国際デー

「難民は助けなきゃ。でも来ないで!」はズルい?もっとも?

Written by すずき大和

6月20日は「世界難民の日」です。

戦後の国際社会は、

  • 「人権」「人道主義」を考え方の基盤とし
  • 「国連」を中心に連携・協力しながら活動する

という方向で、世界の平和を維持しようと努力してきました。

しかし、今、そんな世界の理想や結束が、徐々に崩れつつあります。シリア難民が膨大に膨れ上がる世界で、人道主義より国益優先、という人が増えています。



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「人道主義の精神」て、どういうこと?

多くの紛争を経て、人類は人道主義にたどり着いた

人類は、長い歴史の中でずっと勢力争いの紛争を続けてきました。昔は、力のあるものが無いものを支配するのは、社会の道理でした。貧しい人、障害者、発展途上文化圏の人などが、差別されるのは仕方がないことでした。

しかし、中世から近代にかけ、ヨーロッパを発端に、

「平等」「人権」

という考え方が生まれ、やがて、国際社会は、

“すべての人に「自由」と「平和」が保障される世界”

を理想とするようになります。

そして、

  • 力で弱いものを侵略・抑圧する
  • 戦闘員でない一般市民を無差別に殺す

という戦争のやり方は「人道主義」に反する、という国際常識が出来上がりました。

第一次大戦後、一部の権威主義の国々(枢軸国)が周囲の国に武力侵攻し、大量の難民が発生しました。枢軸国のやり方に反対する連合国は、人道主義の立場から、協力して難民を救済するしくみを作り始めます。

戦後、紛争や圧政に命や人権を脅かされた人が、自由と平和を求逃げ出してきたら、

  • 国際社会は協力して彼ら「難民」を助け、
  • 難民を生み出す社会の問題を解決するための支援をする

という国際約束も作られました。


人道主義は同胞助け合いの精神

難民に向けられる「人道主義の精神」とは、

  • 人類は、互いに協力し合ってやっていこう
  • 誰かが困っていたら、みんなが持っているものを出し合い、分け合って助けよう

という“同胞の精神”です。

“余ってるものがあれば助けるけど、苦労して得たものはわけたくない”

“仲間に入ってこられると嫌な人は助けない”

というのは、あまり人道的じゃありません。

人道支援というのは、政治信条やお金のあるなしに関係なく、最優先で行うべきものです。

難民受け入れに抵抗を感じる心情

見知らぬ異文化人は同胞じゃない?

現在、増加の一途をたどるシリア難民の受け入れが難航しています。ヨーロッパの先進国が率先して受け入れていましたが、あまりの増大ぶりに、国内では拒否の声が高まっています。

目の前で困っている人がいれば、分かち合って助けるのは当然、と、わかっていても、自分たちの社会資源が難民のために減っていくと、綺麗ごとだけでは済まなくなります。そして、言葉や習慣の異なる異文化人との共存がストレスを生むのは避けられません。受け入れ負担の大幅な増加は、社会のストレスを人々の対立へと進めています。

同胞の精神は、同じ国民・民族には自然と沸きますが、異文化の異国人に対しては、

「なぜ私たちが自分たちの幸せを削ってまで助けないといけないんだろう」

と思ってしまうのが人間です。

オイルマネー国家は難民受け入れを拒否

シリア周辺のアラブ国も、第一次大戦前までシリアと同じ国、友好的な隣国だった所は、同胞の精神が強く働いて、多くの難民を受け入れています。

一方、サウジアラビア、バーレーン、アラブ首長国連邦などの湾岸石油国は、受け入れを拒否しています。それは、これらの国がISやアルカイダも含めた反政府軍に資金提供しているためです。ISの暴力を逃れて難民になった人の中には、政府軍支持者もいるので、敵対する側としては受け入れられないのです。

しかし、欧州の人から見ると、

「なんで自分たちばっかり助けないといけないんだ?」

という不満の原因になっています。

難民じゃなくて移民か?

難民の多くは北欧やドイツに行きたがります。

「先進国に逃げようとするのは、豊かになりたいからだろう?」

という見方をする人は少なからずいます。

欧州はかつて庶民が権力と闘って自由を勝ち取った歴史があり、保護されて新生活を手に入れる難民に対し、

「自国をなんとかする努力をせず、欧州人が長年築いた社会資源にあやかるのはズルい!」

と、感じる気持ちもどうしてもあるようです。

相手の辛さに寄り添う姿勢を欠く言動は論外

日本では、2015年、政権を支持する極右団体と関係の深い漫画家が、

「何の苦労もなく 生きたいように生きていきたい 他人の金で。 そうだ難民しよう!」

というコピーで難民を揶揄するイラストを発表し、その差別思想が世界中で問題視されました。


欧州で豊かになる難民に複雑な思いがあるのは欧州人も同じです。異文化共存の混乱も知っています。しかし、難民がまるで私利私欲で社会をだましているかのような揶揄は、命がけで国境を越えて逃げてきた人たちを深く傷つけ、尊厳を踏みにじる行為であると解釈されています。

日本は欧州の千分の一程度しか難民を受け入れていません。

「国連分担金はたくさん出す金持ち国なのに、歪んだ人道主義の心で受け入れ拒否か!」

と、国際社会を多少なりともイラつかせました。

難民問題は、複雑な問題が入り組んでいます。今、世界の人道主義が試されています。

日本人の全員が漫画を支持しているとは思われていませんが、日本人の見解をもう少し世界に伝える必要はありそうです。

まさケロンのひとこと

難民が日本にくるのに「賛成」か「反対」かっていったら一言じゃ答えられないんだけど、もし日本にきたときは「日本の文化」っていうのを一緒に大切にしていけたらいいなーって思うよ。

masakeron-love


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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。