生き物 神秘・謎

キメラの不思議/本当の親子で遺伝子が他人!てことあるんです

Written by すずき大和

「キメラ」って知っていますか?

翼のあるクリーチャーを想像してしまった人は、ゲームのやりすぎ(笑)

からだの中に別の二種類の遺伝子細胞をもっている生物のことを「キメラ」といいます。

つまり、別々のからだの場所から採取した細胞を調べたら、同じ個体なのに遺伝子が一致しない!というケースが、ごく稀に発生するのだそうです。



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自分の子どもなのに遺伝子では親子じゃない

自分の精子による受精で生まれた子が、自分の子じゃなかった

2015年秋、アメリカのとある夫婦の間に生まれてきた子どもが、実在しない夫の兄弟の子どもだった!というSFチックなニュースが流れました。

子どもの血液型が夫婦のどちらにも一致しなかったため、遺伝子検査をしたところ、

「夫は子どもの父親ではなく、夫の兄弟が父親である」

ことが判明しました。

しかし、夫には男の兄弟は一人もいません。夫婦は不妊治療を受けており、子どもは人工授精でしたが、使った精子は間違いなく夫のものと断定されています。

夫の遺伝子を更に調べたところ、彼は異なる遺伝子を2種類持っている「人キメラ」だったことがわかりました。体内にある遺伝子の異なる細胞が、本来の男性のものとは異なる遺伝子の精子を作っていたのです。

人キメラが生まれる原因は、二卵性双生児

生き物はひとつの胚(受精卵)が細胞分裂して成長します。2種類の遺伝子を持っているということは、ふたつの胚から分裂したからだだということです。

人間の場合、本当は双子だったはずの子どもが、ひとりの身体に合体して生まれてきてしまうことが、時折あるのだそうです。

二卵性双生児として別々の個体として成長し始めた受精卵が、母親の胎内で早い時期に何らかの理由で合体してしまう、またはどちらかがどちらかを吸収して、どちらの細胞も互いに免疫作用で殺し合うことなくひとつのからだの中で育ってしまうケースです。

吸収される時期が遅かった場合、からだの中で別の人間の手足や内臓などのパーツが育ってしまう、または実際に手足や頭部などが二人分ついたからだになってしまうケースが見られます。

手塚治虫さんの漫画「ブラック・ジャック」という作品を覚えている人は、ピノコを思い出すかもしれません。彼女は、まさに双子のお姉さんのからだの中で18年間成長した、脳まで含む妹のからだのパーツを、奇跡の医術で別個体として蘇らせた人間でした。


うんと早い段階で合体すると、からだの中の部分によって遺伝子が違う細胞が混じった普通のひとりの赤ちゃんとして生まれます。この人たちがキメラです。

また、別々に双子として生まれても、二卵性双生児の約8%は、胎内にいる時に互いの血液が混じりあい、血液キメラとなっているそうです。

遺伝子検査しないとキメラかどうかわからない故のトラブル

遺伝子による親子認定の落とし穴

遺伝子検査の精度が進んだ現代、法的に親子の証明をするのに、遺伝子を証拠にすることが一般化しました。アメリカでは特に、虚偽の家族申請に関連する犯罪や保護の不正受給の取り締まりに厳しい社会です。

今回の夫婦の場合は人工授精だったため、精子が夫のものであることが証明できましたが、過去には何らかの理由で遺伝子検査をした時に、親子ではないと認定され、あらぬ疑いを掛けられてしまう、というキメラの実例もありました。

フェアチァイルド事件

2002年、ワシントン在住のリディア・フェアチャイルドさんは、妊娠3ヶ月の時に離婚し、生活保護を申請しました。

ふたりの連れ子との親子の証明に遺伝子検査をした結果、親子ではないと認定され、他人の子を自分の子として不正に申請したと見なされ、告訴されてしまいます。更に子どもたちは施設に引き取られることになりました。

リディアさんは、妊娠中の子どもの出産に弁護士と検察官、福祉局員に立ち会ってもらいます。生まれた赤ちゃんの遺伝子を検査すると、やはり母親と異なる遺伝子でした。

リディアさんは、遺伝子検査が絶対ではないことを証明しようとしたのですが、法は彼女が他人の受精卵を使って妊娠したに違いないと認定して、生まれた赤ちゃんまでも施設に引き取られることになります。

たまたま弁護士が、キメラの人が子どもと異なる遺伝子結果が出る例を知り、リディアさんの検査を申請します。からだの50ヶ所の細胞を鑑定した結果、子どもと一致する遺伝子が見つかり、リディアさんがキメラであることと親子関係が無事照明されました。

科学の発達途上段階で生まれる過誤

もっと遡れば、遺伝子検査の精度がまだ低かった時代、遺伝子検査を証拠に性犯罪者の冤罪を生んだ事例は、日本にもありました。

科学が発達することで、昔は解明できなかったことが、時代と共にどんどんできるようになってきましたが、データの解釈をする人間の思慮が及ばないことは、まだあります。

昔は安全だと科学者が保障した物質が、後になって危険だと分かった、またはその逆の事例はいくらでもあります。

犯罪捜査や人のルーツの認定のため、遺伝子検査の権威は絶大なものがありますが、それに頼り過ぎてしまうのは危険です。

世の中にはまだ人間の理解が及んでいない事象もこれまでの分析が間違っている可能性もあるわけで、人は科学と自然の前に、もっと謙虚な気持ちで臨まないといけないのかもしれません。

まさケロンのひとこと

まさケロンは「キメラ」といえば『翼のあるかっこいいやつ』ってイメージだったから、「人キメラ」って最初に聞いたときはついに天使か悪魔でも生まれたのかと思ったよ。

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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。