最近、中高生の間で
「ツイキャス」
というサイトがとても人気があります。
パソコンやスマートフォンで動画を撮影しながら、リアルタイムで不特定多数に向けて配信できる無料動画サービスです。
配信するだけでなく、リアルタイムで視聴者からコメントが書きこまれ、配信しながらそのコメントに応えていくこともできます。
複数人数で同時に同じ画面で配信できる「コラボ」という機能を使うと、他のユーザーとテレビ電話のように会話することもできます。
従来のリアルタイム動画配信サービスに比べると、パソコンのことをあまり知らなくても、撮影用にビデオカメラなど使わなくても、スマホやカメラ内蔵のパソコンさえあれば、誰でも簡単気軽にすぐ配信することができます。
そのお手軽さが若い世代に絶大に支持され、配信者のほとんどが学生や20代の若者たちになっています。
初心者や若年層の利用者が多いために起きている問題
ネットリテラシーの低さから人生を狂わせる若者たち
一時、Twitter[ツイッター]での迷惑行為の無自覚な投稿がだいぶ話題になりました。
「バカッター」などと揶揄(やゆ)されるほど、一般常識で考えると、ひんしゅくを買うような行為をウケ狙いや度胸自慢のように世界中に配信し、世間の非難を浴びる結果を招いてしまった若者が続出しました。
彼らの多くは、バイト先をクビになったり学校を退学させられたり、損害賠償を請求されるなどの事態に発展したあげく、ネット民によって名前から住所から学校から・・・調べ上げられてさらされてしまう、という「人生狂わされる」しっぺ返しを喰うことになりました。
自らを危険にさらす内容を平気で配信してしまう未成年
ツイキャスの中でも、中高生が自分で自分の首を絞めてしまうような内容を配信する例が多発しました。
Twitterでは、売り物を玩具にする画像などを配信して店の信用を失墜させ、損害賠償請求される、など、他者に迷惑をかける“バカ行為”が多かったです。
一方、ツイキャスの未成年は、個人情報管理意識がないためストーカーする人間を容易に呼び込んでしまったり、喫煙・飲酒・著作権侵害などの違法行為を配信してしまうなど、自分を傷つける結果を招く内容が目立ちます。
生放送の恥はかき捨てにはならず、ずっとつきまとう
Twitterの時と同じように、ツイキャスのそういうバカ行為を見つけては、
「バカガキ配信中」
などと言って、情報拡散することを専門にしている掲示板などが立てられている事実もあります。
バカの度合いがひどいと、名前や学校名など調べ上げてさらす人も出てきます。
配信内容を自動録画できるツールも出てきています。
配信している本人としては、匿名でその場限りだと思って、ついやってしまった醜態が、実生活の周囲の人にも広く知られることになって、学校を退学させられる例も出ています。
その事実でさえ、ツイキャス画像のコピー付きでさらす記事がすぐ拡散されます。
家族ともども周囲の白い眼に耐えることになったり、ストーカー行為に合うハメになった子も、多数出ているのではないかと危惧されます。
女子中高生の生活を覗き見できる生放送
インターネットに動画を配信する人たちの一般例
バンドをやっていたり、ピアノが弾けたりする子が、自らのアートを広くみんなに見てもらおうとして、ツイキャス配信する場合もあります。
学校の文化祭などの情報を配信して宣伝する「プチ番組」を作っている子もいます。
話術に長けた子がDJのように、いろいろな身近なネタをトークする番組を定期配信しているものもあります。
料理したり、メイクしたり、ヘアコーディネイトの様子を中継して、視聴者の感想を聞く、という双方向コミュニケーションを楽しんでいる例もあります。
こういう使い方は、ツイキャス以前からある動画配信サービスの利用例としてもポピュラーなものでした。中高生に限らず、大人の男女もこういう動画を動画投稿サイトや生中継サービスで配信する人は多いです。
世界中の人に見られてもいい、という自覚がない子どもたち
これらの使い方と、ツイキャスで問題視されるユーザーの流している内容には、明らかな違いがあります。
それは、インターネットで配信されることの意味を本当に自覚しているかいないか、という違いです。
ツイキャスで生中継している未成年の多くは、これらの動画に映っている人とちょっと異なる態度で話しています。
人間、「カメラの向こうの人に何かを伝えるために、しゃべったり何かをしたりするのだ」という自覚があると、自然に人に伝わりやすい話し方をしようとするものです。
ましてや不特定多数の人が聞くものであれば、特定の人を誹謗中傷する表現はしないなどの配慮もするし、それなりに緊張感ある態度で、はっきりとした音量と言葉で話そうとするのが普通です。
が、ツイキャスの中の子の多くは、まるでプライベートな場で友だちとしゃべっているだけのような感じで、リラックスというか、無防備な格好や態度で話しています。
クチャクチャ音をたててモノを食べたり、頭を掻いたりしながらかったるそうに話している子も多いです。
夜間などは、下を向いてボソボソと(他の部屋にいる家族に気付かれないように)小さい声で話しています。
入浴中にも音声だけの配信をするなど、何時間にも渡り、生活するさまを赤裸々に実況中継し続けている子もいます。
「不特定多数の大勢に見られる」という自覚があれば、普通は“何年も後に録画したものを周囲の人に見られたら困る”ものは流しません。
ツイキャスで配信されている中高生の生中継の内容の中には、「これ、将来就活する時に“この人は過去にこんなものをネット配信してました”といって拡散されたら困りませんか?」と聞きたくなるようなものがたくさんあります。
本人たちは、
だから大丈夫!
という感覚で、もしかしたら家族にも知られずに済む世界であると思っているのかもしれません。
余所行きではない、日常丸出しの、何というか生活感に満ちた動画を、個人情報が漏えいしない対処も全くしないまま、多くの子は顔まで出しながら配信しています。
無防備に素をさらけ出している若い女性を見に来る人とは
配信しているのは圧倒的に学生ですが、見ているのは・・・
ツイキャスのサイトにアクセスする人は、自ら配信する目的の人だけでなく、配信されたものを見て、気に入った人にコメントを書くことなどが目的の人もたくさんいます。
配信する方は(特に中高生は)女性が多く、反対に見ている人の中には、大人の男性が相当数いると見込まれます。
女子中高生が部屋などで暇つぶしにしゃべっている感じで配信をしている様子を見ると、コメントやコラボで絡んでくるのは、同じように暇を持て余して話し相手を探している男女の中高生も確かにいますが、必ずといっていいほど大人の男性から声をかけられています。
声をかけずに黙って視聴している男性もたぶん相当たくさんいるでしょう。
ツイキャスの配信は常に悪意を持った人に監視されています
話しかけている内容を見る限り、彼らのほとんどは、女子中高生に対する興味本位で寄ってきています。
同世代の男の子や自分も配信してコラボしてくる男性は、同じように話し相手を探して暇つぶししている感じも多いのですが、大人の男性は、本気で友だちを探しているとか、若い女の子たちを助けてあげたいというボランティア精神で参加しているようには見えません。
“無防備に顔を出してTwitterアカウントを掲げながら、話しかけてくれる人を待っている若い女性”がたくさんいるとわかれば、興味本位の男性が寄ってくるのは当然かもしれません。
まして話しかけさえしなければ、見ていることを知られないとなれば、どれだけいやらしい興味で見物している男性がいるかわかりません。
また、先に書いたように、平日に明らかに学校をサボってツイキャスしているとわかる子や、無防備に居場所や個人情報が調べられる状態にしている子を見つけると、途端に
「そういう子が今配信中だよ」
ということを掲示版に書きこむ人もいて、その掲示板を見て、悪意を持った人も配信を見に来る、というシステムも影でできあがってしまっています。
もし、障害者を侮蔑するような言葉を平気で吐いたり、誰だかわからない男性の言葉に丸め込まれて、プライベートの性体験を語ったり、服を脱いで体を見せるようなことまでしてしまうと、途端に個人情報付きでさらされる可能性も高いのです。
今一度、何に気を付けなければいけないのか考えよう
ツイキャスの対応と問題の潜在化
ツイキャスのシステムが立ち上がった直後は、無防備な未成年に寄って来ては言葉巧みに欲求を満たす対象として利用しようとする男性にひきずられ、局部を露出したりする男女の未成年が続出しました。
SNSのアカウントを巧みに聞きだされて、直接連絡を取るようになり、トラブルに巻き込まれていった子もいました。
男性の言葉にはのらずに適当にあしらえる子もいますが、相手が思うようにコントロールできないとわかると、途端に威圧的な態度で恫喝したり、自分の性器の画像を流す男性も見られました。
ツイキャスで簡単にプライベートな姿を流してしまうような子は、ネットなどで始終人と繋がっていないと不安になってしまうタイプが多いので、不愉快に絡んでくる男性がいても、なかなか自分からは回線を遮断しようとしません。ズルズル断れずにいるうちに、過激な露出に導かれてしまう例も多くありました。
さすがに問題を通報する人も多く、ツイキャスの会社としてもマズいと思ったのか、トップページに未成年と保護者に向けた、簡単なネットリテラシーを説く文章へのリンクを張りだしました。
また通報への対処もだいぶ早くなり、喫煙・飲酒・性行為・裸・著作権侵害、ほか違法行為があれば、即アカウント停止の措置を取るようになってきました。
おかげで、最近では公開されている配信の中で女の子の服を脱がせようとする類の会話はあまり見られなくなりました。
が、特定の人だけしか見られない方式で配信するよう誘ったり、SNSなどで直接連絡を取ろうと働きかける男性が増え、トラブルが見えない所に移っただけ、という感もあります。
また、次々やってくる初心者たちが、ちゃんと未成年者への注意を読んでいるとは限らず、イタチごっこのように不適切な配信は絶えません。
何がいけないことなのか、ちゃんと理解して適切に使おう
興味本位の人に目を付けられて、配信を録画される可能性があるということは、今配信している内容が、この先どこに残ってどこで持ち出されるのか自分ではどうすることもできないということです。
そういうところに配信してもいい内容はどんなことなのか、きちんとリテラシー教育を行う必要がありそうです。
Twitterアカウントを使って配信するため、日頃ツイートしている内容をつなぎ合わせていくと、個人特定できる場合が実にたくさんあります。
そういう部分も含めて、どんなことを容易にネットに流してはいけないのか、子どもたちに教えられる大人、特に親のリテラシー教育も大事かもしれません。
流してもいい内容といけない内容にちゃんと配慮して使えば、便利でいろいろな可能性を広げてくれるツールです。
芸能人や政治家なども積極的にファンや支持者とのコミュニケーションに使っている例が見られます。ネットに飲み込まれず、使いこなせる大人に成長してほしいと思います。
今、大人が考えなければいけないこと
親自ら子どもの写真を位置情報も消さずにFacebookにあげまくっているようだと、子どものリテラシーが育たないのも無理ないことです。
また、最近ホステスのアルバイトをしてアナウンサーの内定を取り消された女子大生のことが話題になっていましたが、日本は、男性の好奇の目にさらされる場で酒の相手をするだけで、女は「傷モノ」といわれる国らしいです。
一方で、女性を好奇の目で見る行為をする男性は何も傷つかない、という社会規範そのものが、男性の不適切を助長している、という面もあるんですけれどね。
ツイキャスへの配信がきっかけでトラブルに巻き込まれている男女の中高生は、相当数いるはずですが、自業自得として判断力が未熟な未成年を斬り捨てるだけでは、問題はますます潜在化していくだけであることに、多くの大人は目を向ける時です。親や教育関係者もちろん、マスコミや知識人らの本腰を入れた取り組みが待たれます。
リテラシー教育が昔はそれほど重要じゃなかったかもしれない。でも今は一番大事なことかもしれないね。