政治・経済

戦後レジームからの脱却、あなたはしたい?したくない?

日本の首都東京
Written by すずき大和

2015年5月、国会の党首討論の場で、安倍晋三総理が「ポツダム宣言」の条文について

「つまびらかに読んでおりませんので承知はしておりません」


という発言をしました。

直後、ネット内はかなりその話題で盛り上がっていました。

SNSにも多くの反応が流れていたので、

  • 「ポツダム宣言」
  • 「戦後レジームからの脱却」


という言葉を目にした人はたくさんいたようです。



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戦後レジームからの脱却って何?

安倍さんが今一番やりたいこと

今、国会では「安全保障関連法案」の改正が進められています。

これは、自衛隊が「集団的自衛権の行使」ができるようになるための法整備です。

日本は憲法で

「国際紛争を解決するための手段として武力行使してはいけない」


と定められているため、今までは日本が攻撃されていなければ、こちらから相手を攻撃することはだめ!でした。

安倍政権では、憲法は変えずに、その解釈を変えることで、武力行使OKにしました。

しかし、本当は解釈ではなく、憲法を変えたい、というのが安倍さんの本音です。

総理は、憲法を頂点とする戦後の日本の政治や教育、経済、雇用、安全保障などの法律やしくみ、その考え方を根本的に見直したい、という考えを持っています。

本人はこれを「戦後レジームからの脱却」と言っています。

憲法改正は、その最も目指すやりたいことです。

戦後レジームとは?

戦争中の日本は、軍が国をリードする大きな力を持っていました。

近代の日本は、軍事力を誇示してアジアから南太平洋にかけての広い地域に覇権を広げようとしていました。

しかし、国際社会では、武力を背景にしてよその国の統治権を奪うのはいけないこと、という価値観が、だんだん強くなっていました。

覇権の拡大を止めない日本やドイツと、欧米の連合国が戦争になり、負けてしまいました。

戦勝国は日本に対し、軍国主義をやめさせ、国民主権の民主主義国家に生まれ変わらせようとしました。

そして、進駐軍が統治しながら、新しい憲法や社会の仕組みが作られました。それが「戦後レジーム」です。

戦後レジームのままではダメなのか?

  • 日本が戦争に負けたら、武装解除させること
  • 日本が植民地としていた地域などの統治権も返上させること
  • 今後二度と軍国主義・覇権主義国家にさせないこと
  • そのために連合軍が統治して、新しい国のしくみをつくること


これらは、戦争末期に連合軍側で相談して既に決められていました。

これを条件にして日本に降伏を迫ったのが「ポツダム宣言」です。

日本は、最初はこれを全面拒否します。

しかし、ポツダム宣言の中には、

「日本が受け入れなければ、武力で日本を壊滅させる」


という主旨も書かれており、実際に、拒否した直後、広島と長崎に原爆が落とされました。

日本は結局無条件降伏しました。

そして、ポツダム宣言の内容に沿って、戦後の日本が作られました。

安倍さんたちは、この敗戦から主権回復までの一連について、

「日本国憲法を初めとした戦後レジームとは、

『戦勝国側から武力の脅しによって、一方的に押し付けられた価値観・しくみ』

なので、日本が真の独立国家になるには、日本人が改めてレジームを作り直すことが必要だ」

と、考えています。

これが「戦後レジームからの脱却」の動機です。

ポツダム宣言読んでない?

ポツダム宣言を本当は受け入れたくない

戦後レジームとは、いわばボツダム宣言の具体化です。

それからの脱却を心情とする安倍さんが「ポツダム宣言読んでない」と言ったものですから、リベラル派の人たちはこぞって問題にしました。

それがネットでの大騒ぎの真相です。

しかし、保守派の人たちは、安倍総理を庇護するコメントをいくつも寄せています。

まとめると、

“あれはポツダム宣言の見識を受け入れることを無難に拒否するための作戦だった”


と分析されています。

日本が侵略国家だったというのは自虐的歴史観

ポツダム宣言では、先の戦争で「日本は侵略するために無責任に軍事侵攻した」と断定しています。

しかし、日本の政治家の中には、そういう判断は“自虐的歴史観”で、真相はそうではなかった、と主張する人たちがたくさんいます。安倍さんは、それらの議員の急先鋒です。

党首討論での野党の質問は、

「ポツダム宣言で定められた内容を認めて、日本の国は間違った戦争をしたと思っているか」

というものでした。安倍さんは認めるか認めないかを答えるかわりに、「つまびらかに読んでない」ので

「論評は差し控えたい」

と言ったのです。

戦後の世界はポツダム宣言の見識を正しい歴史認識として、それを踏まえて発展しました。

日本は宣言を受け入れたことで、再び国際社会に復帰を許されました。

ですから、日本の首相が正式にポツダム宣言の内容は認めないと明言すれば、大ごとです。

安倍さんはそれをわかっていますが、自分の心情としては自虐的歴史観を世界に改めてもらいたいと願っている、と、多くの人が分析しています。

戦後レジームからの脱却推進派の中の矛盾

日米安保条約と日本の安全保障の問題

安倍さんは、「押し付けられた憲法じゃダメ!」との思いから、改憲を切望しています。

ならばなぜ、集団的自衛権については、憲法の条文を改正することなく、解釈改憲にしてしまったのでしょうか?

ひとつは、既成事実を積み上げることで、憲法改正を早める作戦でしょう。

もうひとつは、とにかく自衛隊が同盟国(主にアメリカ)の軍事作戦に協力できる体制を早く作りたかったからだと言われています。

安倍さんは、日本の安全保障には、アメリカ軍を駐留させて守ってもらうことが、絶対に必要だと考えています。

そして、守ってもらう代わりに、アメリカの軍事行動に協力することが、軍事同盟を強固にするために必要だとも考えています。

そのためにも、それを阻む憲法9条は改憲したいわけです。

アメリカに民主国家を作るための指図を受けたことは押し付けだからダメですが、アメリカに軍事イニシアティブを取られ、沖縄に基地を押し付けるのはダメじゃないようです。

アメリカに支配されたくないのか、されたいのか、ちょっとわからなくなる点です。

自虐的歴史観の矛盾

自虐的歴史観との見方を支持する人は、

「日本がアジアを侵攻統治したのは、アジアの国の近代化を助け、欧米国の植民地化を防ぐことで、アジアの繁栄に貢献するためだ」


と考えています。

確かに日本の統治下の中で、生産労働の機械化やインフラ整備が進み、産業の生産性や教育水準が上がった国もありました。

しかし、植民地とその出身者たちは、決して日本人と同等には扱われず、植民地の教育は母国語ではなく日本語で行われ、生活習慣などのしきたりや宗教までも、自国の文化を否定して日本式を強制されることも多々ありました。

特に朝鮮半島の人々は、日本人より劣った人間として差別されながら、日本の炭鉱労働や従軍慰安婦や日本軍の軍人として辛い苦労を強いられた人がたくさん出ました。

日本も、ポツダム宣言に沿って作られた戦後レジームのおかげで、民主的で平和な社会を築き、経済発展することができました。

が、それは「押し付け」だからダメで、日本が植民地で日本文化を強制したことは押しつけではなく、むしろ近代化が進んだことを日本の功績として評価してほしいと願うのは、やはり二重スタンダードではないかと思う人もいます。

戦後レジームからの脱却、したいですか?

戦後レジームからの脱却とポツダム宣言の内容の否定はつながっています。

「法律が今の時代に合わなくなったから変えたい」

程度の“やわな問題”ではないのです。

安倍総理を支持する人も支持しない人も、改めてそのことを確認して、考えるきっかけになったのならば、今回の大騒ぎも悪いことではなかったかもしれません。

今起きている改革は、今までの価値観や、国際社会の中での日本の評価が覆るかもしれない、大きなことです。

戦後レジームとポツダム宣言、あなたは脱却したほうがいいと思いますか?

まさケロンのひとこと

いざ憲法9条を改憲するとして、どういったものにするのかも大事なポイントだよね。
日本の平和を思っての「戦後レジームからの脱却」が有事を引き起こさないようにしたいな。

masakeron-normal


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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。