喘息の辛さは、
「なった人じゃないとなかなかわからない」
ともいわれますが、小学校の頃、クラスに1人くらいは、いつも体育を見学して、薬の吸入器を持ち歩いているような子がいなかったでしょうか。
ゼーゼーの発作が始まると、本当に息ができなくなっているんじゃないかと思うくらい、辛そうに苦しんでいる友だちの姿を、私も覚えています。
気管支喘息の前触れが表れる人たち
中高年になって突然発症する人が多い大人の喘息
小児気管支喘息は、4~7%くらいの子どもがかかる、とても頻度の高い病気です。
しかし、そのうちの7~8割は、思春期の頃までに症状が軽減し、大人になる頃には治ってしまいます。
私の小学校の同級生も、高校生の頃には元気に運動部の部活をやっていました。そのため、なんとなく
「喘息は子どもの病気」
のような印象がありました。
しかし、小児喘息患者の3割ほどは、そのまま大人の喘息に移行しています。
そして、一度治った人の3割ほどが、大人になって忘れたころに、再発しています。
また、それまで丈夫で風邪も滅多にひかなかったような人が、大人になって急に喘息になる例は、思っているよりもたくさんいます。
成人の喘息患者は、全体の6%ほどで、実は子どもとそんなに変わらないくらいの患者頻度です。
大人の患者の8割が、大人になってから発症し、そのうちの6割が40代~60代で発症しています。
戦後増え続けてきた気管支喘息
気管支喘息は、呼吸の通り道(気道)となる気管支が、アレルギーなどの炎症によって狭くなり、呼吸しづらくなる病気です。
小児喘息の原因の多くはアレルギーですが、成人の場合は、アレルゲン以外の誘因が症状を悪化させる因子になっていることも多く、原因を明確に特定できない人が少なくありません。
アレルゲンとなるダニやハウスダストなども、
アレルゲン以外の誘因となる煙草、大気汚染、飲酒、ストレスなども、
生活環境の都市化が進むことで増えていくものが多いです。
戦後、都市に住む人が増え、地方の開発も進む中、喘息の患者もゆるやかに増えてきました。
他の病気から喘息に移行する人たち
風邪やマイコプラズマ、インフルエンザなどの感染症によっても発作性の咳がでます。
また、蓄膿症や食堂逆流症などが原因でのどから気管支にかけての気道に炎症を起こす人もいます。
これらの炎症が納まらずに慢性化し、喘息へと移行してしまう人もいます。
最近、咳が長く続く症状を訴えて病院を訪れる人の多くが
「咳喘息」
と診断されています。
内科医の間ではとても有名な病気となっていますが、一般的にはあまり知られていません。
風邪の咳が長引いていると思う人も多く、初めは1~2ヶ月くらいで納まることが多いので、市販の風邪薬や咳止めなど飲んで済ませてしまう人も少なくありません。
しかし、咳喘息は放って置くと何度も再発を繰り返し、そのうち気管支喘息へと移行してしまう確率の高い病気です。
中高年になって急にゼーゼーし始めて気管支喘息を発症した人の中には、よく聞くと、何年も前から、年に1、2度、咳が何週間も続く風邪を引くようになっていた人が何人もいました。
ちゃんと直さないと一生苦労するかもしれない咳喘息
咳喘息が見落とされるわけ
「咳喘息とは、気管支喘息と同じように、気道が狭くなり、いろいろな刺激に過敏に反応して炎症することで咳の発作が起きる病気」です。
ハウスダストや煙草やストレスなどが発作の要因となるのも、気管支喘息と変わりません。
もともとアレルギーのある人に置きやすい病気でもあります。
しかし、「咳喘息の段階では、気管支喘息にみられる特徴がありません」。
- ゼーゼーヒューヒューという雑音が聞こえない
- 激しい胸の痛みや、呼吸困難な状態を感じることはない
- 動悸、息切れ、苦しくて急に動けなくなる、ということもない
- アレルギー性鼻炎等の人以外は、タンもあまりからまない
- 胸部のレントゲンも異常なしと診断
私たちは、喘息といえば気管支喘息だと思い込んでいるので、ゼーゼーしていなければ、喘息だとは全く考えない傾向があるのです。
また、風邪と併発して起きることが多く、風邪が原因の咳だと思い込みやすいことも、気づくのを遅らせています。
こんな場合は咳喘息を疑おう
一方で、咳喘息は、気管支喘息と同じ要因、同じメカニズムで起きているので、風邪とは異なる、「喘息ならではの特徴」もちゃんとあります。
- 咳は夜間から明け方にかけて出ることが多い
- 冷たい空気を急に吸い込んだり、煙草の受動喫煙によって急に咳が始まることが多い
- 風邪薬や咳止め薬がほとんど効かない
- 気管支拡張薬の吸入で症状が緩和される
気管支拡張薬の吸入を試すのは、医者にかかって咳喘息の診断を確かめるために行われます。
が、もし家族に吸入器を使っている喘息患者がいれば、咳が続く時にちょっと試させてもらうと、一発でわかります。
- 風邪が治ったのに、咳だけがずっと何週間も収まらない
- 特に風邪をひいているわけでもないのに、やたらに咳が出る
- 夜寝ていたら、急に咳こんで起きてしまうことがある
こんな人で、上記のような特徴があれば、咳喘息を疑ったほうがいいでしょう。
咳喘息のメカニズム
- ダニやほこりなどのハウスダスト
- 花粉
- 煙草の煙
- 気温や気圧の変化
- 風邪などの感染症
- 香水や家の内装に使われた接着剤などから出る揮発性の物質
いろいろな刺激に過敏に反応することで気道に炎症が起きるところから、咳喘息は始まります。
炎症が起きると、気道が腫れたりむくんだりして、空気の通り道が狭くなり、ますます刺激に過敏になります。
炎症によって、気道の表面がダメージを受けて破壊されます。
これらは、最初は一時的で、破壊された細胞は修復され、咳もやがて納まります。
が、しかし、それが繰り返されると、炎症が慢性化し、納まったようでも表面の炎症はずっとくすぶりつづけます。
ダメージを受けた表面は修復を繰り返し続けると、だんだん固く厚くなり、気道がますます狭くなります。
また、より刺激に敏感になって、発作が起きやすくなっていきます。そうして、気管支喘息へと移行していくのです。
咳喘息はとにかく早く治療しよう
咳喘息は、早めに処置をすれば、治すことができます。
放置して気管支喘息になると、一生完治することなく、常に発作を避けるケアをしながらお付き合いする病気となる人がたくさんいます。
咳喘息は子どももかかり、大人よりも気管支喘息に移行しやすいです。
が、子どもの場合、咳が長く続くと、周りの大人が気付いて小児科に行かせる場合が多いです。
大人はすぐに喘息にはなりませんが、日々仕事に追われていたり、家事を担う親の立場の人は、自分のことは後回しにしがちです。
「たかが咳くらい」
では、なかなか医者に行かない人がとても多いのです。
咳を甘く見てはいけません。
たかが咳でも、2週間以上続いたら、すぐに病院に行ってください。
あなたと、あなたの家族のために、ぜひお願いします。
咳喘息には咳喘息の薬があるからね。風邪薬じゃ治らないから注意!2週間以上咳が続く場合はとにかく一度病院へ!