大寒

大寒の次候「水沢腹堅」。流れる川の水が凍ってしまう不思議

流れる川
Written by すずき大和

暦の上では1月20日~2月3日頃を大寒と呼んでいます。

一年で一番寒い時季を示していますが、特に中盤~終盤の10日間くらいが、平均気温が最も低い期間となっています。

大寒は、一年を24に区切って季節を表わす二十四節気のひとつです。

だいたい15日くらいの期間ですが、その中を更に5日くらいずつ3つに区切って細かく季節の風物詩を表現した七十二候という暦もあります。

大寒の中でも最も寒さが厳しい真ん中頃の七十二候(次候といいます)には「水沢腹堅」という言葉があてられています。



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結氷、川氷、河氷、瀑氷、氷瀑

沢を流れる水も氷りつく

「水沢腹堅」は、“さわみずこおりつめる”と読みます。

滝も含めた河川、海、湖、池、沼などの水面が凍結することを結氷[けっぴょう]と言います。

池など水が同じ場所で動かず溜まっている所なら、水温が氷点下に近くなってくると案外たやすく結氷していきます。

実は、池などの水面では、放射冷却の影響で気温より温度が下がるため、氷点下の気温にならなくても氷が張ってしまうことが多いのです。

が、絶えず水が動き、流れているところまで氷が張るのは、最低気温が0度よりもっともっと下がった本当に寒い時です。

自然界の水に凍りが張っていく極寒の季節

物質が動いていることはつまり『熱が発生している』ということなので(学校の理科で習ったことを思い出してみましょう)、流水はそう簡単には結氷しないものです。

河川が結氷するくらいの寒さとは、やはりかなりの極寒地をイメージしてしまいます。

川の上の方が結氷した、その氷のことを「川氷・河氷[かわごおり]」と言っています。

滝でできた氷は特に「瀑氷[ばくひょう]」と言い、結氷してしまった滝そのもののことは「氷瀑[ひょうばく]」と呼んでいます。

氷瀑となった滝の風景は、独特の美しさや力強さを感じるものがあり、完全に凍り付いてしまった滝は、ニュースになることも多く、毎年凍る滝は、多くが観光名所となっています。

有名な奥日光の「華厳の滝」は、水量が多いので全面凍結することはほとんどありませんが、飛沫がつららのように幾重にも重なるように結氷している風景は壮大なものです。

河川は水温0度以下でも凍らない

川や滝が凍るためには複雑な条件がある

水が氷になる温度は0度以下です。が、この“以下”の幅は意外と広いようです。

自然の池や川やもちろん海の水の中には、ミネラル他いろいろな物質が溶け込んでおり、純度100%な水ではないので、不純物がある分凍る温度は低くなります。

また、動いている水が氷るには、温度だけでなく、上から下に水が流れる(落ちる)運動や、熱エネルギー転換の効率に関するいろいろな複雑な条件が関係してくるそうです。

いろんな条件が満たされて氷ができる頃の水温は、河や滝の場合だと水温マイナス10度以上になっていることもあるのだそうです。

なぜ氷点下でも水は凍らずにいられるのか?

水が0度を過ぎても凍らないのは不思議ですね。

液体の水が氷になる時、

『それまで動き回っていた水の分子が綺麗に揃って並んで固まっていく』

という現象が起きます。

が、バラバラな向きで浮遊していた分子の向きを揃えて並べていくには、ちょっと時間がかかるのです。

温度が低いほど物質の運動量が少ないので、冷たい水の中でゆっくりたゆたう分子がお行儀よく並びきるのはまどろっこしく、

『全部の整列が済むまでにも温度がどんどん下がり続けてしまう』

という状態がおきるため、その間(だいいた0~マイナス10度くらい)は

『氷点下なのに水のまま』

という現象になります。

水が絶えず流れていると、なかなかきちんと整列できないため、流水は凍る温度が低くなってしまうのです。

ちなみに、あまりにも水が運動せずにそのままじっと停滞していても、分子が動かな過ぎて全然整列が進まず、凍るに凍れないままマイナス30度ぐらいにまでなってしまう場合があるそうです。

そんな時、ほんのちょっと水を動かすことで、分子の移動整列が進んで凍ります。

『冷凍庫でじっと静かに氷点下まで冷やした水の入ったペットボトルを振ったら急激に凍った』という実験映像を見たことがある人もいるでしょう。

凍る、という現象は、案外とてもデリケートなもののようです。

凍り易い川、凍りにくい河

そんなこんな、いろいろ複雑に条件があるようで、同じくらいの寒さでも、凍り易い河川とそうでもない河川があります。

水が動きすぎるほど氷になるまでの時間がかかるので、流れは緩やかな方が凍り易いのは、すぐに想像できますね。

体感気温は、風が吹いているほど寒く感じるものですが、川を凍らせるには、あまり水面が波立つほど吹いていると、水が動きすぎて結氷しません。

軽くさざ波立つくらいの風だと、水面の水の蒸発を促進するので、気化する時に熱が逃げ、水面の温度を下げて凍りやすくなります。

無風だと放射冷却が進むので、更に温度が下がりやすくなり、結氷しやすいのだそうです。

また、水深が深くて大きい河は、川底の水が熱を保っているので水面もなかなか冷えず、浅い河ほど温度が下がりやすく早く結氷します。

温暖化が進んでいる昨今、以前は完全に凍った滝や、毎年のように結氷していた川が凍らなくなった、という話もたくさん聞きます。

このまま地球の気温が上昇していくと、日本の多くの場所で「水沢腹堅」の時季に河川の結氷が見られなくなってしまうかもしれません。

現在の七十二候は、江戸時代から明治の頃に日本の気候に合わせて決められたものがほとんどです。

昔の人が、こんなに細かく季節感を伝える暦を作ったのは、近代以降、科学や技術が飛躍的に進んでいくのを予期した人間が、これからも文明を発展させる過程で、ヒトの力で自然そのものを変えていってしまうことへの危険により早く気付けるよう、警鐘装置とする意味もあったのかもしれない、そんな気もするこの頃です。

まさケロンのひとこと

『氷点下なのに水のまま』っていうのはおもしろいよね~。分子を動かして整列させてあげれば凍る!覚えておこう。

masakeron-happy


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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。