薔薇(バラ)

薔薇って西洋のもの?実は日本は世界で有名な原種薔薇の自生地

Written by すずき大和

「薔薇」 といえば、かつては、「少女漫画の背景につきもの!」でした。

『ベルサイユの薔薇』 なんて漫画もありました。

『星の王子さま』 では薔薇は主人公の心の友でした。

「お姫様」の髪を飾り、「王子様」が口にくわえている

薔薇にはそんなイメージが付きまといます。お姫様といっても、決して日本のお城の姫君ではなく、あくまでも西洋の印象ですが・・・。

薔薇は、近代以降、西洋から入ってきた文化の象徴のような感じを持つ人が少なくないでしょう。が、意外と大昔からアジアでも薔薇は愛でられてきた花でした。

そして、実は日本の原種薔薇は、世界の薔薇に大きく影響を与えた歴史を持っています。



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モダンローズは中国生まれヨーロッパ育ち

薔薇の原種は北半球に自生する野生の花

薔薇は、5000万年以上前から、野生種が北半球のあちこちで見られました。もともとはユーラシア大陸から発生したといわれていますが、昔は地続きだった日本や北アメリカにも、古くから薔薇の記録があります。

ヨーロッパでは、紀元前1600~1450年ころまでエーゲ海で栄えたミノア文明の遺跡の壁画に、薔薇の花が描かれています。紀元前12世紀頃の古代ペルシャでは、香料用や薬用に利用するため、既に栽培が始まっていました。

ローマ時代を経て、ヨーロッパ各地では、その後長い年月をかけて品種改良も進められながら、時には宗教や権力の象徴として、一方で庶民が日常で楽しむ花として、薔薇は愛され続けてきました。

オールドローズとモダンローズ

現代、私たちが「薔薇」と聞いて一番イメージする花の形は、たぶん「モダンローズ」といわれる種類の花です。

  • 剣弁(けんべん):花びらの淵が外側に巻き込まれ、花びらの先がツンツンしている
  • 高芯(こうしん):花の中央がすぼまったように高くなっている

というのが大きな特徴です。


原種の薔薇の花の形は「オールドローズ」と呼ばれます。

オールドローズは、花びらの淵が巻かれず、まあるい形をしています。野生の原種は一重咲きのものも多く、モダンローズのように、キュッと尖がるようにすぼまって高くなっている中央の花びらがありません。

品種改良された八重咲きオールドローズの場合も、全体にお椀型に咲きます。「シャクヤク」とか「ボタン」のような形の薔薇です。


モダンローズの発祥は中国

オールドローズを品種改良し、現在の観賞用に栽培されている薔薇の多くの特徴である、

  • 「四季咲き」:1シーズンだけでなく、春にも秋にも咲く種類
  • 「剣弁高芯咲き(けんべんこうしんざき)」:モダンローズの花形の特徴

という薔薇を最初に作り出したのは、実は中国です。

ヨーロッパでは、中世の頃までオールドローズしかありませんでした。18世紀から19世紀にかけ、中国の薔薇が品種改良の技術と共に伝わります。それ以後、フランスを中心にヨーロッパでは飛躍的に薔薇の品種改良が進み、現在の栽培種や栽培技術の基礎が築かれました。

ヨーロッパで最初に生まれた“剣弁高芯咲き”の薔薇は、1867年に発表された

『ラ・フランス』

という品種です。


そして、1867年以降に生まれた剣弁高芯咲きの種の薔薇の花を

「モダンローズ」

と呼ぶようになります。そのため、“最初の”モダンローズとして、ラ・フランスを紹介する情報もたくさんあります。が、元をたどるとアジアが先なのです。

日本の薔薇はガーデンローズの礎

古書に残るうばら

日本で薔薇の記録として最も古いとされているのは、「万葉集」です。

「うばら」「うまら」

という名前で謳われている花が、日本の薔薇です。

“道の辺の茨(うばら)のうれに延ほ豆の からまる君をはかれか行かむ”

「茨に巻き付く豆のように、絡みつく君を置いていかなければ」という意味です。防人が恋人(妻)を置いて地方へ単身赴任していく心情を謳ったものだそうです。

また、常陸(現在の茨城県)の国守によって編纂された「常陸風土記」という文化記録書に、「うばら」の記録が残っています。茨城県は、その昔、野バラがたくさん自生する地だったのですね。

園芸種の大元はアジアの8種の原種

現在、世界には約250種の原種を含め、19,000種以上の薔薇があります。栽培種の多くは、18世紀以降のヨーロッパで生まれました。その掛け合わせを辿っていくと、ほとんどが中央アジアから日本にかけてのエリアの自生種8種類に行きついてしまうそうです。

この現在のガーデンローズの基礎となる8種類の中の2種類が日本の野生種

「ノイバラ」「テリハノイバラ」

でした。

ノイバラはラ・フランスを生んだ育種家ギョー氏によって品種改良され1875年「ポリアンサ系統」という種が生まれました。これは、現在のガーデンローズの主流となっている「フロリバンダ系統」へとつながる種でした。


テリハノイバラは、現在広く普及している「つるバラ」の系統の土台となりました。


他、「ハマナス(ハマナシ)」という原種も、多くの種の品種改良に使われています。


古書のうばらがノイバラやテリハノイバラと同じ花なのかどうかはわかりませんが、どちらも日本全国に見られた最もポピュラーな野生種でした。そしてそれは、

“世界に誇る原種の薔薇”

であり、

“日本は世界有数の薔薇の自生地”

として、広くガーデーナーに知られる国なのです。

まさケロンのひとこと

たしかに薔薇って日本っぽくない感じするよね。薔薇にふさわしい日本を目指そうじゃないか!

masakeron-happy


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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。