たった一夜で終ってしまう日本のクリスマスに対して、西洋などカトリックの強い地域では、クリスマスの期間は12月25日から年明けの6日まで続き、その間ホリデーイベントがあります。
クリスマスはもともとヨーロッパの冬至祭にキリストの降誕を記念する日が合体したものです。冬の日照時間の短いヨーロッパでは古代から冬至は大事なイベント期間でした。
実は日本でも、クリスマスは一日だけでも冬至については「期間」として意識されています。
これは、古代中国から伝わった暦のひとつ「二十四節気」の考え方が引き継がれたものです。
太陽太陰暦にまつわる習慣の残る東アジアでは、冬至の日から次の二十四節気の「小寒」(1月4日頃)までの期間のことも「冬至」と呼んでいます。
冬至は太陽と地球の位置で決まる世界共通の日
冬至とは「昼間の長さが一番短い日」のことではない
冬至というと、一般的には「一年で一番昼間の短い日」だと思われていますが、実は学門的な定義は違います。
学術用語のまま言うと「太陽黄経が270度となる瞬間」が天文学的な冬至であり、暦では「その瞬間を含む日」のことです。
もう少しわかりやすくいえば、
地球が、公転軌道上「北半球が太陽方向とは反対側に最も傾く」位置にある瞬間・日
です。
地球と太陽の位置関係で決まりますから、地球上どこにいても冬至の瞬間は同じです。
南半球では当然「一年で一番昼間が長い日」となります。
南半球では冬至が夏至に、夏至が冬至になるわけではない
冬至は、英語でも
「winter solstice(直訳すれば冬の極み)」
と言います。
大昔、天文学がある程度グローバルに確立されたのが北半球だったため、こう命名されたのでしょう。
当時はまだ地球が丸いことも、南半球があることも北の人たちは知らなかったのです。
後に南半球にも人間社会や文明が存在することが発見されましたが、先に組織だっていた北半球の勢力が南を征服していく形で人類の歴史は進んだため、北の文明が世界基準になり、南半球でも同じ学術用語が使われました。
現在も、南半球では実際の季節は夏であっても、正式な名称としては
「winter solstice」
が使われます。
冬至の時期は一年で一番寒い時季、にはならない
冬至を境に春らしくなっていくとは限らない
南半球の話はまあ置いておいて、北半球においては、冬至を境に日照時間が増えていくはずですから、気候も冬至が冬のピークで、そこを過ぎたら日に日に春に近づくのではないか、と、思うのですが、実際は寒さが最も厳しくなるのは冬至を過ぎてひと月くらい経った頃です。
二十四節気でも、その頃を「大寒」と呼んでいます。
特に朝方の寒さや暗さは、クリスマス前よりも正月明けた以降のほうが増していきます。
日の出時刻と朝の最低気温
まず、実際の日の出の時刻を見てみましょう。東京を例にすると最も遅い時刻になるのは正月明けの10日の前後です。
冬至の朝よりも4~5分遅くなっています。6~7時頃に起きて出勤する人には、正月明けのほうがわずかですが暗く感じるのでしょう。
放射冷却による最低気温を記録するのは日の出の頃ですから、丁度活動を始めるくらいの時刻に日の出が近いこの頃は、急激に寒さを感じるようになります。
そして、日の出が最も遅い日を過ぎても、ますます気温は下がっていき、大寒の頃に最低気温の底が出るのです。
太陽によって地球が温められるには時間がかかる
日の出は冬至の後に多少遅くなるものの、その分日の入りも冬至の半月ほど前からだんだん遅くなっており、一日の日照時間はやはり冬至を境に長くなっていきます。
太陽に当たる時間が長くなるのにすぐに気温が上がらないのは、なぜなのでしょう。
理由は、
地球は水のたくさんある惑星だから
です。
水の比熱は大きい(暖まりにくく冷めにくい)ため、暖め始めてから本当に温度が上がってくるまでに時間がかかってしまうのです。
冬至まで毎日日照時間が短くなりだんだん冷えてきた土地や空気を、冬至を境に暖め始めても、実際気温が上がってくるのは2月に入ってからになるのです。
これは夏も同じで、最も日照時間が長くガンガン暖めている6月の2ヶ月後に、実際に暑さのピークがやってきます。
寒さの始まる時季ですが、東西で祝われる冬至
西洋では太陽の存在感に意義を見出す
寒さのピークが冬至の後にくるのはヨーロッパでも同じですが、“冬を乗り越えたことのお祝い”は、冬至の時期に行われています。
これは東洋より緯度が高いため、日照時間の違いがとても大きく、体感気温の問題より、目に見える日照時間の伸びの有難さが印象深いためでしょうか。
太陽の存在感こそが最も季節感を感じるものなのかもしれません。
東洋の冬至は暦の起点
中国にも冬至を祝う風習があります。西洋と同じく、冬至を境に日照時間が伸びていくことは、運気が陰から陽に転じる日という意味で
「一陽来復」
と呼び尊びました。
「冬の終わりを祝う」というのとは、ちょっとニュアンスが違います。
もうひとつ、冬至には「暦の始まり」という重要な意味があります。
中国では長い間太陽暦ではなく太陽太陰暦が使われ、今もなお重視されています。
ひと月の日数も一年の日数も決まっている太陽暦と違い、太陽太陰暦は月の満ち欠けがひと月となり、その月が何月にあたるのかは、太陽の位置によって決まります。
太陽と月の周期を綿密に計算しないと暦が作れません。
この計算の際に、最初の基準になるのが冬至であり、「冬至は暦の起点」なのです。
暦が確立された古代中国の王朝では実際に冬至の日を一年の始まりとしていました。
そして冬至節は新年の祝賀として盛大に祝われたのです。
季節感に忠実に春の始まりを祝う中国
中国も漢の時代になると、季節の始まり(春)と一年の始まりが揃うほうがよいと、一年のスタートは立春の前後の月初めに変わりました。
しかし、暦をつくる起点が冬至であることは変わらず、一陽来復の冬至節の祝賀も受け継がれ、現在でも、本当の新年の祝い(春節)に次ぎ大事なイベントとして残っています。
太陽太陰暦の太陽暦の部分が二十四節気になるわけですが、それぞれの節気は季節感を明確に表す言葉で示されます。
運気の復活する日であっても厳寒に向かい始める節気は「冬至」で、その寒さのピークを越えたところに「立春」を持って来て一年の始まりとし、太陽暦を使いつつも、節気に忠実に春節を祝う中国は、季節感を重視する東洋らしい文化を体現しているとも言えます。
年末の忙しさが増す時期ですが、寒さも増していく冬至の時期、皆さんもお体おいといくださいませ。本当の春はまだまだ遠いです。
冬至を境に日照時間が伸びていくことから、運気が上昇していく、と!寒いばっかりじゃなかったんだね〜。