一年の始まりというのは、何かと縁起を担ぎたくなるものです。
21世紀といえども、科学的根拠より、超常現象的の神秘性の方に畏怖の念を抱いてしまうのが人間かもしれません。
お正月は特に「神様事」のこだわりが多いので、縁起担ぎや迷信ごとも、日本的、東洋的な習慣や文化に根差したものが沢山ささやかれます。
漢字文化圏独特の風習「干支」にまつわる占いや言い伝えが、いろいろ引っ張り出されて話題にされることも多いです。
2015年は未年[ひつじどし]。
未年生まれの人の性格や運勢や俗説を見ていくと、日本と中国で正反対の評価がされている部分があって、なかなか面白いです。
未年生まれの性格判断
日本では、未年生まれの人は羊みたいな性格と言われています
干支は十干十二支がセットで循環しているので、正確には60年で一周し、未年も5種類のパターンがあります。
が、今回は十二支のほうだけクローズアップし、総じて「未年」について言われていることを取り上げます。
いろいろな性格判断占いを見ても、神社仏閣のサイトの解説などを見ても、「未年生まれ」の人については、
“羊の特徴に関連した性格”である、
と説かれています。
大古から家畜として人の生活を支えてきた羊は、人間の生活の一部でもあり、群れを成して行動する習性があります。
そこから、「穏やかで慎重で平和を愛するおとなしい性格」が基盤にあるとの分析が書かれています。
中国では、未年生まれの女は意気盛ん
一方、十二支が生れた中国には、
「未年生まれの女は門にも立たすな」
ということわざがあります。
これは、ストレートに言えば、
という意味です。
丁度、日本でいう「丙午[ひのえうま]生まれの女」と同じような迷信(八百屋お七が丙午生まれ、また丙午の年に火事が多かったことから発したもの)が、ちょっと調べただけで沢山出てきました。
- 「未年の女は男を七人半喰い殺す」
- 「未年の女は縁起が悪い」
- 「未年の女は嫁にもらうな」
- 「未年の女は気性が荒く不吉」
- 「未年の女は運が悪い」
- 「未年の女は縁遠い」
・・・・など、散々な言われようです。
「平和を愛するおとなしい性格」とはかけ離れた性格のようですね。
これは、「羊」というより「未」の字のほうの意味に由来しているようです。
未はもともと“暗い”というニュアンスを持つ「昧」の字のことで、うっそうと生い茂る木々が空を覆って薄暗くなった森の光景を表わしています。
中国では十二支で月日や時刻も表現していました。
「未の月」は旧暦の6月、初夏になって草木が枝葉を一気に伸ばす時期です。
「未の刻」は午後2~4時、一日で最も気温が高い時間帯です。
そんなところから、意気盛んな性格に結び付けられたと考えられます。
気の強い女性が忌み嫌われる東洋の文化
なぜ女性の気性の激しさだけがとりあげられるのか?
しかし、そんな理由なら、未年生まれの男性にもあてはまると思われるのですが、なぜ女性のことばかり言われるのでしょうか?
これは、日本の「丙午生まれの女」の迷信についても言えることですが、「気性が荒い」ことは、男性にとってはさほどマイナスなことではなく、むしろ強さがモノを言う社会で生き残るには、猛々しさは長所と評価されることすらあるからです。
反対に、「レディーファースト」文化のない東洋では、女は常に男を支える生き方が求められ、従順であることが美徳とされます。
「天の半分は女が支える」と言われる中国は、日本に比べれば「男は外・女は内」の考え方が強くはないのですが、それでもやはり女性には受け身でいてもらいたい、という価値観が根強いのですね。
実は男性も不運を背負う未年生まれ
日本の丙午生まれについての迷信は、男性を忌避する要素はないのですが、中国の「未年生まれの運命論」は、男性についても同じように考えられています。
女性のように「門にも立たすな」程強く忌み嫌われている感じではないですが、「縁起が悪い」「運が悪い」という迷信は今でも社会にはびこっています。
日本でも丙午にもしも女の子が生れたら・・・という心配から、出産数が前後の年よりかなり少なくなりましたが、中国でも未年の出産を避けようとする民意はかなり強いらしいです。
未年になる前に生んでしまおうと計画出産するカップルが多かったようで、2014年午年[うまどし]に、集中的に子どもが生まれました。
12月には、何が何でも午年のうちに生んでしまいたいと、帝王切開を望んだ母親がたくさんいたそうです。
迷信の影響は結局子どもの人生に降りかかってくる
特定の年に出産が集中することの弊害
中国の社会学者の中には、そういう迷信によって出産数が年によって隔たることについて、警鐘を鳴らしている人もいます。
上海大学社会学部の顧俊・教授が新聞インタビューの記事の中でこう言っています。
確かに、日本でも、丙午生まれ(1966年生まれ)とその前の巳年生まれの出生数は大きく隔たっており、特にそれまでの学年より常に一クラスほど多かった巳年生まれの学年の子たちは、“小学校の建物内の教室数が足りなくて、一クラスだけ離れた棟に教室があった”など、小さい時から、本人も周りも確かに苦労していました。
総人口の分母が大きい中国では、集中出産が生む隔たりは、もっと大きなものになっているのでしょう。
日本も、風水を初め、「縁起担ぎ」には尋常じゃない気を使う国民性があります。
干支の運命論もそれなりに根強くあります。
(ちなみに次の丙午まであと11年)丙午の時ほどの反応はないですが、「・・・門にも立たすな」という言い方も、ちょっと年配の人なら聞いたことがある人も多いです。
あの“寅さん”の切り口上にも「天に軌道がある如く、人それぞれに運命を持って生まれ合わせております。・・・・未の女は門にも立たすな・・・」と出てきたことがあります。
(興味ある方は、「男はつらいよ」の第2作をご覧ください)
まあ、生まれ年で性格や運命が決まるなら、同じ学年の子はみな同じような性格・運命になってしまうはずですが、そんなことはありません。
新年の始まりにゲンを担ぐことは悪いことではありませんが、良くないことや面倒臭いことは適当にスルーしながら楽しんでくださいませ。
細かいことはいいじゃない。羊のあのゆるくて平和な感じが好きだな〜。悪いイメージはなんにもないしね!