台風が通り過ぎた翌日、天気予報などで
「台風一過の晴天が広がる一日となりました。」
なんていっているのをよく耳にします。
子どもの時、あれを“台風一家”と解釈し、
「台風の家族?どういう意味なんだろう??」
と思った経験は、誰しも一度はあるのではないでしょうか。
えっ!「今もそう思ってた」って!?
台風の大家族が通ったように、激しい台風だったことを表現する言い回しだと思っていましたか?
・・・・ん~、中にはそういう人もいるかもしれませんねぇ・・・・。
台風一過はいい意味で使う言葉です
「台風一過、大雨による被害が広がっています」とはいわない
「台風一過」は、“台風が去った後、穏やかな晴天が訪れる様子”を表す言葉です。
ただ「通り過ぎた後」ということだけを意味するのではありません。
イメージとしては、爽やかで、安心した、平穏に戻った日常に「良かった・・・」と、すがすがしい気持ちになる状況です。
慣用句的に、お騒がせで何かとハプニングを起こしやすい人や、押しが強くて周囲の人を面倒に巻き込みやすいタイプの人が、その場から去った時などにも、この表現が使われることがあります。やはり、「やれやれ、災難が去ったぞ・・・」という安堵感が漏らす言葉です。
大荒れの後、悲惨な状況が広がっている状況を伝える時には使いません。
最近、災害現場を映すニュースなどを見て、タレントコメンテーターなどが
「台風一過の状況ですねぇ」
なんて使い方をしているのを時々耳にします。が、悪い印象の表現の時には、本来使ってはいけません。
また、「日本を台風一過が直撃」などというのも、間違った使い方です。
一過はサッと過ぎ去ること
「台風一過」の「一過」には、
- 留まらず、一時的に通り過ぎること
- 一つの何かが過ぎ去ったこと
という意味があります。
どちらにしろ、
“インパクトが強く、無視できなかった何かが、サッと過去っていった”
というイメージの表現です。
といっても、ほとんど大したこと無かった台風でも、翌朝ピーカンに晴れて気温が上昇し、秋口なら、一度涼しくなりかけていた暑さが戻ってきたような日になれば、「台風一過」と表現する人はたくさんいます。
要は、「空が晴れ渡り、気温が高くなる日」であることにポイントがあります。
なぜ台風一過は晴天で暑くなるのか?
台風が空気中のゴミやほこりをお掃除
普段、大気中には、無数のチリやほこりがまざって浮遊している状態です。台風の暴風雨は、それらのゴミをすべて吹き飛ばし、洗い流してしまう作用があります。
いつもより、不純物が少なく、澄み渡った空気となることで、太陽光が邪魔されることなく通り抜けます。だから、光は燦々とより輝いて爽やかに見え、多くの太陽光が地面に差し込むので気温も上昇するのです。
よく、「台風一過は夕焼けがきれい」ということもいわれますが、これも、空が澄んで光の通りがより美しく目に届くようになるためです。
台風の後には高気圧
台風の正体は熱帯低気圧です。その中心部では、湿度の高い温かい空気が次々上昇気流を作っているため、中心に行くほど気圧が下がっていきます。
上昇気流として上空に運ばれた空気は、積乱雲も作りますが、そのまま上空に停滞することで、低気圧が去った後、高気圧を形成していきます。上昇気流の規模が大きい台風や、ゆっくりと停滞していた台風の時ほど、上空で高気圧の準備が進むので、過ぎ去った後にはより強い高気圧が形成されます。
また、台風が日本の西側を通って行った場合、反時計回りの空気の流れの影響で、通常日本の東側にある太平洋高気圧が、引き寄せられる原因ともなります。これも、台風一過に形成される高気圧をより強いものにします。
台風の後には、強い高気圧が訪れることも、晴れて暑い日になる大きな理由です。
以上、「台風一過」の意味と状況の説明でした。イメージを正しくインプットすれば、もう「台風一家」などと書き間違えたり、勘違いしたりすることは、無くなりますよね・・・たぶん。
台風一家って間違われすぎて辞書にまで載ってたりするもんね。そのうち本当の台風一家がやってきたりして。。