インターネットリテラシー

ネットの都市伝説/真相解明より虚偽の噂の拡散が勝つ時代

Written by すずき大和

都市伝説と聞いて、あなたはどんな話を思い浮かべるでしょうか。

ホラーや怪談のようなちょっと怖い超常現象話のイメージですか。

それとも、「○○すると××になるよ」的ジンクス話?

「△△△すると願いごとが叶う」のような占い願掛けの噂もよく聞きます。

ネットの世界では、「アニメ作品にまつわる都市伝説」というネタもよく見ます。

イマイチ定義がよくわからないところもありますが、ちょっとした話の小ネタとして、世代を問わず興味を持つ人が多い話題です。



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都市伝説って何?

日本最初の都市伝説「口裂け女」

都市伝説と聞くと、アラフィフ世代の人たちは、1979~1980年にかけて話題になっていた「口裂け女」や、80年代にブレイクした「トイレの花子さん」を思い出すかもしれません。

どちらも

“昭和を代表する都市伝説”

“都市伝説のはしり”

というキャッチコピー付きで紹介されることが多い話です。



当時は、まだ携帯電話もネットも一般家庭の中まで浸透しておらず、CSチャンネルも普及していませんでした。

噂の広まり方は、まず口コミ、それを雑誌やラジオなどのメディアがネタとして取り上げ、ブレイクするとTVを通して一気に全国に広まる、という感じでした。

当時の人々は特にTVに情報依存する部分が多く、皆が一斉に話題のテレビを見るので、視聴率40%!なんて数字が平気で出る時代でした。

口コミとマスメディアの相互効果で広まった都市伝説は、噂の出所も、噂が変化・伝播していく過程も、きっちりと検証しきれるものではありません。

どこの誰の話かわからないけれど、気付くといろいろな地に広まっていて、広まった先で、更に細部の話がどんどん詰められ、それがまた広まる・・・というパターンが繰り返され、伝説の詳細がどんどん形作られていきました。

特に口裂け女の時は、報道番組のニュースになるくらいブームとなる頃には、本気で怖がる子どもが登校拒否になるなどの社会問題にまで発展し、大騒ぎになりました。

バブル期に生まれた「都市伝説」という噂ジャンル

世間の定番噂話、民間継承の伝説、というものは、明治や江戸や、たぶんその前のずっと昔の時代からも、各地にいろいろありました。

羽衣伝説や各地の神話など、観光資源にすらなっている伝承話もたくさんあります。これらは都市伝説とはいいません。

都市伝説は英語の

「Urban Legend(アーバンレジェンド)」

の直訳です。

アーバンレジェンドという現象と造語を最初に提唱したのは、アメリカの民族学者ジャン・ハロルド・ブルンヴァンさんです。

伝統的な民話に対して、近代文明が発達した社会で発生した伝承話の中で、

“どこかの誰かが体験した本当の話”のように語られる“本当じゃない話”

のことをこう呼びました。

そして、80年代にこの現象についての著書をいろいろ発表し、世間に知られるようになりました。

消えるヒッチハイカー
参考:Amazon「消えるヒッチハイカー 都市の想像力のアメリカ」ブルンヴァン著



 
1988年にブルンヴァンさんの著書が日本でも出版され、この時初めて

「都市伝説」

という言葉が世の中に登場します。

実は花子さんや口裂け女騒ぎの当時は、まだこの概念はなく「巷の噂話」などと紹介されていました。

しかし、都市伝説というジャンルでの逸話の紹介がブーム化するに従い、まさにその典型例として語られるようになったのです。

ポイントは、本当の話という立証がないこと

都市伝説の大事なポイントは、「本当じゃない話」であることです。

しっかりと記録や物証があって、事実と認定されている話は、伝説とはいいません。

センセーショナルだったり、嘘みたいに偶然な話だったり、など大変興味深いけれど、事実かどうかは聞き手の裁量で判断するしかない類の話が都市伝説、といってもいいかもしれません。

「信じる信じないは、あなた次第」

という言葉で締められていれば、それは都市伝説のサインです。

口コミで広まる話がメインだった時代は、話の出所を確定するのが難しかったのは、前述の通りです。真偽の確かめようもない噂話は、まさに都市伝説だったわけです。

ネットで生まれた伝説の解明

怖い話から「謎」に注目する話題に変化していく

口裂け女騒ぎから時が流れ、やがて誰もがインターネットで繋がる時代がやってきます。

噂話の伝達経路が、

「口コミ・電波・活字」

から

「メール・BBS(掲示板)・SNS」

に変わっていきました。

  • 2チャンネル
  • mixi
  • Facebook
  • Twitter
  • LINE・・・・

これらが日常コミュニケーションの多くを占める人が増え、時や場所を超えてすぐに見知らぬ他人にまで情報が拡散されるようになりました。

そこで生まれる噂は、伝達速度も範囲も以前とはケタ違いです。一日かからず都市伝説ができあがってしまう現象が多々発生しました。

口コミ時代の都市伝説は、超常現象のような不気味系の話題が人気でしたが、ネット時代になると、メディアやドラマやアニメ作品等にまつわる都市伝説の類が爆発的に増えていきました。

  • ディズニーにまつわる都市伝説
  • ジブリ作品の都市伝説
  • サザエさん都市伝説

などが、ネットのまとめ記事サイトではよく目につきます。

これらは不気味な話ではなく、

“事実かどうか確認できないけれど、意外な逸話”

という一種の「謎」話です。

多くが真相解明されている噂話

口コミ伝達ではなく、BBSやSNS経由で発展する噂は、ログ(記録)が残されている場合が多く、話の出所も内容の発展経過も、たやすく検証できるようになりました。

また、メディアや映像作品、テーマパーク等の伝承話の多くは、だいたい以下のパターンに分けられます。

「実は、このシーンには、○○○という別バージョンが存在する」

「△△△(キャラの名前)は、実は×××(多くは衝撃的な事実)である」

「結末の続きは、実は●●●という展開になる」

「メイキング過程で、制作サイドやスポンサーのこんな事実が隠されていた」

これらは、実際に制作に関わった人やオンエア画像に当たることができれば、真偽を確かめられる話がほとんどです。

そして、多くの伝説について、真相解明を試みる人(時には制作者本人)によって、真偽の程や、なぜそんな伝説が出来てしまったかという原因(多くが勘違いや思い込み、誤解、単なる間違い、デマ)まで、解明・解説がされています。


みんなの知りたいことは真実より伝説

解明の結果、それが事実であった、という確認が取れたものの多くは「伝説」から「ウンチク」になり、引き続き情報拡散されています。

そして、反証が成り立ったエピソードの多くも、そこで噂が沈静化することもなく、未だに「都市伝説」として情報拡散し続けています。

ネットの書き込みの間違いを後で訂正・削除しない人は多く、また真偽を確かめずに拡散する人も後を絶たないので、一度広まると訂正できない、というネットの特質は確かにあります。

一方で、都市伝説やネタを集めたサイトなどで、「謎」として伝説のまま書いた記事と、真相解明までかいた記事の両方があった場合、圧倒的に「信じる信じないはあなた次第」で終わる記事のほうが支持される傾向が見られます。

アクセス数もコメント反応も、シェアも、嘘のほうが真実より人気があるのです。

都市伝説まとめサイト運営者の多くは、それがわかっていて、わざと真相解明記事にふれない人もたくさんいます。

みんなが大好きな都市伝説とは、

「真実であると確認できない話」

であり、

「真実じゃないと証明できる」かどうかは気にしないようです。

これは、「謎」であれば、「嘘」でもいい、っていうことかもしれません。

出所がわかっているのに立証できない話

2005年に突然現れ、内容のホラー加減がハードで、多くの人を震撼させた伝説があります。

「コトリバコの呪い」

といわれるこの伝説は、2チャンネルの書き込みとして語られた話です。

話の顛末から細部の理由づけまで詳細に書きこまれた話で、その時点でかなりの完成度となっている物語でした。

実在するコトリバコのひとつは現在行方不明、という怖い振りまでつけたので、寄木細工の箱にさわれなくなった人もいるとかいないとか・・・。

余りの衝撃的な内容に、当時は一気に拡散されましたが、既に完成されている話なので、拡散の過程で尾ひれがついたり、細部が異なるバージョンへの変化は最小限に抑えられ、ほぼ最初の書き込みの内容をリライトした形で広がっています。

かなり細かい歴史や場所まで書き込まれているにも関わらず、その後それを実証する事実につながる話や、類似エピソードを語る人がほとんど出てきませんでした。

実際の村の場所を詮索する動きすらネットに形跡は残っていません。

そのため、これは書き込み者の創作である可能性が高いと判断する人も多くいました。

が、その後、ネットでこの話を読んだ女性が次々と腹痛を起こした、という話があちこちで投稿されます。

怖い内容なので、呪いの暗示にかかった可能性が高いのですが、このことが「これはやはり本当にある呪いだ!」という噂の箔づけとなり、未だに「怖い都市伝説」として繰り返し拡散され、信じる人の多い話となっています。

ちなみに私は全然腹痛なんておきませんでしたが、心配な人は見ない方がいいらしいです。


都市伝説を楽しむ慣習とリテラシー

ジブリやディズニーの真実じゃない都市伝説の拡散が止まらないことも、コトリバコは本当だと信じてしまう人が多いのも、

人は謎が大好きなんだ、

ということの現れともいえるのでしょう。

せっかく謎めいた話題で盛り上がって楽しみたいのに、そんな人たちに向かって、「それってデマだよ」みたいに真相解明を語ってしまうことは、空気読めない無粋なことかもしれません。「信じる信じないは、あなた次第」のままのほうがいいのかも・・・。

が、一方で、都市伝説慣れしたせいかどうかはわかりませんが、10~30代くらいの人たちの中には、衝撃的な事実のように書かれたネット内の記事をすぐに信じ込みやすい傾向が見られるのも、様々な学者等の分析でわかっています。

中には、特定のグループの人たちへの憎悪を煽るために仕組まれたデマを信じて、異なる立場や主張の人たちに対して、敵対的・攻撃的な態度に走ってしまう人たちの言動が、社会問題に発展する例も見られます。

都市伝説の内容の「変だな」と思う点を全く気にせず受け入れて楽しんでしまうことの積み重ねが、本当に自分たちに降りかかってくる危険な情報の嘘を見抜くリテラシーをも鈍くしてしまわないのでしょうか。

ちょっと心配になるのは、花子さん世代の老婆心であってくれればよいのですが・・・・。

まさケロンのひとこと

「変だな」と思う点を気にする癖をつけてネットリテラシーを鍛えていったら“本当の都市伝説”に出会えるかもよ・・・・。

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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。