ハロウィン

ハロウィンといえばライナスとかぼちゃ大王!って、知らない?

Written by すずき大和

世の中ハロウィンですね。

今の子どもたちにとっては、節分やひな祭りやクリスマスと同じように、ハロウィンも年中行事のひとつだと思っているのでしょう。

今の幼稚園児の親たちが幼稚園生だったころは、おそらくハロウィンはここまでポピュラーなイベントではなかったと思いますが・・・・いつから日本はこんなにハロウィン大好き国になったのでしょうか。



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ハロウィンは、聞いたことあるけど本当はよく知らないもの

今のハロウィンはアメリカ独自文化の輸入

ハロウィンはアメリカで盛んな風習です。

キリスト教の行事と思っている人もいるようですが、由来はアイルランド地方の古代土着信仰が元になったお祭です。

ローマ時代にカトリックの祭日と習合されました。

カトリックでは祭日の主旨のほうが重視されるので、現在でもハロウィンは、あくまで前夜祭の扱いです。カトリックではない宗派の地域ではほとんど広まっていません。

アメリカへは、イギリス北部からの移民と共に伝わり、その後宗教と離れて独自に発展し、それがカナダや日本に伝わっています。

初めて出会うハロウィンはTVや漫画の話

戦後の日本では、ほとんどアメリカを教科書のようにして一気に西欧文化が取り込まれていきました。

映画や物語やアメリカンコミックスなどの大衆文化も大量に入ってきました。

今でこそ、アニメやゲームなどのカルチャーは日本が最先端のノリですが、TVが家庭に普及し始めたばかりの昭和40年代、子どもたちの見るアニメやドラマの半分くらいはアメリカの番組の吹き替えでした。

当時、ハロウィンの習慣は日本ではほとんど行われることはありませんでした。

が、アメリカの家庭が舞台の作品の中でハロウィンの描写は度々登場したので、アメリカドラマやアニメが大好きだった子どもたちは「ハロウィン」という祭の存在は、意味はよくわからないなりに、なんとなくインプットされていました。

40年以上前からハロウィンをアピールし続けた少年

ハロウィンを熱く支持するライナスのエピソード

現在50代の人たちにとって、幼少期のそんな“なんとなく”からもう一歩理解を進めてくれたのが、10代の頃に出会った「ピーナッツ」という漫画(アニメ)シリーズに登場する少年“ライナス”のエピソードでした。

“チャーリー・ブラウン”というちょっとドン臭くて冴えないけれど、憎めない実直な少年が主人公の漫画です。

“スヌーピーの漫画”というほうがわかりやすいでしょうか。

ライナスは、チャーリー・ブラウンの親友、小学生になっても“安心毛布”が手放せない、あの少年です。

1967年、谷川俊太郎さんの訳の日本語版単行本が発売され、ほぼ同時にキャラクター商品が入ってきて人気を博したスヌーピーのストーリーは、1972年に吹き替えアニメが放映されるようになります。

単行本でもアニメでも、ライナスのハロウィンのエピソードは、定番として描かれ、多くの子たちにとって

「ハロウィンは、かぼちゃ大王がかぼちゃ畑から飛び立って、子どもたちにプレゼントを配る日!」

ということがわかったのです!

かぼちゃ大王はライナスの説くハロウィンの真実

そうです。ライナスは登場人物の中では知性派の役どころですが、なぜかハロウィンとクリスマスがごっちゃになっているようで、「カボチャ大王」という存在を信じていました。

「かぼちゃ大王が飛び立つのは、どこのかぼちゃ畑でもいいという訳じゃない・・・世界で最も誠実な畑でないといけないんだ」

と力説するライナスは、毎年自分が「ここだ!」と信じたかぼちゃ畑に(時には何日も)座り込み、かぼちゃ大王の出現を待ち続けるのです。

本国では新聞連載の4コマ漫画ですが、毎年毎年ハロウィンの時期になると、このライナスのエピソードが掲載されました。

彼は毎年毎年、ハロウィンの意味の重要さ、かぼちゃ大王の偉大さを唱え続けました。

が、周りの友だちのほとんどは相手にしてくれません。それでもめげずに、かぼちゃ畑に座り込み続けるのでした。

「ピーナッツ」は哲学的でシュールな傑作コメディ

かぼちゃ大王はサンタのパロディ

「ピーナッツ」は、新聞の連載漫画ですから、決して子ども向け作品ではありません。

小学生の日常を描いたギャグ作品ですが、時に哲学的に、時にシュールに人生を語る登場人物たちのセリフが秀逸で、アメリカでも日本でもじわじわと支持を深めていました。

「かぼちゃ大王」についても、サンタクロースのパロディとして描くことで、当時アメリカで雨後の筍のように出てきた各種新興宗教を揶揄していたと見る人もいます。

最初に出会ったハロウィンがかぼちゃ大王だった日本人

しかし、本当のハロウィンをよく知らないままライナスの言葉を聞いた多くの子どもは、かぼちゃ大王の言い伝えは本当にあるものだと思いました。

みんながライナスをバカにするのは、小学生にもなって、サンタが本当にいると信じているように、かぼちゃ大王も信じていることにあきれているのかと思ったわけです。

その後、日本でもハロウィンが一般化し、あれはパロディであり、かぼちゃ大王は本当にライナスの思い込みなんだと知った時、なんだかちょっと拍子抜けしたような気がしたかつての子どもは少なくなかったでしょう。

誰にも関心をもたれなかったハロウィン

なかなか火がつかなかった80年代以前

ハロウィンなんて全然知らない人が多かった40年前、ライナス大好きなスヌーピーとピーナッツワールドのファンたちは、ライナスの唱えるハロウィンについて、友だちや家族にさりげなく語りました。

「今日はハロウィンなんだって・・・・」

一生懸命説明しても、返される反応はたいてい

「ふう~ん」

で終わりました。

キディランドという原宿の玩具屋さんが、70年代に日本で初めてハロウィン商品のキャンペーンを行い、同じく80年代に日本初のハロウィン・パレードを開催しました。

メディアでは取り上げられましたが、一般には広まりませんでした。1984年に開業した東京ディズニーランドですら、ハロウィンイベントを開始するのは10年以上先の話です。

低迷する景気が新たなお祭を求めた?

90年代末になり、急に商業ベースでハロウィンがもてはやされるようになりました。

ディズニーランドも1997年より秋の定番イベントとしてハロウィンが組み込まれます。

同年から、川崎では町おこしイベントとして「カワサキ・ハロウィン・パレード」が開催されました。幼稚園や保育園でもハロウィンが行事に入るようになりました。

はっきりとしたきっかけはわかりませんが、90年代前半にバブル経済が崩壊し、日本は失われた20年に向かっていく時でした。

急激に落ち込む消費を立て直すため、そして人々の気持ちを明るくするために、ハードの出費は少なく便乗商法も組みやすい記念日イベント企画として、ハロウィンが丁度良かったのかもしれません。

売り込みが成功して、ハロウィンはあっという間に世に広まりました。

70年代にあれだけ振っても振り向いてくれなかった人たちの子ども世代が、今「トリック・オア・トリート」とスラっと言ってのけるのを見ると、当時のライナスファンはちょっと複雑な胸の内になるようです。

この子たちも、この子の親たちも、ライナスとかぼちゃ大王のことは知らない人が多いでしょう。

日本の子どもたちに初めてハロウィンの福音をもたらしてくれたライナスとかぼちゃ大王を抜きにして、今のハロウィンブームは盛り上がっていると思うと・・・・心中お察しします!?

「トリック・オア・トリート!」って何さ!

谷川俊太郎さんの訳「いたずらかおごりか!」でインプットされた世代の人にとって、今のハロウィンは特別な哀愁を感じる季節、かもしれません。

まさケロンのひとこと

「かぼちゃ大王」も「サンタクロース」もいるんだよ。まさケロンと週1で電話する仲だからね。

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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。