残業

賛成?反対?「残業代ゼロ」法案は日本で受け入れられるのか?

Written by 言祝(kotoho)

「残業代ゼロ」法案とは

労働時間は意味がなくなる?

政府の産業協力会議がまとめた、「高度プロフェッショナル制度」と呼ばれる案件が、今国会で成立にむけて審議されます。

「長時間働いても残業代が支払われない新しい働き方」

を提唱するその内容から「残業代ゼロ」法案という通称で新聞などで取り上げられているので、気になっている方々も多いのではないでしょうか。

「残業代ゼロ」とは、穏やかな表現ではありませんよね。

日本の労働基準法には一日の労働時間を原則として8時間と定められていることはご存じでしょう。

これを越えた場合、企業は従業員に対して割り増し賃金を払わなくてはいけないのです。

俗にいう「残業代」ですね。今回審議されている「残業代ゼロ」法案は、この労働時間の規制を撤廃するという内容なのです。

仕事に対する評価は成果や質を考慮し、これまで基本的な基準となっていた労働時間はまったく問われないことになるというわけです。

「どれだけ長く働いたか」ではなく「どのような成果を上げたか」を重視する形にシフトしているわけです。

この法案が通ることになった場合、来年の4月の実施を目指しているとのこと。

ただし、いきなり全企業が対象となるわけではないようです。

年収1075万円以上の人が対象となり、アナリスト、コンサルタント、研究開発といった高度な専門技術が必要とされる限られた職種のみに当面は適用されるとなっています。

様子を見て段階的に広げていくということのようです。

実は一度猛反対にあっている

この法案、安倍首相としては労働問題の解決のきっかけになればと考えているようです。

実は同じような法案が2006~7年の第一次安倍政権当時検討されていたのを覚えていますか?

「ホワイトカラー・エグゼンプション」という名称でした。

この法案の対象者は年収900万以上、対象職種はとくに定められていませんでした。

そのため「過労死を助長する」として各方面からの猛反発にあい、立ち消えとなりました。

今回は前回曖昧だった部分を明確化し、対象者の年収を引き上げるなどして再度、案として浮上したものです。



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反対? 賛成?

良い考えだとは思うが…

あなたはこの法案、反対ですか、賛成ですか?

筆者の考えを述べさせてください。

良い案だと思うけど、たぶん失敗すると思います。

少なくとも安倍首相がイメージしているほどの効果は期待できないと考えています。

なぜか?

説明する前に質問します。

あなたの一日の仕事が終わったとします。

この日はとても順調で予想以上に仕事がはかどった。時計は午後5時。同僚たちは忙しそうにしている。

この状況でひとり帰宅することが出来ますか?

筆者はできません。

帰りたいと思っていても、自分を殺して同僚たちの仕事を手伝ってしまいます。

なぜか?

  • もし自分の仕事が終わったからと、一人だけ帰ってしまったら、まちがいなく仲間外れにされます。

同僚たちからは

「空気が読めない奴」

と陰口をいわれるだろうし、

上司からは

「協調性がない。会社に対する忠誠心に欠けている」

と判断されてしまうのが怖いからです。

昔とはだいぶ変わったといわれていますが、日本の企業って体質としてこういう部分がいまでも根強く残っていると思いませんか?

もし法案が可決され、「残業ゼロ」法案が改正案となったとしましょう。

すべての企業が遵守しなければならないとしたら、単純に考えて残業代はもらえなくなってしまうのですから、誰でも定時に仕事を終わらせようと工夫するに違いありません。

それはとても良いことです。

また、「仕事の成果や質」が評価の対象とされるのであれば、勤続20年以上のベテラン社員よりも入社半年の新人のほうが給料が良いというケースもありえます。

これも日本の経済にとって良い刺激になるに違いありません。

でも日本の企業はそのような変化に対応できるような資質を持っていないように筆者は思うのです。

自分の仕事が早く終わったら、

「よく頑張ったね。帰って良いよ」

といってくれる上司がどれだけいるでしょうか?

「暇なら手伝ってくれ」

と、新たに仕事を振られることの方が圧倒的に多いのではないでしょうか?

このような土壌なのですから、「残業ゼロ」など絵に描いた餅、まったくお金にならない「サービス残業」がまかり通ってしまうことでしょう。

しかも労働基準法で「8時間以上労働させても、割り増し賃金は支払わなくて良い」となったら、もう働いている側としては黙って従うしかないのです。

アイデアは良いけど現実が見えていない、そんな気がします。

筆者は実際に見たわけではありませんが、欧米では自分の仕事が終われば、たとえ同僚が仕事に追われていても平気で帰宅する、それが当たり前だ、という話を聞いたことがあります。

これには根拠があります。欧米では雇用時に「職務記述書」というものを取り交わすのだそうです。

これは「あなたの仕事の範囲はここからここまでですよ」という取り決めのようなものです。

つまり仕事の責任範囲が明確にされているのです。

だから「自分の仕事の範囲はここまで。同僚には同僚の責任範囲があり、それは私が手伝う必要がないものだ」

という考え方が通用するんだそうです。

企業もそれを尊重している。

もし「残業ゼロ」法案を通したいのであれば、そこまで整備しなければうまく機能しないと筆者は思います。

「オレは時間を売っているんだ」

筆者の知人でおもしろい考えを持った人がいます。

「オレは特別な才能を持っていない。芸能人のような容姿も持っていないし、音楽や絵画の才能もない。そういう才能がないから売れるものは時間だけだ。オレは会社に時間を売って金をもらってるんだ」

これが良いか、悪いかは置いておいて、「時間を売っている」という考え方は真理をついていると思います。

この法則で考えると法案が現実化した場合、彼は「失業」することになります。

実は彼だけではなくほとんどの人が失業するのではないでしょうか。

もちろん筆者だって例外ではありません。

多くの人が「時間を売っている」 これは各個人の問題ではなく、そのような土壌が日本の企業に根付いているのだと筆者は考えます。

だから根っこの部分を変えない限り、何も変わらないのです。

まさケロンのひとこと

実際大切なのはかけた「時間」じゃなくて得られた「成果」のほうだよね。
働いてる人の意識も、成果を意識した方が良い方向に向かうとは思うんだ。
残業代ゼロにするなら、「働き過ぎをさせない仕組みづくり」も必要になってくるね。

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筆者情報

言祝(kotoho)

映画オタク。日課は読書。最近は料理にハマっています。座右の銘は「好奇心を失ったら、そこで終わり」