寒さ厳しい時期を乗り切るための栄養補給としても、とても合理的なものです。

もち米はご飯として食べられる普通のうるち米に比べ、アミロペクチンというでんぷん成分が多く、粘り気が強い炊き上がりとなります。

栄養学的にはうるち米ともち米の違いはほとんどないと言われますが、漢方の世界でははっきりと区別されています。

もち米は漢方では「糯米[だべい]」と言います。

中国の古典の記述に

「あらゆる米から膠飴[こうい]はつくれるが、糯米で作ったものだけが薬になり、他は食材になるだけだ」


とあります。

膠飴とは生薬の名前で、もち米から作った水飴のことです。

『どんな米でも飴になるが、もち米から作った飴しか薬にならない』ということです。

それだけもち米に含まれるでんぷんは良質のものということでしょう。

もち米パワーで寒邪を吹き飛ばせ

糯米の効能としては、利尿や発汗を抑制する作用と、身体を温める作用のふたつが言われています。

寒くてトイレが近くなる時季、『身体を温め尿意を押さえる』には、お餅はうってつけの食品です。

ご飯よりも高カロリーなお餅は、疲れやすい人の『滋養強壮』にもなります。

もちろん冷え性の人や冷えからくる『下痢をしやすい人』にもおすすめです。

昔の人は、寒さによって体調を悪くするのは、寒気の中にある邪気(寒邪)のせいだと考えていました。

寒の水の霊力ともち米の栄養パワーが、身体の中の寒邪を追い払ってくれる食べ物が、寒餅なのです。

ホームベーカリーでお手軽に手作り寒餅を

最近、ホームベーカリーがある家庭が増えています。

スイッチひとつで力と時間の要るパン種を自動で作ってくれる機械は、杵と臼がなくても簡単にお餅つきもやってくれます。

近頃はホームベーカリーを使ってお餅も作る家庭が徐々に増えているそうです。

寒餅も家で作れば、干し餅ではなく、つきたてのモチモチが食べられます。

インターネットの料理レシピサイトを見ると、「寒餅」のレシピもいくつも見つかります。

色付けにパプリカなどの西洋野菜を使ったり、斬新な発想の食材をアレンジしたりしたものもありました。

ホームベーカリーがおうちにある人は、せっかくですから、良かったら寒の内にぜひ一度お試しください。

お米屋さんに寒餅の注文をしなかった人も、乾燥の完了した寒餅の小売りが始まるのはこれから立春以降の時期になってきます。

店頭で見つけにくかったら、ネットのお取り寄せ商品もたくさんあります。

伝統的製法では、藁紐で編み込むように繋いで干しますが、昔ながらに紐に吊るされた状態で売られているものもあります。

焼いたり揚げたりするのが面倒くさい人は、揚げてかきもちにしてくれたものも販売されています。

あなたも良かったら、色とりどりの寒餅で、健康維持と厄除けのウンチク話にでも花咲かせながら、たのしいおやつタイムをお楽しみください。

まさケロンのひとこと

冬は寒いから、朝お腹こわしちゃったりとか多いんだよね。今年の冬はもち米パワーに頼ろう!

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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。