タクシー

タクシーの幽霊/都市伝説の霊の存在を尊重する意義を考える

タクシー
Written by すずき大和

怖い話系の都市伝説というのは、どの国にもあるものです。

「都市伝説」という言葉でジャンルが体系作られたのは、80年代半ばから後半頃です。アメリカの民俗学者ジャン・ハラルド・ブルンヴァンが、1981年に、アメリカ各地で語り継がれてきた様々な現代社会の怪談をまとめた書籍を出版し、そこでこれらの伝承を

「Urban Legend(アーバンレジェンド)」

と呼んだことがきっかけです。

この本の表題になった伝説

「消えるヒッチハイカー」

は、日本にも類似の話がたくさんあり、

「タクシーの幽霊」

の都市伝説として知られています。



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世界に伝わる「自動車に乗る幽霊」の話

消えるヒッチハイカー

アメリカに1930年代頃から伝わる自動車に乗り込んでくる幽霊の話とは、

“ヒッチハイカー(多くの場合若い女性)を乗せたが、実は幽霊だった”

というものです。

“助手席や後部座席に乗っていたはずの人間が、気付くと消えていた”

“目的地の家を訪ねると、乗せたのは、数年前に死んだその家の住人だとわかった”

などがよく聞くパターンです。

乗せるに至るまでのストーリーや、場所、幽霊の年齢性別など細部は話によっていろいろ違っています。有名な話の場所は、心霊スポットとして観光地化しているところもあります。

タクシーの幽霊

ヒッチハイク文化がなかった日本では、車に乗せてもらうといえば、タクシーの話です。

“タクシーに乗せたはずの客が、気付くと消えている”

というものです。

有名なのは、

“若い女性を乗せて目的地に着くと消えていて、シートがびしょ濡れになっていた”

という話で、その目的地や乗せる場所として、

  • 東京の青山霊園
  • 京都の深泥池

などが有名です。ここもやはり心霊スポットといわれています。

東京の青山霊園


京都の深泥池


なぜ幽霊は車に乗ってくるのか?

恨みや祟りのために出て来る幽霊ではない

海外でも、日本でも、車に乗り込む幽霊たちは、乗せてくれた人に何か悪さをするわけではありません。後からわかる事実として多いのは、

  • 死んだ場所や墓地から乗り込んで、家に帰っていた
  • 目的地が湿地や池、樹海など、死んだ場所
  • 目的地はプロム(卒業パーティー)や結婚式など行きたかったのに行けなかった場所

などのパターンです。

幽霊が目的の場所に移動するのに、人間の乗り物がいるというのはちょっと考えられません。どちらかというと、行きたいところにいつでも瞬間移動していそうな気もします。

乗せてくれる人を脅かすつもりや恨みを持っている風でもなく、同じ場所で別の何人ものドライバーが同じ経験をすることが多い点を見ても、幽霊たちは

「ただ乗りたいだけ」

で自動車を停めているように感じられます。

人恋しさで乗りたいのかも

日本のタクシーでは、黙って乗っているだけの幽霊が多いようですが、海外のヒッチハイカーの場合は饒舌に世間話をする霊もいるようです。ダンスパーティーで一緒に踊った女の子を送ってあげようとしたら、家の前で消えてしまい、聞いてみると少し前に死んでいたその家の娘だった、という話もありました。

現世や場所に未練があること以上に、

「ただ人恋しい」

「現生の人に存在を忘れてほしくない」

そんな気持ちから、人目につくところに出てきてしまっているのかもしれません。

東日本大震災の被災地のタクシーの幽霊

石巻市のタクシー運転手の幽霊体験を卒論に

東日本大震災後、「震災による死」に残された人々はどう向き合い、感じてきたか、東北学院大学の社会学のゼミ生たちが真剣に取り組み、卒論にまとめました。2016年1月20日に、それらの論文をまとめた本が、新曜社から「呼び覚まされる霊性の震災学」の題で出版されました。

その第一章は、工藤優香さんの卒論

「死者たちが通う街 タクシードライバーの幽霊現象」

です。これは、石巻市で営業しているタクシードライバー7人から直接聞いた、「タクシーの幽霊」遭遇体験をまとめたものです。

幽霊の存在を信じ、畏敬の念を持つドライバー

ドライバーの話は、気の迷いや勘違いの思い込みとは思えないリアリティがありました。

工藤さんは、朝日新聞のインタビューに対し、

「運転手がみな恐怖心ではなく、幽霊に畏敬(いけい)の念を持ち、大切な体験として心にしまっていることも、印象的だった」

という内容のことを話しています。

証言してくれた中には津波で身内を亡くした人もいたそうですが、

「こんなことがあっても不思議ではない。また乗せるよ」

といっていたそうです。

ひとりひとりの死に重みがあることを教えてくれる

工藤さんは、今回の取り組みに際する気持ちについて

「ひとりひとりの死の重みがあるということ。それを伝えたい」

といっていました。

死してなお、タクシーに乗り込んで、ゆかりの地を走ろうとする霊たちの思いを全部はかり知ることはできません。しかし、切ない思いを現世に残す人々に対して、いたずらに恐れず、その思いを少しでも受け止めてあげられたら、霊の魂も少しは鎮められるのでしょうか。

タクシーの幽霊は、都市伝説の定番中の定番ですが、霊の存在を尊重する気持ちを持つことにも、深い意義があるように思います。幽霊を信じなくとも、面白半分に心霊スポットの撮影などせず、真摯な気持ちで死者に向き合う礼節は持ちたい気がします。

まさケロンのひとこと

生者も死者も、ひとりひとりが大切なんだよね。

masakeron-love


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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。