「3.11」というキーワードが発生したあの年・・・東日本大震災を体験してから、防災の日がある9月以上に、年度末のこの時期に災害対策の話が話題に上がることが多くなりました。
戦時中、昭和20年3月10日の東京大空襲の記憶が生々しい首都圏では、密集地の大規模火災対策の取り組みが着目される時期でもあります。
大正12年の関東大震災の時も、地震による建物崩壊などの犠牲だけでなく、その後に起きた大規模火災も被害を甚大なものにしました。
大正時代と違い、今は密集市街地での震災時火災の原因の過半数が「電気火災」となっています。
改めて、電気火災についての知識と対策についてきちんと知っておくことが、今とても大切です。
震災時の電気火災は、人為的に減らすことができる
首都直下地震、南海トラフ地震対策が差し迫った課題
政府が毎年発表する「防災白書」によると、30年以内に70%の確率で起きると言われる「首都直下地震」では、最悪の場合、死者が約2万3000人、経済被害が約95兆円という推定が発表されています。
駿河湾から日向灘沖までの太平洋沖の海底溝沿いで発生する「南海トラフ地震」が起きた場合は、最大死者約32万3000人、約170兆円の被害が予想されています。
しかし、白書は同時に「耐震化や津波避難対策等の防災・減災対策を講じれば、被害量は確実に減らすことができる」と指摘しています。
電気火災を防げれば、火災による被害の9割が削減可能
有識者会議の報告によれば、首都直下地震での火災による被害は最大で43万棟、死者数約1万6千人と想定しています。
一方で、電気関係の出火の防止及び初期消化成功率の向上が図られた場合、人的・物理的被害は約9割、経済的被害は約5割の削減が可能と試算しています。
阪神・淡路大震災でも東日本大震災でも、判明した出火原因の6割が電気関係のものでした。
電気火災対策は早急の課題です。
感震ブレーカー設置の促進とその前にできること
「感震ブレーカー」設置を進めることの緊急性・重要性
電気火災を防ぐためには、地震後迅速に電気を遮断することが何より一番大切です。
避難が優先される事態や昼間の留守宅でも確実に電気を切るための対策として、震度5以上の揺れを感知したら自動的に切れる「感震ブレーカー」の設置を進めることが、最優先課題と国は考えています。
先んじて、独自の補助金制度などを作って設置を進めている自治体もあります。
しかし、ほとんどの密集市街地地域で、これまでも設置の推奨を呼びかけてきましたが、現実はなかなか進んでいません。
2014年9月から、経済産業省・内閣府・総務省消防庁か連携して、「大規模地震時の電気火災の発生抑制に関する検討会」が始まりました。
3.11から4年目を迎えた2015年3月、同検討会では、首都圏を中心とするエリアなど著しく危険な密集市街地を対象に、ついに民間の電気工業者の規定に感震ブレーカーの設置を盛り込むことを求める報告を出しました。
法制化されてもなかなか進まない対策
今後、検討会の報告を踏まえて、新築の建設物はもちろん、現在ある建物でも感震ブレーカーの設置が義務付けられる法制化が進んでいくことが考えられます。
公共性の高い建築物や、企業などの事業所は早い段階で義務化されていくと思われますが、一般家庭への普及には、地道な啓発や補助金制度の検討など、まだまだ時間をかけて進めないといけない課題がありそうです。
一足先に法制化されている火災報知器やスプリンクラーの設置ですら、まだまだ全部の事業所や家庭にまで進んでいない状況です。
感震ブレーカーがつく前から始められる普段の心がけと対策
感震ブレーカーには、大モトのブレーカーを落とすタイプのものだけでなく、コンセントの電気を遮断するなど、避難時に必要な照明の確保をしながら、家電品や事業機械の電気を切ることを考えた製品もあります。
簡易なものは低価格ですが、複雑で高価なものもあります。自治体の補助がでる範囲もいろいろかもしれませんし、今すぐ設置せず、検討時間をちょっとかけたい人もいるでしょう。
しかし、地震災害は待ってくれないかもしれません。いざという時、自動ではなく手動で電気を切り、なおかつ迅速安全に避難するための準備は、ぜひ今すぐ始めましょう。とにかく、電気火災についての知識を知り、できる対策はやっておくことが大切です。
電気火災の基礎知識を知ってもしもに備える
安心した後にやってくる通電火災
電気が原因の火災はどうやって起きるのでしょうか。
家庭での原因の主なものは以下の通りです。
- コードや配線が途中で破損するなどしてむき出しになり、ショートする
- 水槽や花瓶が倒れて、コンセントや家電機械に水がかかり、ショートする
- 倒れたり落ちたりして機械が壊れ、中でショートする
- 白熱灯や電熱器、ヒーターなど高温になるものに布などの可燃物が接触して燃え出す
- 一部の配線が遮断され、他の部分の負荷が大きくなりすぎて発火する
家の中がメチャメチャに散乱するような地震が起きたら、家電品の周りで上記の様な事が起きる可能性は物凄く高いです。
しかし、地震の揺れがそこまで大きいと、直後に一時停電していることも多く、揺れが収まった直後は、案外これらの電気火災の原因に気が回らないものです。
そのため、そのまま家電品のスイッチが入った状態で逃げてしまい、避難後、再び通電した際に火災が起きる場合が多いのです。
逃げる前にできるだけスイッチを切る
余震や津波の心配がある時は、逃げる前に散乱した家の中を全部点検・片づけることなど不可能です。
それでも、暖房器具や電気スタンドなどのスイッチが入っていた時に被災した場合は、できるだけそれらのスイッチを切るか、ブレーカーを切りましょう。
停電していて屋内が真っ暗だと、ブレーカーの所まで辿り着くのも大変かもしれませんが、避難の前にできる限りは手を尽くしましょう。
もしもの場合のために普段から燃えやすいものを避ける
どうしても電気を切ることができない場合でも、少しでも火災の原因を無くすため、普段から気を付けておけることはいくつかあります。
- 家電品の周りに花瓶や水槽を置かない
- 家具などには倒れ防止器具などを設置しておく
- 白熱電球などはLEDに切り替えておく
- 外出時、必要ない家電のプラグはコンセントから抜く習慣をつける
- IHコンロ等は、簡単に触れたり押したりするだけでスイッチが入らない機種を選ぶ
他にも、生活の中を見回して、漏電や火災の原因になりそうな家電品の環境はないか、いろいろチェックして、用心できることを探してみましょう。
電気火災の危険をいつも意識して生活しよう
当然ですが、地震がなくても電気火災の原因になるような人為的環境は極力作らないよう、普段から気をつけることで、電気火災に対する意識を高めておくのもいいことです。
- TVの後ろなど、プラグがささったままのコンセントにうず高く埃が積もっていないか
- 台所の換気扇のフードから油汚れのつららが垂れ下がっていないか
- 屋根裏にネズミが入り込みそうな入り口はどこかにないか
など、面倒臭くてメンテナンスを行っている場所はないかも是非チェックしてください。
電気火災は、私たちが思う以上に簡単に発生するものです。大丈夫だろうとタカをくくらず、普段から常にその危険性を意識しておくことが大切です。
そして、やっぱり、できるだけ早く感震ブレーカーを設置するようにしましょう。一人ひとりの心がけで、震災時火災の被害は小さくすることができるのです。
電気火災の危険はあなたのすぐそこに。。もう一度チェックしておこう!