薔薇(バラ)

青色のバラはある?ない?あなたの常識もう古いかも!?

Written by すずき大和

私の子どもの頃は、

“自然界には「青いバラ」がないので、青バラを作れたら大ニュース!”

というウンチクは、“知っていると自慢できる”トリビアのひとつでした。

今、花屋さんのカタログには、真っ青な青バラが載っています。

  • A「知ってる知ってる。でもあれ、白いバラを青い水で染めて作ったバラでしょ」
  • B「前に、世界初の青バラを鳩山さんがオバマさんにプレゼントしたってニュースあったよ」
  • C「鳩山さんのは遺伝子組み換えバラだから。交配でできた青バラはないんじゃない」
  • D「そもそもバラって青い色素を作る遺伝子がないから、品種改良で青バラは作れない」
  • E「それがねぇ、品種改良で生まれた青バラ、実は60年前からあったらしいよ」
  • A〜D「ええっ、何それ!聞いてない」

はい、AさんからEさんの中で、誰のいうことが「正しい」or「違っている」のでしょう?



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青バラを作ることは育種家の夢

バラには青色色素はない

バラには、大昔から「紫色」はあっても純粋に「青色」の花はありませんでした。ギリシャやローマに伝わる神話では、

「神様はバラに青色だけを与えなかった」

と記されたものが見つかっています。

19世紀頃から世界中の育種家たちは競って青バラを作りだそうとしました。しかし、“なんとなく青っぽい花”はできても、なかなか朝顔みたいな青は作れませんでした。

科学が発展してくると、通常青い花には『デルフィニジン』と呼ばれる「青色色素」が入っているため青く見えることがわかってきました。世界中にある原種のバラを調べても、この色素は見つからず、

「バラにはもともと青色色素がないから、交配で青い花は作れない」

という知識が広まりました。

白い花を青に染めたバラ

自然に作り出すことができないのならば、人工的に作ってしまえばいい、ということで、白い花に青い水を吸わせて鮮やかに真っ青な花を作り出した人が現れました。

ベンデラという種類の白バラが使われるため、この青バラは一般に

『ベンデラブルー』

と呼ばれています。


それまで青いバラには、

「ありえない」「不可能」

という花言葉があてられていましたが、

「奇跡」「神の祝福」

という花言葉がプラスされるようになりました。

ベンデラブルーが商品化されると、世界中で祝いの花束として大人気になりました。花屋さんの青バラはこれです。

サントリーの苦節20年が産んだ遺伝子操作青バラ

一方で、1990年、「サントリー」はバイオテクノロジーによって青色色素を作る遺伝子を組み入れる研究を始めました。

苦労の結果、2004年に初めて青色色素デルフィニジンを持った花を咲かせることに成功します。更に、接木で増殖する技術も成功し、2009年、ついに「世界初の青バラ」として

『サントリー・ブルーローズ・アブローズ』(通称:アブローズ)

が市場に出ました。


アブローズには、「夢かなう」という花言葉がつけられました。

同じ年に政権交代した鳩山さんは、この花言葉を添えて、初の黒人大統領になったばかりのオバマさんに、アブローズをプレゼントしたのです。

バラだけが持つ青白色素発見!

アブローズより青いバラ

アブローズ以前に育種家が行っていた青バラ作りでは、紫色のバラから赤色色素を薄くする方向で品種改良が進められていました。赤をどんどん薄めていった結果の“なんとなく青っぽい花”は、薄紫色だったり、青みがかったシルバーグレイだったりしました。

20世紀後半、世界中の育種家が相次いで青バラ品種を発表しました。中でも、日本人が1992年に発表した『青龍』は、染めてない青バラの中では最も青色に近いものだといわれています。アブローズは青というより紫色なので、それより青っぽいかもしれません。


バラにも青色色素はある

赤色色素をどんどん減らすと青っぽくなるのだとしたら、バラにももともと青色色素があったのではないか、という仮説もたちます。サントリーの研究者は、青龍などの交配種の青バラの色素の研究も行っていました。

そして、20世紀末、交配種のバラの中に、デルフィニジンとは異なる新たな青色色素を発見します。これはバラだけに見られる色素だったので、

『ロザシアニン』

と名付けられました。

バラ独自の青色色素の発見は、交配だけで青バラを作る可能性も示しました。しかし、赤色色素を減らしていくと、バラの性質が弱くなり、交配させにくくなります。サントリーでは、本当に青色を出すには、やはりデルフィニジンが必要と判断し、その後アブローズが完成した時「世界初の青バラ」と発表しました。

しかし、ロザシアニンの色も青バラと認めるなら、世界初の青バラは、1957年にアメリカの育種家が赤色色素を大幅に取り除いて咲かせた交配種『スターリング・シルバー』だったともいえます。


まとめ

ということで、冒頭の間違い探しは、「デルフィニジンだけが青色色素」だと考えるなら「Eさん以外全部正解」です。

「ロザシアニンの青も青バラ」と考えるなら、

  • Bさん:鳩山さんのプレゼントは「世界初の青バラ」
  • Cさん:「交配種の青バラはない」
  • Dさん:「バラは青色色素がない」

「間違い」です。

遺伝子操作の青バラも、交配種も、まだどちらも本当に純粋な青色には至っていません。

「世界初の青バラ」作りは、今もなお「夢の計画」として進行中なのです。

まさケロンのひとこと

青い薔薇はいつまでも神秘的な存在であってほしいな~。

masakeron-love


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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。