古生物・化石

ブロントサウルスはアパトサウルスじゃない!検索の謎よさらば

Written by すずき大和

いつの時代も、子どもたちは恐竜が大好きです。

スーパー戦隊ものもだいたい10年周期で恐竜モチーフが表れます。

ハリウッドリメイクの初作「パワーレンジャー」も恐竜でした。

昭和の時代には「恐竜が街にやってきた」という歌がちびっ子界ではヒットしていました。

ドラえもんの記念すべき劇場版長編映画の第一作は「のび太の恐竜」でした。

USJでもハウステンボスでも、恐竜テーマのアトラクションの人気は絶大です。



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巨大恐竜の人気No.1ブロントサウルスを知っていますか?

最近人気の恐竜たち

いつの時代も子どもたちの人気ランキングを見ると、「ティラノサウルス」「トリケラトプス」が不動の人気No.1・2の座を保っています。

3位以下を見ると、30~40年前と現在とでは、随分と様変わりしています。

最近人気が高いのは、主に特徴的なフォルムのユニークな外見のものです。

背中にギザギザがある「ステゴサウルス」については40年前も人気者でした。

  • 背中に魚の背びれのような突起が付いている「スピノサウルス」
  • 鋭い3本のかぎ爪の「デイノニクス」
  • ゴツゴツの甲羅のような背中の「アンキロサウルス」
  • 頭部が大きくて固い石頭恐竜「パキケファロサウルス」
  • 小さいけれど獰猛でおっかない顔の「ヴェロキラプトル」
  • てっぺんが後ろにビューンと伸びたような頭の形は「パラサウロロフス」

そして巨大で細長い首をもつフォルムの「ブラキオサウルス」も必ず上位に入ります。

が、これらは、親世代より上の人たちには耳慣れない種類ではないでしょうか。

昭和の恐竜ブームの人気恐竜

この人気恐竜たち、よく見れば、ほぼ「獣電戦隊キョウリュウジャー」のロボットモチーフまんまです!


しかし、キョウリュウゴールドのモチーフ「プテラノドン」とバイオレットのモチーフ「プレシオサウルス」は、最近の人気ランキングではあまり上位には上がってきません。

翼竜(空を飛ぶ種類)と首長竜(水の中で暮らす種類)は、40年前はベスト10に必ず入る人気だったので、この2種は制作者世代の思い入れによるキャスティングでしょうか。

「恐竜が街にやってきた」の歌詞を見ても、ティラノやトリケラに先駆けて歌われているのは首長竜と翼竜です。

“多摩川の濁流かきわけさかのぼる”

  • 首長竜の「エラスモサウルス」

“東京タワーのてっぺんにまいおりる”

  • 翼竜は「ランフォリンクス」です。

映画「のび太の恐竜」の主役恐竜も首長竜の「フタバスズキリュウ」でした。

「エラスもサウルス」「プテラノドン」もしっかり出てきますよ。


そして、押し合いへし合い街にやってくる恐竜軍団の先頭に立っていた恐竜は・・・

また、映画の名場面のひとつ恐竜同士の戦いでティラノサウルスの対戦相手は・・・

『ブロントサウルス』

でした。

昔の子どもが大好きな細長い首の巨大な恐竜は、「ブラキオサウルス」より圧倒的に『ブロントサウルス』だったのです。

実はアパトサウルスだったんです。って誰も聞いてないし!?

公式な場からはほぼ消え去っていたブロントサウルス

今の若い親や子どもの多くは、「ブロントサウルス」を知りません。

恐竜図鑑を見てもどこにも載っていませんでしたから。

ネットで検索すると、なぜか筆頭には「アパトサウルス」が出てきてしまいます。

そうなんです。ブロントサウルスは、ここ30年位の間、ほとんど全てアパトサウルスと言い換え・書き換えられてきたのです。

「のび太の恐竜」の漫画本は、今は全て「アパトサウルス」に台詞を差し替えて発行されています。

なぜアパトサウルス?

19世紀、アパトサウルスの化石発見の数年後、ブロントサウルスの化石が発見され、それぞれに命名されました。

が、1903年にこの二つは全く同じ種類だという研究結果が発表されます。

それを受けて、学術界では先に命名したアパトサウルスで統一することになりました。

が、「同じでしたよー」という論文発表ニュースが地味すぎて、世界になかなか周知されなかったのです。

図鑑や博物館展示や映画や一般文献では「ブロントサウルス」の名前で紹介され続け、それが一般に広まって行きました。

TVもインターネットもない時代ならではの事象でした。

研究が進むに従いわかってきた間違い

実は、アパトサウルスは長い間頭の骨だけが発見されていませんでした。

そのため、博物館の骨格展示の時は、頭部だけ形が似ている別の恐竜の骨をあてがいました。

120年後にようやく頭の骨の化石が発見されると、全然違う形でした。

また、骨格から予測されたアパトサウルスの大きさがあまりに大きかったので、重い身体を支えて、陸生の獰猛な肉食獣から逃れるためには、普段は水中で生活していたという学説が立てられていました。

これらの予測から、鼻先のまあるい首長の恐竜が、水面から首だけぬっと出している復元図が多く描かれていました。

しかし、その後の研究により、アパトサウルスは鼻先の尖った顔で、陸生恐竜だったことがはっきりわかってきました。

1970年頃、グローバルに情報がリアルタイムで行き来する時代になり、間違いを改め、ちゃんと伝えよう!という動きが高まります。

かくして、生態の解説も名前も正しい学術に基づくものに改められ、恐竜図鑑や博物館から、それまでの復元図や説明案内がブロントサウルスという名前ごとほぼ消えることになりました。

帰ってくる?ブロントサウルス

2015年、ブロントサウルスとアパトサウルスは違うと発表される

今の子どもたちの多くは、そんな訳でブロントサウルスを知りません。

ブロントサウルスでインプットしていた世代は、自分の子どもが恐竜図鑑を見る年になって初めて、自分の好きだったあの恐竜が、今は幻と消えていることを知り、驚きと寂しさを感じることになるのです。

しかし、2015年4月7日、ポルトガルとイギリスの研究チームが、新たな見解を発表しました。

最新の発見に基づき多くの化石を調べた結果、ディプロドクス科の中でアパトサウルス属とブロントサウルス属は別々に存在したと結論づけられる

というのです。

再び解説と紹介が始まるブロントサウルス

これまで、一律全てアパトサウルスとして紹介・展示されてきたものの中から、はっきりとブロントサウルスの特徴が判明できるものは、名称を元に戻すようになるかもしれません。

図鑑や博物館に、改めてブロントサウルスという項目が立つかもしれません。

「ブロントサウルス」と入力しているのに、「アパトサウルス」が筆頭に出て来る検索サイトの“謎めいた仕様”は、ぜひ改めてほしいです。

幻と消えてしまったブロントサウルスが、再び人気の恐竜として子どもたちの間に蘇ってくる日が、もしかしたらまたいつかくるのでしょうか。

もともと、ブロントサウルスが幻だったことにすら気づいてなかった人は少なくありません。

子どもの本での紹介が復活したところで、何事も無かったかのようにスルーされてしまうかもしれません。

が、まあ最近そんな風なニュースが話題になっていたよ、という単なる世間話の報告でした・・・・

大好きで馴染み深かったブロントサウルスの名称が、今の恐竜本から抹消されていたことに、多少なりとも心痛めていた人はぜひ、再びワクワク心躍らせてくださいませ。

ドラえもんの漫画、台詞が「ブロントサウルス」に戻るといいな・・・・。

まさケロンのひとこと

まさケロンはドラえもん「のび太の恐竜」で恐竜が好きになったな~。そのうち「ブロントサウルス」って検索したら「アパトサウルス」と間違えられていたってところまで検索にでてくるようになると思うよ!

masakeron-happy


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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。