ICT教育の中身をチェック
ICTって?
ICTとは
(インフォメーション・アンド・コミュニケーション・テクノロジー)
の略で、一般的に日本語では「情報通信技術」と訳されます。
ICT教育はいわゆるデジタル教育と呼ばれるものですね。
多くの先進国ではこのICT教育に注目し、情報を活用する力、自律的に行動する力、問題を解決する力が身に付くと期待されているのです。
日本では、学校ICT環境整備事業に力を入れ、2020年までにデジタル機器の1人1台制を実現させ、ICT教育の本格化を目指しています。
ICT教育のメリット
生徒にとってのメリットは、
- 漢字の書き順、英語のリスニングなどが簡単に学習出来る。
- 調べ学習やグループ学習に役立ち、楽しく学ぶことが出来る為、学習意欲の向上にも繋がる。
- 算数や数学では、端末を教科書にかざすと3Dの立体図形が表示されたり、図形を動かして考えることが出来る為、イメージがしやすい。
- 簡単に動画や音声を再生したり、その速度を変えることが出来るので、個人のレベルに合わせた学習が可能。
- 将来、社会に出た時にも必ず扱うことになる端末の操作を、早い段階から適切な指導の下で習得出来る。
これからの時代、どんな職業についても端末操作は必要不可欠。義務教育の段階で平等に学べることは重要なポイントと言えるでしょう。
もちろん教師にだってメリットあり
教師側のメリットとしては、
- 教材作成などの準備時間、黒板に書き出す時間を短縮出来る。
- 生徒が答える過程をリアルタイムで確認、生徒の理解力を把握出来る。
- デジタル教材は共有や加工、保存が可能な為、教師同士の情報交換や修正も素早く出来る。
このほかにも、教師の事務作業の効率化なども図れるようになる筈です。
そうなってくれば、教師も子ども達と向き合える時間が長くなり、お互いの信頼関係もより強くなるのではないでしょうか。
ICT教育のデメリット
一方、ICT教育のデメリットは、
- 使用するソフトなどによっては地域や学校による格差が生じる可能性がある。
- 導入形態や予算により、授業内容が変わってくる。
- 端末を長時間使用することによって、ドライアイ・充血・視力低下・首や肩のこり・痛み・頭痛・食欲減退・心の病気などの症状が出てくる可能性がある。
- 端末が故障したりシステムの不具合によって授業が中断、復旧までに時間がかかってしまうことも考えられる。
身体の故障、システムの故障、どちらの故障も出来るだけ避けたいもの。
成長期にある子どもですから、体調の変化を見逃さないよう慎重に対処してほしいと思います。
文科省の目指すもの
教育の情報化
文部科学省では「教育の情報化」を推進、その内容は・情報教育~子ども達の情報活用能力の育成。
- 教育指導におけるICT活用~各教科等の目標を達成する為の効率的なICT機器の活用。
- 校務の情報化~教師の事務負担の軽減と子どもと向き合う時間の確保。
以上のことを通して、教育の質の向上を目指すというものです。
ここにも格差あり
しかし、その環境整備はまだまだ不十分。
教育用PC1台当たりの児童生徒数の平均は6.5人/台。
平成23年3月までに3.6人/台という目標だったものの達成することは出来ませんでした。
都道府県ごとの状況では最高値が4.5人/台に対し最低値が8.2人/台と大きな格差が生まれてしまっています。
下位の5県は
- 神奈川県
- 東京都
- 福岡県
- 愛知県
- 埼玉県
都市部での整備率が悪いことが分かります。
忘れちゃいけないサポート体制
またICT教育のサポート体制としてICT支援員の存在は必要不可欠。
技術面や授業自体に関わる補助業務を行なってくれる心強いアドバイザーです。
ICT支援員を配置するには国の補助が必要と考えられています。
教師も端末の使い方に関する定期的な研修に参加する必要があります。
情報の正しさや安全性、セキュリティに関する知識を子ども達に教える為に、情報社会の危険な側面も認識させるよう指導することが求められます。
デジタルの利便性
こんな授業も
端末を効果的に取り入れた授業の一例があります。
小学校4年生の“総合的な学習の時間”で行なった「防災マップをつくろう」というグループ学習。
- 防災マップのサンプルを電子黒板に提示し、教師がその要点を説明。
- グループごとに地域に出かけ、危険な場所・安全な場所についての情報収集をする。
- 電子模造紙上の地域の地図に、撮影してきた写真等を貼り、グループごとに工夫して防災マップを作成。
- 電子黒板に作成した防災マップを表示しながら発表。より良い防災マップになるよう、生徒同士がお互いにアドバイスを行なう。
模造紙だってデジタル化
ここで登場した「電子模造紙」。これは模造紙をオンライン上で利用出来るというもの。
複数人で同時に書き込みが可能で、その都度更新も出来ます。
文字の書き込みはもちろん、写真や図形、グラフ、イラストの貼付けなども出来ますし、マーカーや付箋も使えて手書き文字も入れられます。
いつ、何度でも編集が可能であることが大きなメリットであることに加え、それをそのままweb上に公開出来るのがポイント。
こういう学習では、多くの人に見てもらうことに意義があります。
子どもの目線で作られた防災マップなどは尚更のこと、地域の人々が安全・安心な街づくりを目指す上でとても参考になることです。
いつ、どこにいても、それらをチェック出来るのは、大きな利点と言えるでしょう。
時間を省く~電子黒板
模造紙と同じくICT教育に欠かせないのが「電子黒板」。
- インタラクティブ・ホワイトボード
- コピーボード
とも呼ばれています。
パソコンの画面をプロジェクターで電子黒板に映し出し、その黒板上でもパソコンの操作が可能なのです。
もちろん普通の黒板と同じように直接書き込むことも出来ます。
事前に準備しておいた教材をすぐ表示出来るので、黒板に書き出していた時間を省けます。
教師と生徒がそれぞれ書き込んだ物も保存出来るので、授業の双方向性という理想的なかたちも実現。
電子黒板を用いて発表や話し合いを行なうことにより、思考力や表現力が向上するとも言われています。
それからチョークを使用しないので、粉塵による人体への影響も心配ないのが嬉しいですよね。
ICT教育をいち早く取り入れた韓国
その効果は?
このように日本を含む先進各国がICT教育を積極的に活用していこうとする中、いち早くタブレット端末での授業を取り入れた韓国では、その効果を疑問視する声も上がっています。
2,200億円もの予算を投じてICT教育の普及を進めてきた韓国。
しかし子どもの学力に目立った成果は表れていないのではないかという意見も。
「タブレットだと分かったつもりになっているだけで、頭には何も入っていない」
という教師の厳しい声も聞かれました。
否定的な意見に…
またタブレット学習に依存し過ぎると、能動的に学ぶ姿勢が失われるとの指摘もあります。
端末で検索すると即座に結果が得られるものの、それは誰かの力で得たものであって自分の力ではないということから、問題解決に対する能力が落ちてしまうという見方をする人もいて、否定的な意見も目立ってきています。
一番深刻な問題と言われているのが、子ども達の読書離れ。
タブレットやスマホに依存し過ぎていることが原因との批判を受け、それまでは小学校の全学年の殆どの教科で利用していた端末を、3~4年生の社会と理科に限定することに決めたそうです。
端末では出来ない良さも
顔が見えない
生徒ひとりひとりが端末を利用しての授業風景を見ていると、その画面に集中しているせいか、みんなが下を向いてばかりいる印象を受けます。
慣れてくれば、そんなことも少なくなるかも知れませんが、やっぱりお互いの顔を見ながらの授業がいいな…と個人的には感じてしまいます。
寄り道も勉強のうち
また調べものをするときも、紙の辞書にもそれなりの良さはあります。
確かに分厚くて重たいし、中学生以上になると国語辞典、漢字字典、古語辞典、英和辞典に和英辞典も使用するので、持ち歩くとなると大変です。
でも辞書で調べる時は、そのページをめくりながらあっちこっちに寄り道するのも楽しみでした。
お目当ての言葉だけでなく、その近くにある言葉、ちょっと変な言葉なども調べながら、時には笑ってしまうこともありました。
調べた言葉をマーキングして、それが辞書の中でどんどん増えていくと、自分がとても頑張って勉強している気分になれたものです。
時間はかかってしまいますが、寄り道の知識も大切。勉強は効率の良さが全てではありません。そんな楽しみを経験することもモチベーションに繋がります。
Face to Face
全ての授業が端末利用で済んでしまうのなら、学校に通う意味も分からなくなってきてしまいます。
友人とのコミュニケーションさえも端末で取る時代。
便利ではあっても、文字だけで気持ちを伝えることには限界があります。
Face to Face
お互いの表情を見ながらのコミュニケーションが一番重要であることを、私達大人が教えていかなくてはいけません。
体験型授業はどれも楽しかった
子ども達には体験型の授業が大切。例えばマッチを使ってアルコールランプに火を付けるなんてことは、端末の中では体験できません。
みんなでワイワイやりながら作り上げる調理実習。あーだこーだと言いながらも、最後は何とか食べられる物が出来上がる達成感。
もちろん遠足や修学旅行、体育祭なども、なくすことなく変わらずに体験してほしい大切なイベントだと思います。
ICT教育は、まだ歩き始めたばかり。前進したり停滞したりしながら少しずつ浸透していくのかも知れません。
そのメリットを上手に利用しつつも、今までの授業の良さも残していける教育を目指してほしいと思います。
まさケロンは重たい辞書なんて持ち歩きたくない派。タブレット一台でもあれば十分!
ただね、体験型授業はこれでもかってくらいたくさんしたほうがいいと思う。
さあ、知恵を振り絞れ!