コミュニケーション術

コミュニケーションと共感力/グーグルの見つけた「成功の秘訣」

Written by すずき大和

「最近、いろんなことが手一杯で、やっとかないといけなかったことを忘れることがある。前ほど頑張りが利かなくなってるし・・・脳が劣化してきてるのかな。」

なんていっている、アラフォーの中間管理職の知人がいました。

人間誰しも、例えバイタリティとキレのいい判断でガンガン走ってきた有能な人でも、年を重ねると、なんでも自分で抱えて回しきれなくなってくることが出てきます。

大丈夫、記憶力や判断速度が多少鈍っても、周りとの連携力を付けて、足りないところを補助してもらえる環境を作っておけばいいだけのことです。

本当に怖いのは、脳の劣化ではなく、コミュニケーションの劣化です。



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米グーグルが取り組んだ労働改革プロジェクト

プロジェクト・アリストテレス

2016年2月、グーグルのアメリカ本社が、2012年から取り組んでいる、ある生産性向上を目指したプロジェクトについて報告する記事が、ニューヨークタイムスマガジンに載りました。

『プロジェクト・アリストテレス(Project Aristotle)』

と呼ばれるこの取り組みは、社内の「人員分析部」によって行われた“労働改革プロジェクト”です。

  1. 社員同士のコミュニケーションを中心に、仕事の状況を徹底的にモニタリング
  2. 結果を様々な角度から分析。チームによる生産性の差はなぜ生じるのかを見つける
  3. 分析結果をもとに、より生産性の高い働き方を提案する

これが、このプロジェクトのプロセスと目的でした。

生産性向上の「秘訣」はどこにあるのか?

データ分析のスキルについては業界一のグーグルの人材は、優秀な統計専門家やエンジニアが揃っています。更に組織心理学や社会学の専門家等を募って作られたチームが、社内の様々な作業チームを徹底的に観察し、成績のいいチームとそうでもないチームの違いについて分析しました。

人間関係や各人の性格や趣味、チーム内の習慣や暗黙のルールなど、あらゆる方向から、“できる”チームの共通点を見つけ出そうとしました。が、数百に上るチームの規範や文化はあまりにも多様で、

  • 同じ思考や趣味の人が多いか少ないか、
  • メンバーの上下関係がユルいか厳しいか、
  • 仕事の手順や行動基準などのルールの違い

などなど、見方をいく通りも変えて分析しましたが、どこにも、どうしても、共通するパターンを見つけることができませんでした。

グーグルの作業は、同じ人が複数のプロジェクトに加わることも多く、別のチームでもワーカーの大半がだぶることもあるそうです。構成メンバーはほぼ同じなのに、一方のチームは成功し、一方はうまくいっていない場合もありました。単に、能力が優秀な人材が集まったところが成功する、というわけでもないようです。

唯一の秘訣は「心理的安全性」

「働き方」の秘訣がどうしても見つけられなかった人員分析部は、改めて社員のメンタル部分に着目しました。すると、リーダーの強いリーダーシップでけん引されるチームであれ、全員がフラットに議論する中で方向付けするチームであれ、

“メンバー全員がほぼ同じ時間だけ発言しているチーム”のほうが

“特定の誰かがたくさん発言しているチーム”よりいい成績を残す

ということがわかってきました。

どうやら「メンバーの発言しやすい雰囲気」が自然にできていること、が鍵のようです。

「こんなこといったら馬鹿にされないか」

「上司やリーダーの意見に反論したらまずいんじゃないか」

など、思ったことを自由に発言することに不安を感じる場では、人は様子見状態になります。が、「何をいっても大丈夫」という安心感があれば、コミュニケーションは活発になります。

この安心状態の空気感のことを『心理的安全性』といいます。

「心理的安全性がある職場であること」が、チームの成功を導く唯一の秘訣だったのです。

安心して自分をさらけ出し合えるコミュニケーションを

他者への共感と理解を育てる

心理的安全性を育むためには、ひとりひとりが他者に対する

  • 「心遣い」
  • 「同情」
  • 「配慮」
  • 「思いやり」

などをどれだけ示せているか、が重要になります。

例え、異なる価値観や意見の人であっても、その人がそう思うに至ったことについて、

“「共感」「理解」しようする姿勢を見せること”

これが、巡り巡って、チームの生産性を高めることにつながっていきます。

豊かなコミュニケーションを作るのもコミュニケーション

グーグルがたどり着いたこの結論は、たぶん、仕事に関わらず、私たちの人生を豊かにしていくためのコミュニケーションに共通することだと思います。

建設的なコミュニケーションとは、自分のいいたいことを伝えるためではなく、

“他者を理解し、共感を引き出すために行うもの”

ということでしょうか。

プロジェクト・アリストテレスは、各チームリーダーに対して、チーム内に心理的安全性を育む具体策を考えるよう促しました。

あるリーダーが、隠していた自分の弱い部分をメンバーにカミングアウトしたところ、次々と他のメンバーも正直にプライベートな部分をさらけだす会話をするようになったそうです。結果、全体のモラルが高まり、自然と生産性向上に向かっていったそうです。

コミュニケーションの質を高めるためには、

“飾らず自分をさらけ出していくコミュニケーションを少しずつ積み重ねていくこと”

が大事な秘訣のようです。

まさケロンのひとこと

みんながチームの主役になることで一人一人の集中力も高まりそうだよね。

masakeron-happy


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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。