生活の豆知識

感動すると鳥肌が立つ・立たないは体質の違い。誤用論の行方は?

Written by すずき大和

めちゃめちゃ感動した時、

「鳥肌もんだったぁ~!」

なんていう人は、最近珍しくありません。

しかし、元来「鳥肌が立つ」の用法は、

  • 物凄く寒い
  • 気味が悪い
  • ぞっとする

など、“あまりよくない気分を伝えるときの表現”ということになっています。

なので、アナウンサーの発言や、新聞記事の文章などで、「感動した」の意味で使うと、たちまちいろんなところから叩かれます。

一方で、「陶酔感を感じた時に鳥肌が立つのは本当だ!」という声もあります。

最近、そんな感動と鳥肌の関係について、脳の働きを調べた測定結果が、イギリス・オックスフォード大学のプレスに掲載されました。



スポンサーリンク

感動的な音楽を聞いて鳥肌が立つ人・立たない人の違いは脳

カリフォルニア大学大学院生の研究

素晴らしい音楽を聴くと、

「思わずぶるっとなって鳥肌が立つ人」と、

「物凄く感動しているのにそうならない人」

がいます。

ぶるっとなる人の割合は、全体の3分の2から半分、というのが世界の平均のようです。

  • 「どうしてそうなるのか」
  • 「脳やからだの反応はどう違うのか」

に興味を持った、カリフォルニア大大学院生のマシュー・サックス氏は、音楽好きの被験者を集め、脳のしくみを測定する実験を行いました。

200人の被験者に心揺さぶられる系の音楽を聴かせて、

“ぶるっとくる人”“そうじゃない人”

のグループに分け、脳の中がどうなっているかスキャンしました。

すると、ぶるっとくる人たちは、そうじゃない人に比べ、

“脳の聴覚をつかさどる部分と、感情をつかさどる部分をつなぐ神経線維が多い”

ということがわかりました。

マギル大学の神経科学者の研究

ガーディアン紙によると、これに対して、カナダ・マギル大学の神経科学者ロバート・ザットレー氏が、自分の研究している結果と一致する、という意見を寄せています。

ザットレー氏の研究では、

“人間は音楽を聴くと、脳の「聴覚系」と「感情系」と「報酬系」が結びつく”

ことが明らかになっています。「報酬系」というのは、欲求が満たされたときに活性化して快感を覚える働きをする部分です。

感動と鳥肌の関係は?

2つの研究は、感動すると鳥肌が立つメカニズムを解き明かすものではありませんが、

“音楽を聴いて感動するのは「聴覚系」「感情系」「報酬系」がつながっているから”

“そのつながる部分が太い人は鳥肌が立つ傾向がある”

ということがわかります。

つまり、音楽を聴いて感じる感動で、鳥肌が立つ・立たないの違いは、

“脳内の神経のつながりが太いか細いかの違いに起因する”

ということのようです。

美しい芸術品に触れたり、映画を観たり、本を読んだり、人の話を聞いたり・・・して感動し、鳥肌がたつ場合も、脳の感情系・報酬系と感覚野のつながりの強さの違いが鳥肌反応の違いになるのか、のデータはありません。

いずれにせよ、物理的・生理学的な違いで、鳥肌が立つ人と立たない人が分かれる、と思っていいのでしょう。

言葉の誤用が黙認され、認知されていく過渡期の段階

感動して鳥肌が立つのは、誤用なのか?

半数弱の人間は、感動して鳥肌が立つようにできているということが分かっていて、その違いは脳のつくりにあるらしいことまで分かってくると、ますます「感動した」という意味の「鳥肌」を誤用と切り捨てていいものか迷います。

実際、web辞書の中には、本来の意味を解説したあと、

「最近は、『感動した』の意味でも使われる」

という添え書きがつくものも見受けられるようになりました。

一方、就職試験の面接で、

「最近感動したことは何ですか?」

と聞かれて

「○○○という作品を見た時、思わず感動して鳥肌が立ちました」

と答えて笑われ、不合格だった、という就活生の体験談を最近読みました。

まあ、俗語的には認知されてきているけれど、公式なお堅い所ではまだ使わないほうがいい、という段階なのだといえそうです。

従来の意味を大切にしたい人の気持ちも尊重しよう

言葉は時代や地域や文化によって、どんどん変化していくものです。

同じ日本語が、100年前、1000年前は、全然違う意味で使われていたり、いい方が変化していたり・・・という例はいくらでもあります。

ただ、変化の過程の過渡期には、たぶんいつの時代も「日本語の乱れ」を指摘されたり、感覚の倒錯を憂う人がいたりしたことが予想されます。「鳥肌が立つ」の用法も、今はちょうどこの過渡期の微妙な所なのでしょう。

それでも、正しい用法と正しい日本語の大切さを教え込まれて育ってきた人たちも、世の中にはたくさんいるので、その人たちにとっては理屈ではなく、新しい用法は感覚的に気持ちよくないものなのです。そういう気持ちに配慮してあげることも、人間関係を築く上では大切な思いやりです。

今は、双方があまり目くじらを立てすぎず、変ないい方ですが、臨機応変して譲り合いながら、うまく共存していくようにすることが大事なのかもしれません。

まさケロンのひとこと

急に「言葉の意味が変わりました」なんていわれてもそりゃあついていけない人がほとんどだよね。まさケロンは癖になると困るからこういう微妙なのは使わない派かな~。

masakeron-surprised


スポンサーリンク

あなたにオススメの記事&広告

筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。