猿は人間にとても近い動物です。というか、生物学的には人間も「サル目(霊長目)」の中のひとつの種にすぎません。
人間に一番近い猿は「チンパンジー」というのが定説です。2005年にチンパンジーの遺伝子解析が行われ、その構造は人間の遺伝子と96%まで同じことがわかりました。類人猿以外の猿も総じて賢く、社会性など人間とよく似た所がたくさんあります。
猿みたいな人のイメージと猿のイメージ
「サル」と呼ばれたら、それは蔑称
非常に知能の高い猿たちですが、人が人を猿に例えて呼ぶ時は、どちらかというと、
- 愚か
- 卑しい
- 劣っている
- 浅ましい
- 醜い
などのイメージで見下す対象として引き合いにだされます。
誰かに「猿みたい」といわれて“褒められた!”と受け取る人はいません。
社会を形成したり、
本能より感情に左右されて行動したり、
同族で殺し合ったり・・・・
人間とあまりに近い習性が見られるため、逆に
「人間未満」
「ニセモノ」
のような象徴として映るのかもしれません。
中国には
という言葉があります。
沐猴は猿の種類です。“冠を被った猿”という意味ですね。
人徳のない人が立派な格好をしているのを見て
「あいつ見かけは良くても中身はペラッペラなんだぜ」
とあざける時に使う例えです。
猿は猿の本分として、一生懸命生きているし、動物界では賢くて、生存競争に勝ち残って繁殖しているというのに、勝手に悪口の例えに使われるなんて、ちょっとかわいそうな気もします。
昔話の猿たち
昔話の中の猿というと、「桃太郎のお供」と「さるかに合戦のカタキ役」を思い浮かべる人が多いでしょうか。鬼退治の家来は、なかなか名誉な役ですが、さるかに合戦は絵に描いたような憎ったらしい悪役です。
桃太郎の猿は正義の味方側ですが、物語の中で猿らしい特性が生き生きと表れている、という風でもなく、正直地味で、猿じゃなくてもキャラ的に構わないような感じもします。しょせん“家来”という服従させられている立場の脇役です。
カニ軍団に退治される悪役の方は、
- 木登りテクニックに秀でた運動能力
- 高い知能で「悪知恵」を働かせる“こさかしさ”
の猿のイメージから発展した、自己主張するキャラ作りがされています。
どうも日本の昔話では、
兎や亀や犬が賢いと「知恵者」のように敬意を集めるキャラクターとなり
猿やタヌキやキツネが賢いと「ズル賢い」悪者になる傾向があります。
まあ、後者は農作物を荒らす野生動物ですから、しょうがないのかもしれません。
「猿婿入り」という話では、「手伝ってくれたら娘を嫁にやる」といわれて農夫の農作業を手伝ってあげた猿が、嫁になるはずの娘の計略で、河に落とされて死んでしまいます。娘は無事に猿の嫁にならずに家に帰ってめでたしめでたし・・・・なんですが、
これ、絶対人間の方が悪いでしょ!!
やっぱり、猿って不憫だなぁ・・・・(涙)
猿は縁起物!にもなってます
しかし、日本では、猿をとても良いものとして祀り上げる文化も同時にありました。
猿の“さる”という響きから、災い、魔が「去る」に通じるとされ、昔から
「福を呼ぶ縁起物」
という扱いもされてきたのです。
猿回し
神社などで行われる「猿回し」は、もともと正月などのめでたい時に披露された芸能です。
馬小屋の守護はサル
昔は、猿は馬小屋の守護神とする信仰もあり、「申」と書いた紙を馬小屋に貼って魔除けにしていました。
「猿に絵馬」という慣用句は、どちらも縁起物であることから、「とても取り合わせが良いもの」を例える時に使う言葉です。
申赤(さるあか)
猿のお尻が赤いことから、
“申年には、赤い下着を身に着けると無病息災に過ごせる”
という言い伝えがあります。
丁度2016年の申年の際には、有名下着メーカーなどがこぞって老若男女を問わず赤い下着の売り込み商戦を繰り広げています。マスコミでも「申赤(さるあか)」と呼んでブームを煽っています。
さるぼぼ
岐阜県の飛騨地方に昔から伝わる「さるぼぼ」は、赤い布で作られた人形です。
- 災いが“去る(さる)”ように
- 家内円満・良縁・子縁など、“縁(えん=猿)”に恵まれるように
- 子宝に恵まれ、安産でありますように(猿は安産といわれる)
という願いをこめた縁起物として、人気のお土産になっています。
申年は、猿で運気アップ!
猿知恵とか、猿まねとか、底の浅いまがい物の象徴のように「猿」の例えを出してくる言葉は確かにいろいろありますが、猿への日本人の思いはなかなか複雑で深いものがあるようです。
真っ赤な下着をつけるかどうかはともかく、申年に猿の縁起にあやかって、なんとか皆様の人生も開運できますように・・・・。
たしかに猿って「ズル賢い」イメージがある。けどそんなところに時々憧れる。