まもなく師走、陽気も随分と冬らしくなってきました。
これから増えて来る宴席にも、家族揃っての団らんにも、お鍋が美味しい季節となります。
日本海では冬の味覚の王様と言われているズワイガニを、たっぷりいただくカニ鍋なんかいいですねぇ。
旬とはいえ、決して安価なものではありませんから、その魅力を無駄にすることなく、最大限味わえるよう、カニ鍋をより美味しくいただくコツについてご紹介します。
美味しいカニの選び方
子持ちのズワイガニは残念ながらいません
ズワイガニの雌は卵をお腹にくっつけて1年以上育て、孵化すると子どもを海中に放出します。
雌には、最初の交尾の時に得た精子を体内に貯めておく機能があり、孵化直後にすぐその精子を使って再び受精し、産卵します。
精子をずっと小出しに使いながら、メスは何度も産卵を繰り返し、生涯のほとんどの時間、卵を抱いて過ごします。
が、あまり子持ちのズワイガニは見たことがありません。
それは、私たちが普段ズワイガニと思って鍋に入れているものは、みな
雄(オス)の個体
だからです。
雄雌共に、交尾できるようになるともう脱皮せず、それ以上体が大きくなりません。
雌は10回脱皮して甲羅幅7㎝くらいで大人になります。雄は10回ではまだ大人にならず、その後も脱皮を続けるものが多く、雄と雌では、最終的には倍くらい大きさが違ってしまいます。
そのため、同じズワイガニですが、雌は別の名前のカニとして流通しています。
- 親ガニ
- コウバコガニ
- セコガニ
- セイコ
など、地方によって呼び名は違いますが、カニ汁などによく使われており、卵はもちろん、卵巣も味噌と一緒に食べられています。
脱皮したては身が少なく水っぽい
ズワイガニは海底200~600mくらいの深海に居るので、生態は完全には解明されておらず、寿命もはっきりとはわかっていません。
子どもの頃は一年に複数回脱皮するので、脱皮の回数=年齢とは単純にいきませんが、10回脱皮するのにだいたい7~8年かかると考えられています。
雄が漁獲可能な大きさ(甲羅の幅9㎝以上)を超えるまでには、もう1、2年かかり、13回脱皮したものは、ほとんど幅13㎝以上になります。
体がドンドン大きくなり、殻がきつくなると脱皮するため、脱皮したては、殻はまだ軟らかく縮んだ状態から伸びたばかりで、ちょっとゆとりを持った大き目サイズになっています。
ということは、脱皮してすぐは身の詰まりが悪く、食べるとやや水っぽい食感となります。
この殻の軟らかいものは「水ガニ」と呼ばれ、ちょっと安く市場に出まわるので、ズワイガニの風味を手ごろに味わうにはいいかもしれません。
脱皮後1年くらいたったものが美味しい
カニ漁の時期は晩秋から早春です。脱皮の時期はだいたい春と言われますが、早春のころから夏の初めごろまで、個体によって違っています。
脱皮から時間がたつほどに身も詰まり、カニ味噌も増しますから、できれば次の脱皮の直前くらいのところを食べられると最高です。
見た目の大きさだけでなく、
甲羅が固く、持った時の重さがずっしりしているもの
を選びましょう。
表面に黒いプツプツが付いていると身が詰まっている
ということもよく言われます。
これは、カニビルという深海の生物の卵です。脱皮から漁獲解禁になるまでには半年くらいあり、カニビルの産卵サイクルは短いため、漁獲される直前に産み付けられた卵である場合もあるので、一概に卵がついていれば、脱皮から時間がたっているとは限りません。
が、沢山ついているようなら、やはり脱皮後それだけ長く時が経過していると言えます。
ブランド商標が付いているものは高級品
冬の味覚として人気の高いカニなので、水揚げされる地域ごとに、品質のいいズワイガニの雄に名前をつけてブランド化しているところも多いです。
- 鳥取の松葉ガニ
- 福井の越前ガニ
などが有名です。
ブランドガニには、品質の良さを明記したタグなどが付けられているので、それらを確認して買うのもいいでしょう。
カニの風味を引き立てるだしで、プリプリの旨味を楽しもう
カニ鍋を美味しくするポイントは昆布だし
カニちりでもカニすきでも、カニの風味を引き立たせるには、
昆布だし
を使いましょう。
カニ自体の柔らかな旨味とコクを活かすには、あまり癖のないだしのほうが合います。
また、昆布の旨味(グルタミン酸)が、魚介の旨味(イノシン酸)と相乗効果で美味しくなります。
昆布は、しっかりと旨味を出すために、水から漬けて、できれば十分に戻してから火を入れるほうが、旨味成分を無駄なく抽出できます。
すぐ火にかける時も、できるたけ小さな火で、じっくりと時間をかけましょう。
グツグツと沸騰させると、だしに濁りやえぐみが出てしまうので、沸騰寸前に昆布をあげることを忘れないでください。
煮ていく順番は大事です
かにすきの場合は、野菜を入れる前に、細い足先や胴体など、
食べずらい部分を先に煮ます。
ズワイガニはカニ味噌も豊富で美味しいので、この段階で汁によく溶いておきます。
殻から出るだしの旨味を十分にスープに馴染ませてから野菜をいれていきます。カニの身は火を通し過ぎると固くなりますから、プリプリの食感を楽しむためには、白菜の白い部分や人参など、硬めの野菜が煮えてから足を入れましょう。
冷凍のカニは半解凍で鍋にいれること
冷凍のカニを使う場合は、常温で完全に解凍してしまうと、水と一緒に旨味が流れ出てしまいます。
- 生カニを冷凍したものなら半解凍
- ボイル後冷凍は8割解凍で入れる
のが望ましいです。
生カニの解凍は、ビニール袋などに入れたまま水に付けておくと、水温によりますが、10~15分くらいで半解凍になります。
ズワイガニ以外のカニを使う場合
関東では、ズワイガニよりもタラバガニの方が人気の高い傾向があります。
大きくて足の太いタラバガニは、身の弾力も強く、食べ応えがあるので、豪快にカニを食べたい時はオススメです。
ただし、旨味はズワイガニよりやや劣り、味も抜けやすいため、煮込みすぎると、食感がちょっと残念なことになりやすいです。
毛ガニは、カニ味噌の量はたっぷりですが、足の身はあまりないので、鍋にするにはちょっと貧弱に感じるかもしれません。
カニ子や味噌も楽しみたいなら、あえて雌のカニを使うのも珍しいかもしれません。ただ、小さいので、身を食べるのは雄よりちょっと苦労します。
資源保全のため、ズワイガニの漁期は限られており、カニのシーズンは牡蠣や鯛に比べると短いものです。年末年始、需要が高まると値も上がりますから、今のうち、ぜひたくさん楽しんでください。
旨味がたっぷり溶けだした煮汁も、雑炊などにして、ぜひ最後まで無駄なくご堪能くださいませ。
かに鍋をおいしく食べるには
- だしは「昆布だし」
- 煮る順番は「食べづらい順」
- 半解凍から8割解凍で鍋に入れる
これをまもること!