健康・医療の豆知識

低アレルゲン性卵を産む鶏誕生/アレルギーでも予防接種可能に

Written by すずき大和

近年、子どものアトピー問題なども含め、食物アレルギーの関心が高くなっています。主なアレルゲンの中には、様々な加工食品に知らずに含まれているものもあり、アレルギーの人たちは、加工品の原材料チェックにも相当気を使っているようです。



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アレルギーの出ない卵を産むニワトリが誕生

日本人で一番多いのは卵アレルギー

日本人の食物アレルギーの中で最も多いのが、「卵アレルギー」です。特に、小学生以下の子どもたちのアレルギーの原因では、「卵」「牛乳」で過半数を占めています。

日本人の国民一人当たりの年間卵消費量は、約329個(2014年調べ)です。これはメキシコ・マレーシアに続き世界第3位で、相当な卵大好き国となっています。そんな社会で、卵が入っているものが食べられないのは、不便なことも多く、子どもの場合は「みんなと一緒のおやつが食べられない」という寂しさもあるでしょう。

また、アレルギーの人は卵から作ったワクチンの副作用も出るため、インフルエンザなどの予防接種が受けられず、その辺も気がかりな問題となっています。

人工的に遺伝子操作したニワトリを使って品種改良

2016年4月、イギリスの科学誌に、日本の研究者による

「アレルゲンを作る遺伝子を持たないニワトリの開発」

に成功した報告が掲載されました。

発表したのは「産業技術総合研究所(産総研)」という国立研究開発法人です。

ゲノム編集技術(遺伝子操作)を使って、アレルギーの元となる

『オボムコイド』

という物質を作る遺伝子を欠いたニワトリを作り、その後、交配を繰り返しながら完全にオボムコイド遺伝子がない品種を作ることに成功しました。

遺伝子操作と交配で生まれた第二世代

どうやって新種が生まれたか、経過をまとめるとこんな感じです。

  1. 雄ニワトリになる受精卵(胚[ハイ])の血液から培養した細胞を、遺伝子操作。
  2. 操作済の細胞を普通の雄の胚に移植。生まれたニワトリは0世代。
  3. 0世代と普通の雌を交配させ、第1世代が生まれる。
  4. 第1世代の中でオボムコイド遺伝子がなかった雄と雌を交配。


こうして生まれた第2世代は、雄も雌もオボムコイド遺伝子を持っていませんでした。第2世代の雌は、アレルギー物質抜きの卵を生産できます。

卵アレルギーの人もインフルエンザのワクチン接種が可能に

卵はワクチンを作るためにも使われる

まずは、ワクチンについて簡単に解説します。

同じ病原体でも、O157やサルモネラ菌などの「細菌」と、インフルエンザなどの「ウイルス」には、大きな違いがあります。細菌には抗生物質が効きますが、ウイルスには効きません。

ウイルスは自分のからだに栄養を取り込み、自分の力で増えていくことができません。ウイルスは、生きている細胞に取り付き、細胞をウイルス製造工場にして増殖します。抗生物質は細菌の細胞の増殖を妨げますが、人間の細胞の成長には害が出ない物質なので、ウイルスの増殖は止められないのです。

ウイルスをやっつけるには、からだの中に抗体を作るしかありません。一度感染すると抗体ができて、2度目は感染しない、またはしても軽い症状で済むようになります。

この性質を利用して、

“ウイルスの毒を弱めたり無毒にしてわざと感染させ、体内に抗体を作ること”

「予防接種」です。

“わざと感染させるために作られたウイルス”

「ワクチン」です。

ウイルスを増やすには生きた細胞が必要です。そのため、ひよこになり始めた卵(発育鶏卵)の細胞を使ってウイルスを増やすことで、ワクチンを製造しているのです。

オボムコイドのない卵がワクチンの幅を広げる

日本では、1日に何百万個もの鶏卵が、ワクチン製造のために使われています。そして、多くの人がワクチンのお世話になり、多くのウイルス感染症を予防しています。

オボムコイドを作る遺伝子を持たない新種のニワトリの産む卵は、卵アレルギーの人も使用可能なワクチン製造への道を開いたといえます。実用化へ向け、安全性の確認など、更に研究が進められることに大きな期待が寄せられています。

低アレルゲン性の食用卵は流通するのか?

アメリカなど、これまで遺伝子組み換えの食品を多数認可してきた国では、卵アレルギーの人用に、新種のニワトリの卵が販売されることも考えられます。アレルギーがあっても、代替品にせず、卵本来の味わいを楽しむことができるようになるかもしれません。

一方、日本では、これまで遺伝子組み換え食品はマーケットでことごとく拒否されてきています。日本の消費者は、科学的に有害性が認められる農薬や化学物質添加の食品より、遺伝子組み換え品のほうが危険と見なしているようです。

そのため、新種の鶏卵が簡単に食品として販売されるようにはならないと思われます。遺伝子操作が関わっている産物を今後どう扱っていくか、改めてガイドライン等の定めが問われているのかもしれません。

健康に害にならず、卵アレルギーの子がみんなと同じケーキやプリンが食べられるようになるかどうかは、

“ゲノム編集テクノロジーを私たちはどう受け止めていくか”

にかかっているようです。

まさケロンのひとこと

危険なのかどうかわからないから危険って思ってるだけで、危険じゃないとしたらすごく勿体無いことしてるもんね。

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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。