2015年夏、7月7日に、グーグルがロゴをまる一日、アナログ特撮をテーマにしたミニゲームにしました。
円谷プロ公認で、ウルトラマン風キャラはオリジナルでした。
7月7日はウルトラマンの生みの親“円谷英二さん”の誕生日であり、生誕記念のようです。
でも生誕114年て、なんでそんな半端な年に・・・と思った人も少なくありませんでした。
そして、10日後の7月17日(ウルトラマンの初作シリーズが放映開始された日)、円谷プロダクションが、突然謎の動画
「ULTRAMAN_n/a」
を公開しました。
これって、何のプロモーションなんだ???
日本の特撮ヒーローの金字塔作品「ウルトラマン」
TVの普及と共に始まった特撮番組
よもや、
「ウルトラマンて何?」
という日本人はいないとは思います。
現在も新作の放映が続くシリーズなので、50代以下のどの世代の人も、あの独特の外観と、ミニチュアの街のパノラマの中で怪獣と闘うシーンを、一度も見たことがない人はいないでしょう。
最初のウルトラマンは、昭和41年(1966年)の7月から始まった子ども向け特撮番組でした。
戦後「ゴジラ」を皮切りとした怪獣特撮映画を撮り続け、それ自体がひとつのジャンルとして確立されるレベルにまで作り上げた功績は、この頃既に「円谷英二」の名を世界的に有名なものにしていました。
その円谷プロダクションが、TVの普及に合わせ、TVドラマとして初めて作った特撮作品が、同年1月から7月初めまで放映された「ウルトラQ」です。
怪奇現象をテーマに、映画で培った特撮技術を駆使して製作されたこの作品は、ほとんどの放送回で30%以上の視聴率をあげる大人気番組になりました。
ウルトラQの後半は超常現象系の話から怪獣を中心としたドラマがメインとなりました。
「ウルトラマン」は、ウルトラQの続編という形で、改めて
“怪獣vs巨大ヒーロー”
のストーリーが展開する作品としてスタートしました。
特撮ヒーロー番組の新たな時代を作る
“SF”という言葉が一般化していなかった当時、科学技術の進んだ近未来を舞台に描かれたドラマは
「空想特撮シリーズ」
と呼ばれました。
ウルトラQ以前にも、等身大のヒーローが活躍する特撮番組は少しずつ作られ、人気を得ていました。
が、円谷プロ作品は、ミニチュアを使うなどの大掛かりな特撮を導入し、TV用より高品質の映画用フィルムで撮られました。
それまでのヒーロー作品にはなかった、巨大怪獣と戦うシーンや、戦闘機や潜水艦が空や宇宙や海底を行くシーンが見られる作品群は、日本中の子どもたちをとりこにし、TVの特撮ヒーロー作品に大きな転換と飛躍をもたらしました。
ウルトラマンシリーズ以降、他局でも様々な特撮ヒーロー番組が作られていきます。
ウルトラマンの影響により一番変わったことは、ヒーローの姿です。
それ以前のコスチュームで“変装”するヒーローと違い、頭もすっぽり仮面で覆う全身着ぐるみタイプのスーツアクターさん(中の人)による、本格的アクションが売りの
“変身するヒーロー”
がお約束となりました。
これは、アメコミの変装ヒーローにも見られなかった、日本の生み出した独特のヒーロー文化です。
人間態(人間体)からヒーローに変化することを「変身」と呼ぶことを定番化したのは、ウルトラマン後に始まった東映の等身大特撮ヒーローシリーズです。
今も「へんしん」と叫ぶパフォーマンスは東映さんの専売特許のようになっていますが、やはり変身するヒーローの元祖としては、ウルトラマンが歴史を作ったといえるでしょう。
フルCGウルトラマンの質感をどう感じる?
デジタルなウルトラマン
さて、では冒頭に話を戻しましょう。
突然何の前情報もなく、円谷プロが発表した動画は、フルCGで描かれたウルトラマンのバトルシーンでした。
そこには、今まで見てきたスーツアクションヒーローとは似て非なるウルトラマンが映っていました。
- 嘘みたいに細長い手足
- ちっちゃい顔
- 筋肉や血管の動きが生々しく感じられる皮膚の質感
こんな体型の日本人おらんわ!!って、誰もが思う(笑)、カッコ良すぎるフォルムの奴です。
超リアルなウルトラマンの肌がエロい件
動画の内容は、渋谷の交差点の地面から突然表れた巨大な怪獣とウルトラマンが戦うシーンのみの、わずか2分45秒の作品です。
が、その画像のクオリティは、今どきのハリウッドのアクションSF作品並みです。
モーションキャプチャー(実際の役者の演技をCGに移植する技法)も入っていると思われますが、外観は着ぐるみなしのフルCGです。
アクロバティックなカメラアングルもデジタル作品ならではの臨場感があり、スパイダーマンやアベンジャーズを見ているかのようです。
アナログ特撮にはないリアルな肌の質感は、エロチシズムすら感じるほどの艶めかしさです。
ウルトラマンの身体の表面は、まるでスッポンポンの肉体にペイントしたみたいに見えます。
賛否両論の反応
この新たなウルトラマンの姿は、エヴァンゲリオン(ちょっと前に流行ったSFアニメ。戦闘メカがそれまでにない長い手足の猫背の人間型フォルムでした)に親しんだ世代の人たちには、概ね好評のようです。
21世紀のウルトラマンとして、めちゃめちゃカッコよく感じるような感想が、SNSサイトなどでもたくさん見受けられました。
一方、
など、従来のアナログ特撮作品との違いに違和感を覚えるような反応も少なくありません。
アナログ特撮技術の持つ良さ?
デジタル技術の発展は、特に2000年代以降、特撮技法を大きく変えました。
ハリウッド作品等の特撮で、着ぐるみやミニチュアパノラマ、テグスでの吊るし撮影などのアナログ技術が使われることはなくなりました。
が、一時期の黄金時代を作り上げた日本のアナログ特撮技術は、当時は大きな評価と称賛を得ました。
ヒーローも、怪獣も、あの着ぐるみアクションだからこその味わいをこよなく愛する人たちは、実はいまだにたくさんいるのです。
そういう人たちにとって、CG等の作画技術もふんだんに取り入れながら、今もなお、パノラマと着ぐるみのアクションシーンにこだわって作られているウルトラマンシリーズは、日本の伝統を大事に保存継承する大切なもの、と認識している傾向が強いです。
艶めかしいフルCGのウルトラマンは、そんなアナログ特撮保存派の皆さんから見ると、ちょっと受け入れがたいものも感じてしまうようです。
「迫力とかっこよさをとことん極めたい!」
「日本の特撮技術もハリウッドに負けないモノつくれるんだぞ!」
という気概にも賛同するものの、
「ウルトラマンはそんな風にリアルにデジタル化しちゃ、違うだろ!!」
という、複雑な思いが錯綜してしまう特撮ファンが、たくさん出現している模様です。
たかが・・・されどウルトラマン
現時点では、この動画は単品のファンサービス作品なのか、次回作へのステップなのか、なんだかうやむやなままの状態となっています。
動画の中の英語のメッセージが意味するところは何なのか?最後に提示された「7.7.」という円谷さんの誕生日の数字は何を象徴するのか・・・・。
フルCG賛成派も、ちょっと複雑なアナログ派も、しばらくはドキドキしながら今後の動向を注視することとなりそうです。
世界興業のSFアクション映画にも、ちょっとなってほしい気もしますが・・・・。
マニアじゃない人でも、ちょっと気になるウルトラマンの今後です。
まさケロンはこの大迫力のウルトラマンが大好きになった。こんな感じで映画でもやろうものなら是非とも見に行きたい!