同じ仕事をしているのに、人によって物凄く早くたくさんの作業を仕上げられる人と、そうでない人がいます。
秀でて生産性が高い人というのは、それなりに効率よく仕事をこなすための秘訣を持っています。そういう秘訣にもっと着目しようよ!という風が、今なんとなく吹き始めている兆しがあります。
世界に名高い長時間労働大国ニッポンでは、未だに
「残業たくさん出来る人」が
「定時で帰る人」よりも高い評価を受ける企業観念が強く、
効率よく仕事するより、だらだらいつまでも会社にいる人のほうが「責任ある人」として偉くなることも少なくありませんでした。
最近流行りの「ライフハック」ってやつが、そんな頭の固い日本に風穴を開けるきっかけになりそうな予感がします。
生産性を上げられる人は長時間労働しない
ライフハックって知っていますか?
「ライフハック」は、もともとはコンピューター関連の業界で生まれた言葉でした。
を総じてそう呼びました。
アメリカで2004年に提唱された言葉及び考え方です。「できる人の仕事術」的な意味合いで広まっていき、すぐに日本の業界でも使われ始めました。
初めは情報処理に関する話で使われていました。が、いつしか、社会生活全般についての簡単便利・効率アップ術にまで広まりました。
- 「キッチンのライフハック」
- 「日常生活で役立つ20のライフハック」
- 「生活が潤うライフハック」
なんてタイトルが、ちょっと検索するとたくさん出てきます。
まさに
「ライフ(人生)をハックする(うまいことやっつける)」ための「生活の知恵」
という感じですね。
スピードアップのススメは優生思想の肯定ではない
「効率化」という言葉を強調すると、儲け至上主義というか、過度の成果主義のようなイメージを抱く人もいるかもしれません。
効率よく成績を上げる人がどんどん優遇され、障害者など生産性の低い人が切り捨てられていくような、非情な社会へ駆り立てようとするマインドコントロールではないか、といぶかる人もいるでしょう。
しかしライフハックとは、むしろそういう
「強い者優勢」のしくみを覆す道を模索するための方法論
でもあります。
冒頭に書いたように、拘束時間の長さや急な転勤指示などへの対応力が重視される会社は、いわば
“無理して頑張ることが可能な人”の「力押し技」
が勝利する世界です。
しかし、限られた時間や場所での作業をより効率化し、生産性を上げる工夫をした人が評価されるようになれば、トータルの作業量ではなく、
“単位時間ごとの仕事量”や、
“その仕事が周囲へ及ぼす効率化の影響力”が
大事になってきます。
長時間勤務ができない人も工夫次第で高い成績を上げて認められることが可能な社会になるのです。そのためのノウハウやテクニックがライフハックなんです。
長時間労働が企業への貢献度の物差しであり続ける以上、「一億総活躍社会」も「少子化の歯止め」も実現不可能です。今こそ個々のライフハックを重視する企業風土が必要です。
ちゃっちゃと済ませることは悪いことではない
手間をかけない母親は愛情が足りないのか
もうひとつ、ライフハックを敬遠する人の思考として、簡単便利に解決することに「手抜き」という罪悪感を持つ傾向があります。日本人は、「より手間暇をかけることの価値」へのこだわりが強い所があります。
特に、ペイドワーク(仕事)ではない家庭内のアンペイドワーク(お金にはならないけれど、生きるために発生する必要な作業)、ことに子育てに関する部分では、
“お母さんがどれだけ手間をかけるかが、子どもへの愛情の証”
のような、価値観が根強くあります。
例えば
というルールが決められている(ええとこの)幼稚園は少なくありません。
愛情と信頼は物理的な条件で生まれるものではない
朝食やお弁当にほとんど手をかけない習慣の欧米人から見ると、こういう日本の「お母さんプレッシャー」はとてもクレイジーに感じるそうです。あちらの感覚では
「家事に忙殺されるくらいなら、その分子どもや夫と話す時間をたくさん取る方が家庭は安定する」
と考える人が多いようです。
欧米文化の価値観が皆良いとは限りませんが、一理ある考え方だと思います。
裁縫や料理が苦手な母親や、フルタイムで働く母親が、「自分は母親失格ではないか」と自信を失うことが、親子の信頼関係を築き、子どもの情緒を安定させることにいい影響があるとは思えません。
面倒な作業はライフハックを活用してちゃっちゃと済ませ、子育ての負担を軽減することは、
決して「手抜き」ではありません。
心と時間にゆとりを持つことで、愛情を育めることもたくさんあります。物理的にギリギリまで自分を酷使して奉仕すれば、愛情が伝わるわけではないのです。
もちろん、父親がライフハックを駆使して定時に仕事を切り上げ、子育てにもっと参加することも大事ですが。
生活の効率化という考え方が、個々のライフスタイルだけでなく、世間の風を少し変えていくことに、淡い期待をかけたいです。
ライフハック万歳!
なにをするにも「本当に大切なことは何か」を考えてみるとライフハックにつながっていくかも。