卵の豆知識

高い卵と安い卵の違いって何?日本の卵事情

Written by すずき大和

スーパーに行くと、4~10個のパックになった卵が実にいろいろ売られています。

特売用の10個150~180円くらいのものもあれば、6個入り400円くらいの値段がついているものもあります。

白い卵、赤い卵、赤味の薄い卵もあります。

全体的に白い卵の方が安いので、赤い卵のほうが高品質だと思っている人もたくさんいるようです。

  • 高い卵はそれなりに美味しいと聞きますが、栄養も違うのでしょうか?
  • 安い卵は、安全性などは大丈夫なのでしょうか?
  • 小さな子どもなどには高い卵を与えたほうがいいのでしょうか?

卵の値段の違いや、選び方について勉強してみました。



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卵の種類と栄養価について

赤い卵と白い卵は親鶏の種類の違い

赤と白の違いについての質問をする人はとてもたくさんいるようで、「卵」でちょっと検索すると、どの鶏卵業界の関係ページにもこの説明が載っています。

基本的に、羽の色が白い鶏からは白い卵が、茶色い鶏からは赤い卵が生まれますが、味や栄養価の違いはありませんと書かれています。

白い種類は小さくてたくさん卵を産み、茶色い種類は身体が大きくて余計に餌を食べますが、産卵数は少ないそうです。

値段の違いはコストの差からくるという説明です。

赤くて高価な卵はやっぱり食べてみると美味しい

そうはいうものの、実際に高い卵(多くが赤い卵)を食べてみると、やはりはっきりと美味しさに違いがある!という証言は少なくありません。

生産者がそれぞれの「こだわり」点の解説付きで品質の違いを強く訴えている商品もたくさんあります。

地卵とか、ブランド卵とか、強化卵とか、付加価値を強調して高く販売されているものもあります。

品質の差は、餌と育て方・飼い方の違いによって生じる

実は、卵の中味の違いは、殻の色=親鶏の種類によって違ってくるのではなく、餌と育て方・飼い方の違いによる影響が大きいのです。

オーガニックな餌にこだわったものや、卵に本来含まれていないビタミンCや、微量しか含まれないヨードを餌に含ませて栄養強化を図った卵があります。

一般的な餌で育てたものよりも、味や栄養価が高くなり、手間暇がかかる分値段も高いです。

また、よりストレスの小さい環境で育てられた鶏ほど、大きくて美味しい卵を産むと言われます。

同じ鶏でも、体力の落ちる夏よりも、温暖な春・秋の方が殻に厚みのある美味しい卵が生まれます。

そして、狭いケージの中でぎゅうぎゅう詰めに飼われるものより、ある程度のスペースを自由に歩き回れる飼い方の鶏の方が、弾力のある濃厚な卵を産む傾向があるそうです。

地鶏とかブランド鶏という種類はほとんどが平飼い(囲われたスペース内を自由に歩き回れる飼い方)・放し飼いで飼われています。

有精卵も全てそうです。

白い卵は安いものが多く、赤い卵はコスト高の飼い方が多い

同じ餌、同じ飼い方で育てられている鶏から生まれた卵ならば、白でも赤でも栄養価や味は変わりません。

が、日本で、効率的に狭い場所で管理しながら大量に卵を産ませるように仕向けられている鶏の多くが、白色レグホーンという種です。

ケージ飼いで一年間に300個を超える白い卵を産んでいます。特売品になるのはこの卵が多いです。

同じ白い卵でも、平飼い・放し飼いされた鶏のものは高い値段が付いています。

平飼い・放し飼いの鶏の多くは茶色い種です。

土に直に触れる飼い方のほうが、病気などの感染確率が上がりますが、茶色い種のほうが、病気に強い性質があるためです。

餌の量と産卵数の違い以上のコストがかかって高価になっている赤い卵も多いのです。

白い特売卵に隠された秘密

ケージ飼いの鶏は先進国ではなくなりつつある

平飼い・放し飼いのほうが、多少美味しいのかもしれませんが、税金も上がって給料は上がらない昨今、特売卵の存在は重宝する、という人もいるでしょう。

効率の面でも儲けの面でも、ケージ飼いは農家にとって都合のいいものです。

実は、かつては全世界的に、やはり効率と経済性重視で、ほとんどの採卵鶏がケージ飼いされていました。

しかし、21世紀に入り、ヨーロッパを中心に、先進国の多くが次々と平飼い・放し飼いに移行しています。

EUでは2012年にすべての採卵鶏のケージ飼いが禁止になりました。

アメリカも、2018年までにはゲージ飼いを無くしていく方針で進んでいます。

これは、「畜産動物福祉」の取り組みが急激に進んできたためです。

アニマルウェルフェアが問われる時代

動物の福祉=アニマルウェルフェア

という考え方があります。

大昔から、人間は様々な動物を人間の都合のよいように改良し、ペットや家畜や動物実験に使いながら、文明を発展させてきました。

人間のために、本来の自然な姿とは大きく異なる生活・生態を余儀なくされてしまう動物たち・・・・本当にそれでいいのか?

という発想が、20世紀の半ば以降、動物愛護や社会倫理の視点から問われるようになってきました。

薬品や化粧品の動物実験が極力減らされるようになったり、動物を虐待すると罪に問われる法律ができたりしました。

畜産動物についても、たとえ殺して食べるにせよ、生きている間に正常行動を極端に剥奪するような虐待的飼育方法は改めよう、ということが言われるようになりました。

ケージ飼いの鶏の実態

バタリーケージという何段にも積み上げられた籠の中に4~6羽の鶏がぎゅうぎゅう詰めにされたまま、ほぼ毎日1個の卵を生涯産み続けるのが、日本の採卵用鶏の多くの実態です。

ヨーロッパとは逆に、ここ20年位の間にケージ養鶏の飼育頭数は3倍になりました。

生まれてすぐ雄は二酸化炭素やシュレッダーで潰されて殺されます。

ケージに入れられると、ずっとそのまま、爪は伸び放題で足が腫れている鶏がたくさんいます。

卵が手前に転がるように、床は10度程前に傾斜しています。鶏は自然に飼うと10年くらいは生きますが、ケージ飼いの採卵鶏はストレスの高い環境で過酷に産卵し続け、2年たたずに食肉用に回されます。

産卵を始めて1年後くらいに一度産卵ペースが落ちてしまう時季がきます。

養鶏農家の中には、再度産卵を促進するために、しばらく断食させることがあります。

その間、鶏は衰弱して羽が一度全部抜けてしまいます。これを「強制換羽」といいます。

通常採卵用の鶏は食肉用に使われる抗生物質は投与されないとされていますが、この強制換羽の期間は病気にかかりやすくなるため、抗生物質を与えるそうです。

日本政府の取り組み

アニマルウェルフェアの考えが早くに発達したヨーロッパでは、例えコスト高になっても、畜産動物福祉に配慮した飼育方法で採卵すべきだ、という消費者の意識も高く、国が率先してバタリーケージ飼いを禁止する方向に転換しました。

日本で実際に行政が動き出したのは、欧米でのケージ飼い禁止の動きがおきてからです。

2014年、ようやく農林水産省から「アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針」の通達がなされました。

啓発用のパンフレットには、採卵用鶏のバタリーケージ内に、止まり木と巣箱兼砂浴び場を設営する方法などが奨励されています。

卵選びは何を基準にするか

卵は殻の色だけでは品質を判断できないけれども、値段のうんと高いものはそれなりに美味しいものになっているようです。

卵はそれだけで他に類がないほど完全栄養食品であるので、あえて他の栄養素を強化する強化卵の是非については、賛否の意見があります。

低価格帯のものは、赤くても白くても、栄養や味はあまり変わらないようです。より安い特売品の白い卵はやはりお得かもしれません。

但し、それは安くたくさん供給するために、過酷な運命を強いられた鶏が産んだ卵であるのも事実です。

今一度、何を一番に考えて卵を選ぶべきか、めいめいでよく考えて決めましょう。

良かったら、日本の養鶏を取り囲む実態について、ちょっとだけ思いを馳せてみるのも悪くないかもしれません。

まさケロンのひとこと

色は栄養と味にはあまり関係なくて、飼育環境で変わるってことだね。
卵は何を食べても栄養満点!まさケロンはいつも赤い卵を買ってるよ~。

masakeron-love


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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。