ちょっと前に、30代のイケメン細マッチョの俳優さんが、家の中で肉体美を晒して筋トレする、というシーンがある映画がありました。普段からその役者さんのファンを公言していた、やはり30代の友人(女性・独身)が、早速試写会に行ったようだったので、
「〇〇〇〇(役者名)のマッチョバディ、どうだったぁw」
とメールしたら、すかさず、
「それはもう、エクセレント鼻血ブーでしたわ~ \(☆o☆)/」
と返ってきました。
「鼻血ブー」って、はるか昔の昭和の時代の流行語ですが、未だに死語じゃなく使われているんだな~、と思いました。もっとも、その30代の彼女は、それが漫画の中のギャグだったことなど全然知りませんでしたけど。
子どもが喜ぶキーワード
興奮と鼻血の関係
セクシーなものを見て、興奮のあまり鼻血が噴き出る、という現象は、医学的にはまったく根拠のない迷信だそうです。
鼻の奥には、非常にもろくて出血しやすい部分があります。鼻炎などで鼻の粘膜が荒れたり、指でほじったりしてちょっと傷ついても、簡単に出血します。
極度の過労などで自律神経が不調になった時、糖尿や動脈硬化など血管壁が弱くなる病気の時なども、急に血圧が上がって血流が増えた時に出血することがあります。
が、普通に健康な状態の人が、何かに興奮して一時的に血圧が上がったくらいで、噴き出る程出血することはありません。だいたい妄想での興奮より、激しい運動をした時のほうがよほど心拍数も血圧も高まっています。が、アスリートたちはクライマックスでいちいち鼻血なんか出しません。
ちなみに、糖分とカフェインが多いチョコレートも、血圧を上げる効果がありますが、チョコレートをたくさん食べたくらいの興奮度で鼻血が出ることもありません。
谷岡ヤスジワールドの独特の表現
冒頭に書いたように、きれいなお姉さんを見たりすると、ブーっと鼻血が噴き出す表現は、故「谷岡ヤスジ」さんが漫画の中で使った定番ギャグでした。
参考:谷岡ヤスジ 鼻血ブー
これが流行語になり、以後、日本では興奮してハイテンションになる様子の漫画表現として、「鼻血ブー」は定着していきました。日本のアニメなどが早くから輸出された東アジア、東南アジアにも、この漫画チックな表現は伝わっています。
そのうち「興奮する様子」というニュアンスがなくても、単に鼻血が出ることを普通に表現する俗語にもなってしまったようです。子どもたちは、顔をぶつけて鼻血がでちゃった子を「や~い、鼻血ブー」なんてはやし立てて、先生に怒られたものです。
少し前に「美味しんぼ」という漫画で、福島に出張した主人公が鼻血を出す表現を巡って、原発事故との関係で世の中が炎上する騒ぎがありましたが、あれも
「美味しんぼの鼻血ブーの件」
などといわれています。
鼻血ブーはクールな日本文化!?
日本の漫画やアニメや俗語会話では、「鼻血ブー」は
- セクシーなものにドキっとした
- 興奮した
- びっくりした
- テンションあがりすぎて失神しそう
というような場合のお約束の定番表現です。
が、欧米にはこの
「ハイテンション=鼻血ブー」
という感覚がありません。日本の漫画やアニメでこの表現が出てきても、初めの頃は全然意味が通じていませんでした。鼻血ブーで卒倒するオチで終わると「???」という感じでした。
向こうでは、顔から出血する表現は、セクシーなイメージよりも、スプラッターホラー(血が飛び散る系のホラー作品)のような連想になってしまいます。
クールジャパンとかで、最近日本の漫画やアニメを支持する人がとても増え、コミケのようなイベントが一般のニュースにもなるようになって、鼻血ブーも随分知られるようになったようです。が、そういうポップカルチャーに全然興味ない系の人たちには相変わらず通じません。
という質問が、ネットの質問サイトにありましたが、そういうわけなので、そもそも英語には「鼻血ブー」に類似する表現はありません。
「Nosebleed boo」
なんていっても、
「?????」
なのでお気をつけください。
鼻血ブーは、下ネタを、そんなに卑猥感なくサラッと口にできる便利な表現でもあります。女性が開放的にセクシュアリティの話をする時に使うにも重宝な言葉だな、と思います。
ちょっとどぎつくて、リズミカルな響きで、尚且つ意味は分からないけれどなんとなく意味深なニュアンスが秘められていそうな言葉は、いつの時代も子どもたちは大好きですしね。
これは、死語にはなりませんね。
いつか全世界に「鼻血ブー」が広まったとき、日本の日の丸は鼻血の赤だと思われると思った。