更年期障害とは、中年期に入る頃、性ホルモンの分泌が減少し、からだのホルモンバランスが急激に変化することに伴って表れる様々な不調の症状のことです。
一般的に、閉経期の女性に特有の症状がクローズアップされて語られることが多いです。
しかし、女性ほど劇的ではありませんが、加齢によってホルモンバランスが変化するのは男性も同じです。
実際、男性にも更年期障害は起きています。ただ、女性ほど顕著な表れ方をしない人も多く、それと気づかずに、人知れず不調に悩んでいる人も多いようです。
更年期障害と本人も周囲も認識していない現状
静かに少しずつ忍び寄る衰え感
女性の更年期障害の時期は、閉経という目に見える大きな生理の変化が伴います。
だんだん生理不順になっていったり、のぼせや倦怠感など身体的な症状が強く表れたりして、本人も周りも、比較的「これだ」とわかるサインがはっきり出る場合が多いです。
年齢的にも、だいたいみな同じくらいの頃に、突然一気に始まる感じです。
それに対し、男性の場合、ホルモンの減少が20代後半頃から緩やかに始まり徐々に減っていきます。
そして、ストレスによって、その減り方が大きく左右される傾向があります。
ストレスの大きな環境にある人は、30代半ば頃から既に更年期障害の症状が出始めます。
一方で、中には70歳を過ぎても、快調に元気で精力的な人もたまに居ます。
発症する時期や症状の重さの個人差が女性より幅広くなっています。
同年代の仲間の中で、必ずしも共通の症状となっていないこともあり、人に相談せずにひとりで不安になる人も多く、これまでなかなかそれが更年期障害だと認識されてこなかった傾向があります。
精神的な影響が大きい男の更年期症状
女性も男性も、ホルモンバランスが崩れることによる心身の症状は、性の症状以外はそれほど変わりありません。
ただ、女性は、前述のようにからだの不調のほうをより大きく負担に感じる人が多いです。
対して男性は、性欲の減退も含めてメンタルな部分の変化や不調の形で表れることが多い傾向があります。
ED(勃起不全)やうつ病だと思って悩んでいる人の中には、実は男性ホルモンの分泌減にその原因がある人が少なくありません。
オーストラリアの大学の研究によると、うつ病を発症した人は、男性ホルモンの濃度が健康な人より相対的に低いという結果が出ています。
- 休みの時は出かけるのが好きだったのに、急に家でゴロゴロすることが増える
- 感情の起伏が激しくなり、頑固に物事にこだわってイライラしたり、落ち込んだりする
- 逆に表情が乏しくなり、あまり笑わなくなる
- 新聞やニュースに前ほど興味をもたなくなる
- 集中力が続かない
- 夜あまり眠れない
本人は気づいていない場合もあるかもしれませんが、家族の中の中高年男性に、こんな症状がみられるようになったら、更年期障害の可能性が高いといえます。
メタボリックシンドロームも更年期障害に起因
最近になり、男性ホルモンの値が下がると内臓脂肪が増える、という影響があることもわかってきました。
これは、更年期障害がメタボリックシンドロームのリスクも高めている、ということを証明しています。
メタボで高血圧、糖尿病などの悩みがある人は、元をたどると更年期障害に繋がっているかもしれません。
LOH症候群について正しく知っておこう
加齢男性性腺機能低下症候群
女性の更年期障害の原因となるのは、女性ホルモン「エストロゲン」の分泌が低下すること、というのは広く知られています。
男性の場合は、男性ホルモン「テストステロン」が低下します。
医学的にはホルモン分泌が低下してしまう症状を「性腺機能低下症候群」といいます。
加齢と共に、特に病気でもなく自然に低下している状態は、
加齢男性性腺機能低下症候群
Late-onset hypogonadism → 略して「LOH症候群」
と呼んでいます。
女性は一時期に集中的に劇的なホルモンバランスの変化が起こりますが、変化が落ち着くと、更年期症状も次第に落ち着いていきます。
しかし、男性のテストステロンの低下は緩やかにずっと続いていくので、LOH症候群の症状が表れるくらいに低下すると、何年かして自然に治まることは少なく、慢性的にずっと体調不良に悩み続ける人が少なくありません。
“LOH症候群は出口の見えないトンネル”といういい方をする人もいます。
からだと性の具体的な症状
メンタル面の症状の特徴は、前述したとおりですが、女性ほど大きな負担感にはなっていないものの、からだの症状も表れている人も少なくありません。
- ほてり、発汗、のぼせ、冷え・・・などの自律神経失調症状
- 筋力の低下やそれに伴う疲労感、倦怠感
- 頭痛、めまい、軽いしびれ
これらは男性にもよく見られる症状です。
筋肉の減少程度は女性の更年期症状より顕著で、見た目の男らしい体格が貧相に変わってくる、という面もあります。
- ED(勃起不全)
- 性欲の減退
などの性的な症状は、女性の性欲減退より深刻な悩みになりやすい面があります。
LOH症候群は治療できます
更年期障害と気付かず、うつ病の治療を行っていてもなかなか改善しなかった男性が、男性専門の診療科でテストステロンの分泌状態を検査してみたら、ホルモン量が70代の平均値くらいしかなかった、という例がありました。
同じように、何か思い当たる症状をお持ちの人は、一度テストステロンの検査をしてみるといいかもしれません。
検査して低下が著しく認められる場合は、やはり女性の更年期障害と同じく、ホルモンを投与する治療を行うことができます。
ちゃんと医者の指示でホルモン補充療法を続けた結果、うつ症状が軽減して、性欲も出てきた、という症例はたくさんあります。
メタボの人に投与した結果、内臓脂肪が減って筋肉が増えることも実証されています。
筋力や体力が増して男らしい体格を取り戻すことで、精神的にも前向きになる人が多くいます。
年かな、と感じることがあったら疑ってみよう
ちょっと前までは、元気はつらつ、何でも前向きに取り組んでいたのに、最近は何となく心が内向きになりがちで、新たなことをやるのも躊躇してしまう、という自分に気付いている男性はいませんか?
なかなか意欲が上がってこないな、と思ったら、一度更年期障害を疑って、お医者さんにみてもらってください。
LOH症候群は、放って置いても自然に改善はなかなかしません。貴重な人生の時間、悩んでうだうだ過ごすのはもったいないです。
最近はホルモン投与といっても、注射ではなく飲み薬で済んでしまう治療も多いです。
勇気をもって、面倒くさがらず、早めに対処して、豊かな人生の時間をお過ごしください。
更年期障害は突然やってくるもの。まずは一度お医者さんへ!