「主人が家事を手伝ってくれます」
と言うと、大抵の場合
「協力的なご主人なのね」
などという返事が来ますよね。
このやり取りの中に「それが間違い!」と指摘されかねない言葉があるのを知っていましたか?
言葉の中にも差別あり?
家事を手伝ってくれるのはNG
男女平等を目指す現代。
家事を手伝うなんて言い方そのものが、夫はもともと家事をやらない役割みたいに聞こえるのでNGなんだそうです。
夫婦共働きは珍しくなくなった近年。「家事は妻の担当」という考え方も改めなくてはならないということなのでしょう。
自分が仕える人
また「主人」という言い方もダメだという考え方があるようです。
主人という言葉の意味を調べてみると、
などと書いてあります。
もちろん
という意味もあるのですが、「自分が仕える人」というのが一番の問題。
男女平等の観点からみると、良くない表現になってしまうのでしょう。
主人のルーツ
夫のことを「主人」と呼ぶルーツは、きっと戦国時代以前に遡るのではないでしょうか。
その頃の時代は夫が家長。妻は家を守る立場と決まっていました。
家族は家長が働いてくれるから自分達が食べていける、生きていけるという考え方から、家長は家の中で絶対的な存在。武家ではお館様もしくは御屋形様とも呼ばれていました。
その名残りが戦後しばらくの間まで、続いてきたのではないかと思われます。
良妻賢母が邪魔をする?
女性が働きにくい国
妊娠・出産が可能なのが女性ということもあって、外国でも家を守るのは女性の役割という時代が長かったことは確かでしょう。
しかし先進国の中でも「女性が働きにくい国」の代表国でもある日本。
日本が高度成長期にあった頃。その労働力が不足した時、男性が長時間労働をすることでそれを補ってきました。
この時期に作り上げられた働き方が、今もそのままベースとなっているのです。
良妻賢母
今では女性も男性と同じように大学を卒業して就職するのが当たり前となり、その意欲も男性と変わらず強いものの、妊娠や出産・育児などとの両立が難しいため、キャリアを中断せざるを得なくなっています。
更に昔から根強く残っている「良妻賢母像」。
時代が変わり、男女雇用機会均等法が施行されても、やっぱりどこかで結婚後の女性に求められる姿でもあります。
働けない環境
冷凍食品やインスタント、レトルトを食卓に出すのは歓迎されませんし、洗濯や掃除もやらなくてはなりません。
その上、子育てまで加わればフルタイムで働くことは非常に厳しくなります。
フォローしてくれる人が傍にいてくれれば何とかなるかも知れませんが、子どもが病気になるたびに仕事を休むなんてことは出来ません。
男性が働きながら家事、育児全般をこなせるかと言ったら、やはり無理でしょう。
専業主夫の存在
主夫が認識されました
昔、阿部寛さんと宮迫博之さんが共演した「アットホームダッド」というドラマがありました。
夫と妻の立場が逆転し、妻が働きに出て夫が専業主夫になるというストーリー。
最初はその主夫ぶりがめちゃくちゃでトラブルも多いのですが、時間と共に慣れてきて、それと同時に今までちょっとバカにしていた主婦の大変さを理解していくという内容です。
あのドラマをきっかけに主夫というものも認識され始め、賛否両論はあるものの「そんな生き方があるんだ」ということが世間に広く知られるようになりました。
専業主夫はまだ少ない
でも実際にその言葉を知っていても、当たり前に見かけるほど主夫は多くありません。
特に「専業主夫」はなかなかお目にかかれないのではないのでしょうか。
自営業だったり、短時間勤務で働いていたりと、その傍らで家事も担当しているという男性が多いようです。
男性の中にだって、家事や育児が大好きでこまごまとした仕事も根気強く器用にこなせる人がたくさんいます。
出来れば専業で主夫したいと思っている人もいるでしょう。
世間体
でも、ここでそれを邪魔するのが「世間体」。
この世間体という意識は男女平等という社会を目指す上で、一番高いハードルと言えるかも知れません。
他人事であればOKな選択でも、いざ自分の家のこととなると、そうはいきません。
例え夫婦お互いが納得して選んだ道でも、両親や兄弟、親族が賛成してくれるとは限りません。世間体が悪いという言葉が必ず出てきます。
専業主夫は歓迎されない?
「専業主夫になりたい」という男性に対し、それをどう思うかというアンケートを女性にしたところ、
という意見が意外にも若い女性からも多いのです。
また50代以降の女性だと、
という厳しいご指摘もありました。
当人同士が納得しているのならそれが一番で、本当は周りがとやかく言うことではないのでしょう。
でも結婚は家族同士の結び付きという考え方をする人も多いので、今後お互いの実家で耳にタコなお説教を何度もされるよりは、きちんと納得してもらう方が楽なのかも知れません。
イメージや偏見
専業主夫のイメージ
実際に専業主夫になった男性の話によると、周りからの変な気遣いが困るようです。
妻が働き夫が家にいるイメージは、
「夫のリストラ、失職」
ということに勝手に直結させてしまう人が多く、いわゆる急な不可抗力の事態にダメージを受けている状況。
もちろん生活苦で大変と思い込まれているものだから、例え望んで主夫になっていたとしても「腫れ物に触るような扱い」を受けてしまうこともあるようです。
ご近所の御夫婦からも「大変ですね~」なんて言われちゃったということも…。
だからといって、その事情を詳しく説明しても、言い訳しているようにしか聞こえなくもないし、またそこまで話す間柄でもないかも知れないしで、なかなか複雑な事態になってしまうようです。
リストラや失職でなくても、夫が主夫をしている家庭は「夫の収入が低い」と言っているようなもの=それは世間体が悪い…主夫のイメージや偏見はなかなか厳しいものがあります。
主夫の割合
今のところ、主夫の割合は
全体の1~2割程度
といわれています。
この数字を少ないと感じるか結構多いと感じるのかはそれぞれですが、増えているのは確かです。
2005年に約2万人だった主夫の数が2010年にはその3倍の約6万人。
これからも少しずつ増えていくのではないかと思われますが、一番の問題点は再就職をしようと思った場合です。
履歴書の空白
妻が専業主婦をやっていてキャリアを中断した期間があったとしても、妊娠や出産・育児などの止むを得ない事情をある程度理解してもらえます。
男性の場合は専業主夫をやっていた事情がはっきりせず、いくら育児や家事の為と言ったところで採用側の受け取り方は今ひとつ納得しかねる状況。
結果的に自分の履歴書に空白の期間が生じてしまうのです。
むしろ女性より男性の方が、一度キャリアが途切れると再就職が困難なのかも知れません。
大切なのは「意識」です
女性への支援だけでは解決しません
という言葉をよく耳にしますが、女性への支援だけでは何も解決出来ません。
男性が家事や子育て、介護や地域活動に参加出来るようにする為には、まずその労働時間の短縮や休暇制度の充実が必要です。
既に制度はあっても、実際には利用しにくいという話も聞こえてきます。
上司が積極的に利用し、それを部下にも促していくよう「実行」することで、初めて社会が前に進み出すのです。
固定観念は侮れない
内閣府の男女共同参画社会に関する世論調査の結果を見ると、
「夫が外で働き、妻は家庭を守るべきか」
という質問に対し、
- 賛成が44.8%
- 反対が52.1%
となっています。
かろうじて反対の方が上回りましたが、10ptも違わない結果に驚きます。
まだまだ女性が積極的に社会進出することのハードルの高さが裏付けられたようにも思えます。
らしさ
「男らしさ、女らしさ」これも大きな問題のひとつ。
ここだけは、なかなか平等に考えられない意識が根強いことを日々感じます。
昔に比べれば、あらゆる面で理解されるようにはなっているものの、男のくせに…女のくせに…と、つい思ったり言ってしまうことが多々あります。
男らしい、女らしい
例えば
- 「家事が苦手」
- 「脚を開いて座る」
- 「雑な言葉遣い」
こういった女性に対しては「女らしくない」となり、
- 「きれい好き」
- 「決断力がない」
- 「なよなよしている」
こんな男性には「男らしくない」というイメージが付いてまわります。
頭のどこかではNGだと分かっていても、つい「女の子でしょ」と娘に注意したり、気の弱い男性を見たりすると「男のくせに」と思ってしまう自分がいます。
男だったら褒められること、女だったら褒められること、そんな意識が根強く残っているのは確かです。
「らしさ」という言葉は、時には人の生き方を縛ってしまうものなのかも知れません。
生きやすい時代へ
しかし男女平等という社会を目指すのであれば、そんな意識を出来るだけ小さくしていくことが必要となってきます。
これからの時代を担っていく子ども達を育てていく上で、そんな教育も大切なポイントになってくるでしょう。
大人である私達の意識改革も容易ではありません。
「男の役割・女の役割」の壁を無くし、社会全体でその流れを作っていくことで、選択肢の多い生きやすい時代が訪れるのかも知れません。
男女の扱いを同等レベルにすることはできても、まったく同じにすることはできないと思うんだよね。性別による特性もいろいろあるだろうし。
だからって選択肢に縛られることもないと思うんだ。生きやすい時代にしていこう!