2015年秋、メディアが、フランスの同時テロと、臨時国会を年明けに先送りにして外交に励んでいる安倍首相のニュースばかりになっている最中だった11月16日、内閣府は
と、発表しました。
日本政府の論評も、メディア報道も、経済回復の傾向が一時的に停滞しているかのようなソフトな形容でさらっと流していました。一方、海外では一斉に「アベノミクスの失敗!」と、安倍政権が“詰んでしまった”といわんばかりの報道がされていました。欧米の主要メディアの多くが、日本政府の経済政策をコテンパンに叩いています。
この危機感の違いはなぜ起きる???
日本経済、本当はどうなっていくのでしょうか。
経済のしくみって難しすぎるぅ、という人向け解説が欲しい
一生懸命働いても生活が苦しい人だらけの社会は何が変?
私は経済ほんとに弱くて、日経新聞を読んでいても、ネットで初歩的な経済用語の検索をしてみても、難しくてわからないことばかりです。
日本の借金は、経済破たんしたギリシャよりずっとたくさんあるのに、どうして安倍さんは外国へ行くたびに億や兆という単位の支援を簡単に約束してこられるのでしょう?
労働者の最低賃金は格差社会といわれるアメリカよりも低く、子どもの貧困率も先進国最低レベルにあるのに、なぜ経済大国と呼ばれているのでしょう?
数字を割りだせば、日本は、他の先進国と比べると労働者が異常に搾取されている状況です。が、現場を見ていると、非正規雇用を増やすなどして人件費を削ることでなんとか経営を維持している中小企業がたくさんあります。
労働者がワーキングプアにならない社会体制が整っていて、ブラック企業が成り立たない先進国では、どうして会社がつぶれないのでしょう?
経済オンチは、いろいろな素朴な疑問ばかりが溢れてきてしまいます。
経済の理屈だけで動いてはいない社会
いろいろな経済学者や評論家の皆さんの論説は、正反対の論を説く人が乱立しています。専門家や経済に強い皆さんから見ると、鼻で笑われてしまうかもしれませんが、素人が判断するには、あまりに影響を及ぼしていることが多過ぎて、把握も分析もしきれないような気がすることも多いです。
経済視点だけでなく、社会学的な視点や政治の視点からも考えないと、問題点がどこにあるのかよくわからないこともたくさんあり過ぎます。その辺をわかり易く説明してくれるニュースコンテンツを探すのが、これまた素人には難しい状況です。
物価が上がれば、きっと所得もあがる、という幻想
それでも、経済ド素人レベルの私が付いて行ける範囲で、何とかかんとか理解できるように現状を解説してくれている情報を拾い集めてまとめてみました。専門家の人が見たら不十分で大雑把なまとめだとは思いますが、とりあえず、一番大事なところを理解することに特化・単純化しています。
金融政策で景気回復できるぞ!がアベノミクスの基本概念
安倍さんの目指した景気回復は「リフレ政策」という考え方に基づいていました。
90年代以降、デフレ経済(物の値段がどんどん下がっていく状況)の中で不況が恒常化する状態(デフレ・スパイラル)が続いていました。
簡単にいうと、
- お金持っている人はいるけれど、誰もそれを使わない
- 世の中のお金の流れがとっても少なくなり、企業が儲からない
- だから給料も上がらないし失業者が増える
- 所得が下がっていくから、皆はますますお金を使わない
- 買ってもらうためには値段を下げざるを得ない
- 値段が下がると企業がますます儲からない
- ますます働く人の所得が減って、失業者が増える・・・
このくり返しです。
景気を良くするには、人々がお金を使うように仕向けることが必要です。
リフレ政策とは、
「政府が市場にたくさんお金を放出すること(量的緩和)」で
「デフレをインフレ(値段が上がり続ける状況)にする」作戦です。
“インフレに向えば、皆がお金を使うようになる”が大前提の経済論でした。
物価を先にあげても所得はあがらない
インフレになるとなぜ人はお金を使うようになるのでしょうか。
当時すでに金利は限りなく0に近く、金利よりも物価の上昇のほうが大きいと、
「お金は預けておくより、投資するか、値上がりする前に物を買った方が得だ」
と思う人が増えて、お金を使う、という理屈です。
政府は「財政出動」と「お札の増刷」によって一時的に物価を上げました。が、人々はそれほどお金を使うようにはなりませんでした。
金融政策は、
“インフレをおこす政策”ではなく、
“インフレになる見込みを人々に持たせる政策”です。
日本国民はそんなに甘い未来をすぐ信じはしなかったわけです。実際、人々の暮らしは物価や公共料金や消費税が上がった分苦しくなりました。
アベノミクスはこの時点で破たんしています。
構造改革はどこへ行った?
金融政策は一時しのぎでしかなく、本当に景気回復するのならば、
「所得が上がる」⇒「消費が増える」⇒「物価が上がる」⇒「企業が儲かる」
の順番でインフレに向わせるべきだという考えの人も、実はたくさんいました。
「金融政策」より先に「成長戦略」をすべきだという意見は政府の中にもあったし、今回の海外の批判もそこに集中しています。成長戦略とは、将来性のある産業を政府が支援して雇用を創出し、競争力のある産業社会を作ることです。
そのためには、既存の生産性の低い企業などを補助金で延命させる方向に重点が置かれている今の政策を変えないと行けません。しかし、利権も絡んで戦後70年の間に出来上がってしまった政治と官僚と企業の構造的な問題がそれを阻んでいます。「構造改革」なしには、日本の財政再建も景気回復も難しい状況です。
アベノミクスのブレーンの方向転換
国会の野党はもちろん、政府の中にも成長戦略優先の声もあったのに、アベノミクスにそれが反映されなかった原因のひとつは、安倍政権の物事の進め方手法にある、という見方もあります。いわゆる「お友達人事」といわれる、安倍さんと意見が合う人だけを政策決定に影響するあらゆる部門に配置するやり方です。
アベノミクスのブレーンに選ばれたお友達は、浜田宏一内閣参与と岩田規久男日銀副総裁です。彼ら二人がリフレ派経済論を総理に進言していました。
リフレ派の理論的基礎を作った経済学者クルーグマンさんは、1998年に「流動性の罠」という論文を出して以来、日本のデフレを放置する経済政策をモーレツに批判していました。クルーグマン氏は、それらの経済論が評価され2008年にはノーベル賞まで受賞します。二人のブレーンはこの論を全面的に肯定してアベノミクスに反映させていました。
そのクルーグマン氏が、2015年10月、インフレ誘導金融政策を強く主張していた持論を撤回する文章を発表しました。アベノミクスの失敗を受けてのことです。しかし、日本のメディアは一切それを伝えていません。
気付くと、浜田氏も岩田氏も、最近はしれっと「成長戦略」について言及していたりします。もはや理論的にアベノミクスを支えるものも無くなってしまったようです。
この先どうなるかは、この先国民は何を選ぶのか、次第?
実績も理論も崩壊したアベノミクスですが、安倍政権は相変わらず外交する度にばらまきを約束し、帰って来ればいきなり
なんて指示をひょうひょうと表明しています。
そして、そんな華々しい発言をする総理を見て、国民の支持率は上がっています。2016年の参議院選挙まで、こんなことがくり返されるのでしょうか。
経済を理解するのはとっても難しいですが、日本人が何を支持しているのか理解するのも、最近は難しい気がすることもあります。本当は私たち国民も、真実となんて向き合いたくないのでしょうか・・・。
最低賃金が1000円になったとして、みんなちゃんとお金つかうのかな?お金を使う先もポイントだと思う。なんにせよ、まずは「構造改革」からだと思うんだ。