世界最大の露天風呂はこうして生まれた
露天風呂を併設する地熱発電所
アイスランドのケプラヴィークにある
「スヴァルスエインギ地熱発電所」
は、ヨーロッパを代表する地熱発電所です。
この発電所が有名な理由がもう一つあります。それは、
「世界最大の露天風呂、ブルーラグーン」
を併設していることです。
発電の余剰エネルギーで温水プールなどを併設することは日本でもよくあります。しかし、世界中から観光客が集まるほどの湯を生み出す規模のものはなかなか見つかりません。
きっかけは2008年の金融危機
アイスランドは、1970年代のオイルショックをきっかけに「地熱利用」に力をいれてきました。2008年にサブプライムローン問題の影響を受け、金融危機に陥り、一時は国家破綻の寸前まで行きました。
その後、国際通貨基金(IMF)の援助を受け、また、観光業のおかげで景気は順調に回復しています。この金融危機をきっかけに、アイスランドはそれまで目指していた「金融立国」からの路線転換を図りました。
キーワードを
- 「天然資源」
- 「環境」
- 「観光」
として、スヴァルスエインギ地熱発電所とブルーラグーンは、その象徴的な存在です。
天然資源をとことん使う
地熱発電で使い終わった青みがかかった乳白色の湯は、最初は垂れ流されていたのですが、その湯が徐々にたまって自然の湯船となりました。
近くの住民が入浴したところ、皮膚病がよくなり、それが評判となって、ブルーラグーンは世界的に有名な温浴施設になりました。
さらには、温泉の中で生育する藻を培養し、化粧品に加工して販売するなど、「天然資源」をとことん使う姿勢が徹底されています。
各家庭にも地熱の恩恵がたっぷり
発電所から町まではパイプラインがつながり、「80度の湯」を安定して供給し、町全体で暖房に使っています。
床暖房のおかげで北極圏の寒さでも、家の中では半そでで居られるほど。バスルームは温水を使った乾燥室になっていて、洗濯物もすぐ乾きます。
ベランダにはジェットバスがあり、一家でお風呂を楽しみながらオーロラを眺めることができます。
日本が学ぶべきエネルギー利用
なぜ日本では地熱発電が普及しないのか
このようにまとめてみると、地熱の利用はいいところばかりのように聞こえますよね。
日本はアイスランドよりも暖かい地域が多いですが、冬にいくら暖房をしても家の中で半そでではいられません。
床暖房も一般家庭に広まりつつありますが、ガスや電気で沸かしたお湯を使っています。
地熱発電のメリット
天候に左右される太陽光や風力と違い、地熱は「24時間安定して発電できる」のが最大の特徴です。
しかも、「発電コストは石炭とほぼ同じ」です。なのに、なぜ日本では地熱利用が普及しないのでしょうか。
ネックは国立公園と温泉
日本の地熱資源の80%が国立公園か国定公園の中にあります。美しい景観を守るため制定された国立公園の中で、発電所の開発は簡単ではありません。
実際に北海道で発電に適した蒸気が見つかりましたが、「公園側から規制がかかり、計画はストップ」してしまいました。
また、地熱資源の近くには温泉街があることが多いのも問題です。
「地下から熱水をくみ上げ、温泉の量が減っては…」
と地元から開発に反対の声が上がることが多いそうです。
政府の取り組みが問題
世界的に地熱発電の開発に取り組む動きが活発になっています。
- クリーンなエネルギーで、
- 天候に左右されず、
- 低コストで安定した出力でエネルギーを作り出せる
これは大きなメリットです。福島第一原発事故で原子力への安全性が問われ、期待は高まりつつあります。
日本では、前述の環境への影響が懸念され、開発が進まないことが問題です。政府が積極的に地熱を利用しよう!という姿勢を示し、地域の住民や市民団体の理解を得ないと、日本での地熱利用は進まないでしょう。
発電所そのものを美しい景観にするっていうのはどうだろうか!