酉の市

神社でもお寺でもやっている酉の市は、神教と仏教、どちらの祭?

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Written by すずき大和

鷲神社(おおとりじんじゃ)を中心に、毎年11月の酉の日に開催される

「酉の市(とりのいち)」

は、縁起熊手で有名な関東の祭です。首都圏で生活する人たちにとっては、新年を迎える準備の始まる年末の到来を、最初に感じる風物詩となっています。

酉の市は、別名「お酉様(おとりさま)」と呼ばれますが、酉という名の神様を祀るお祭、ではありません。というか、酉の市は神社だけではなく、お寺でもやっています。お寺ではもちろん神様は祀りません。

では、いったい酉の市は何の祭なのでしょうか?



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日本人は無宗教の人が多いって本当?

日本は仏教国なのか?

日本人は、自分は無宗教だと思っていることが多いようですが、死者の魂の存在はほとんどの人が信じており、特に信仰を持たない人も、もれなく仏教方式によってそれを鎮めてあげなければ、“成仏できなくて可哀そう”と思っています。

特定の信心がはっきりしていない人も、ほとんどの場合、「浄土真宗」「真言宗」「日蓮宗」・・・など代々先祖を供養してきた“家の仏教宗派”が決まっています。

では、日本は基本的に仏教国で、日本人は仏教徒なのでしょうか?

日本は八百万の神様を大事にする国

日本人が仏教にこだわるのは、“死者の処し方限定”の人が大部分です。

生きている間は、神様信仰のしきたりに沿う習慣がたくさん残る文化の中にいます。

神様といっても、右寄りの政治家さんがよくいう「天皇を頂点とした神の国」と教える神道を信仰している、というのとも違います。

  • 全ての家族の家の宗派が決まっていること
  • 天皇の祖先に直結するといわれる伊勢神宮が頂点となる現在の神社体系


これらは、歴史の中で、時の権力の都合で決められ、国民に上から強制した政策のひとつでした。

日本人古来の自然発生的な宗教観は、「八百万の神(やおよろずのかみ)」を信仰する考え方です。これは、

“世の中何にでも神様が宿っているので、事物はみんな大事にしないといけないよ”

という価値観です。

“木には木の、川には川の、家には家の、鍋には鍋の・・・神様がいる”

だから、日本各地、氏(うじ)や土地に密着した土着の神様信仰が、それぞれの地域に根付いていました。

  • お正月のしきたり
  • 七五三のお祝い
  • 暦の吉凶を気にする文化
  • お盆やお彼岸の先祖供養の習慣


これらは皆、仏教でも神教でもない、そういう土着の宗教習慣が元になって、現在も継続している文化です。そして、各地の祭もまた、多くはそんな土着文化のひとつです。

酉の市は農村の収穫祭を神社とお寺が習合したもの

酉の市の発祥

酉の市の発祥は、「鷲大明神(わしだいみょうじん)」という神様を祀る神社が行ってきた新年の招福を祈願する年末の行事(大酉祭)と、近郊農民の収穫祭が合体して生まれたお祭でした。

何にでも神様がいると考える日本人は、他所から他の宗教が入って来た時も敵対せず、新たな神様も取り込んで日本の神様と一緒にしてしまう(習合)ことを繰り返してきました。

土着の氏神様に感謝する収穫祭と鷲大明神を祀る神社のお祭が合体するのも、自然なことでした。

最初の酉の市が立った神社は、今の足立区花畑にある大鷲神社(おおとりじんじゃ)です。

江戸からは10km以上離れていましたが、後に浅草の鷲神社と、神社と併設の長國寺(ちょうこくじ)でも酉の市が始まります。

浅草が盛況だったので、酉の市は他の神社やお寺にも広まっていきました。

江戸の町ではお寺と神社が同じ境内にあるパターンがたくさんありました。

かつて、江戸幕府が政治に仏教を利用するため、すべての家がお寺の檀家になるよう強制した時、八百万の神を大事にする日本人は神社の信仰を止めることはやはりできなかったので、ここでも神仏習合してしまったのです。

酉の市の仏教・神教それぞれの解釈と位置づけ

神様と仏様のしきたり、さらに土着の習慣も全部取り入れて信仰していくことは認めても、一応それぞれの宗教の建前としては、取り入れたしきたりに自分のところの教えに沿う理由付けが必要です。

そこで、神社とお寺、それぞれが酉の市の宗教的な由来の物語を定めました。

神道では、大酉祭が酉の市の起源とされました。

鷲神社は鷲大明神と共に「日本武尊(ヤマトタケルのみこと)」を祀っており、11月の酉の日というのは、日本武尊が亡くなった日、もしくは埼玉の鷲宮神社(わしのみやじんじゃ) に東征の戦勝祈願に行った日にちなみます。

仏教では、酉の市起源のこんな逸話が作られました。

“かつて1265年、日蓮宗(長國寺の宗派)の宗祖「日蓮」が、11月の酉の日に上総国(千葉県)滞在中に国家平穏を祈ったところ、明星が輝きだし、「鷲妙見大菩薩(わしみょうけんだいぼさつ)」という仏様が鷲の背に乗り表れた。それにちなみ、11月の酉の日を開帳の日(ご本尊の拝観日)とし、その祭が酉の市になった。”


宗教を超えて祭を楽しもう

ということで、冒頭の問いに答えれば、

  • 神社の酉の市は、鷲大明神のお祭
  • お寺の酉の市は、鷲妙見大菩薩のお祭

になります。

といっても、各地に広がる酉の市の中には、鷲大明神を祀っていない神社もあるし、日蓮宗じゃないお寺もあります。

ま、どこのどんな神様仏様でも、熊手の御利益に変わりはないようですから、八百万の神を愛するようなユルい心で、気にせず楽しめばいいんですよね。

まさケロンのひとこと

宗教に関係してるんだけど、宗教の枠を超えたお祭りって、なんかワクワクするね。

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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。