毎年5月になると京都では「葵(あおい)祭」が行われます。5月に入った頃から、祭の主催者である京都の上賀(かみがも)茂神社と下鴨(しもがも)神社では様々な祭事が行われます。
平安装束に身を包んだ射手(いて)が、馬に乗って的を射抜くも「流鏑馬神事(やぶさめしんじ)」など、ゴールデンウィーク中のニュース番組のエンディングで流れたりしますよね。
ですが、本命はやはり、「5月15日に行われる行列」でしょう。これは路頭の儀といって、平安時代の装束に身を包んだ行列が京都市内を列をつくって歩きます。
葵祭のヒロイン、斎王代
この華やかな行列の中で、ひときわ目を引くのは、「斎王代(さいおうだい)」です。
斎王とは、伊勢神宮や鴨神社の祭祀に奉仕した未婚の内親王または女王のこと。(三省堂 大辞林)
葵祭で実際に藤の花で飾られてた輿(こし)に乗るのは皇族ではなく、一般の女性です。ですので、代理である「代」の文字がつきます。
斎王代の歴史
この斎王代が行列の主役となったのは、今から「60年ほど前」の話になります。そう古い話ではありませんね。
太平洋戦争中、葵祭が中断されていましたが、1953年に復活しました。斎王代も、はじまりは平安初期でしたが、戦乱などで長らく途絶えていました。
1953年の葵祭の復活を機に、その3年後の1956年に行列に女人列が加わりました。その花形とも言えるのが斎王代です。斎王代を先頭とした華やかな女人列は、葵祭の行列を、より一層華やかにしてくれます。
斎王代は誰がなるの?
斎王代は、いわゆるオーディションや、一般からの公募で選ばれることはありません。
なぜなら、行列にかかる数千万円と言われる費用を、自分で負担しなければならないからです!
しかも、資産さえあれば誰でもなれるというわけではありません。第一に、「京都在住」でなければなりません。
第二に、「歴史と格式のある家のお嬢さま」でないと、なる事はできません。
そこで、莫大(ばくだい)な資産のある、京都ゆかりの寺社や文化人、実業家などの20代の未婚の令嬢が選ばれています。本当のセレブ、しかも京都在住でないと、斎王代は務まらないのですね。
そういう理由があって、京都の良家の年ごろの娘さんの間では、斎王代を務めるのは憧れだそうです。
京都新聞の葵祭のページでは歴代の斎王代を見ることができます。
有名な京菓子店、漆器店、懐石料理店など、何百年も続く老舗のお嬢さんから、誰もが知っている有名な寺社のお嬢さん、さらには京都の有名な電子機器会社のご令嬢と、生粋のお嬢さまばかりです。日本舞踊、お茶、お花をたしなむなど、古き好き日本のご令嬢という印象ですよね。
このことから、母と娘二代で斎王代であったと言う例がたくさんあります。また、姉妹で斎王代を務めたり、中には祖母、母、娘と3代続けて斎王代を出した家もあるそうです。
また、基本的に京都在住の女性が選ばれますが、2002年には「東京在住の女性」が選ばれました。これは、京都府在住でない初の斎王代ですが、彼女は京都市の出身なので斎王代になれたそうです。
数千万円の費用、その内訳は?
- 衣装代
- そのクリーニング代
- 神社の奉納料
- 関係者やお世話をしてくれた人への心付け
斎王代は十二単を自分で用意しなくてはならないのです。
斎王代は何をするの?
行列に華を添えるだけでなく、「前儀」と呼ばれる葵祭の前の儀式から参加します。毎年5月4日の「斎王代禊(みそぎ)の儀」では、斎王代と女人たちが御手洗池(みたらしいけ)に手を浸して清め、葵祭の無事を祈ります。
葵祭ってめちゃめちゃお金かかってるってことだよね。こりゃ参加しないともったいないかも!