防災・減災

ゲリラ豪雨は雨の匂いがない。都会で夕立ちを事前に察知できる?

Written by すずき大和

子どもの頃に比べると、最近の気象変化ってやたらに激しくなった印象がありませんか?

毎夏、台風がきたわけでもないのに、局所的に短時間にものすごい雨量の雨が集中的に降り、土砂崩れや排水溝などが溢れて町が水浸しになる現象は、都市部の市街地でも山野を切り開いて開拓した田舎の住宅地でも起きています。

夏は積乱雲ができやすいので、「夕立ち」はずっと昔から日本の風物詩ですが、最近の「ゲリラ豪雨」と呼ばれる現象は、夏休みの記憶の夕立ちとは全然違う、あまり風流ではない激しさとやっかいさを感じる雨です。



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ゲリラ豪雨ってなんだろう

半端ないドシャ降りな夕立ち

「ゲリラ豪雨」とは、気象学などで定義が決まっている専門用語ではなく、マスコミやネットの書き込みなどで使われだし、広まっていった俗語です。狭い地域に短時間集中的に降る、いわゆる「にわか雨」の中で、その雨量の集中っぷりが半端ない

“物凄い超ドシャ降りな夕立ち”

をこう表現しています。

積乱雲が降らせる雨

突然もくもくと湧き上がるように発達し、灰色に空を覆ってくる雲を“積雲”とか“積乱雲”といいます。この雲が降らせる雨のことを専門用語では「驟雨[しゅうう]」といいます。

夏の夕方に降る局所的短時間の驟雨が「夕立ち」です。

定義は決まっていませんが、だいたい毎時100mm以上の夕立ちが「ゲリラ豪雨」と呼ばれます。

積乱雲は、湿った暖かい空気と、温度の低い空気とぶつかって混ざり合う(対流する)時に生まれます。暖かい空気の中の水分が、冷たい空気に当たって急激に冷やされてできる水の粒の集まりが積乱雲です。積乱雲は垂直方向に発達するので、狭い範囲に集中的に大量の雨を降らせることになるのです。

前線通過時と暑い日の驟雨の違い

台風や前線が通過する時、暖かい空気の層を後ろから追いかけるように冷たい空気が入り込んでくることで、対流が起こり、次々と積乱雲が生まれ、大雨になります。

一方、夏の暑い日に積乱雲ができるのは、地表が熱くなることで一気に大量の上昇気流が発生して、上空を流れる温度の低い空気とぶつかるためです。


前線や台風の時にできる積乱雲より、暑い日の夕方に突然発生する積乱雲のほうが、短時間に上空に向かって大きく発達する傾向があります。上昇気流の勢いが激しいほど、積乱雲は大きくなり、ゲリラ豪雨となります。

最近、特に都市部では「ヒートアイランド現象」と呼ばれる、地表付近が以前よりずっと高温になりやすい状況があります。これが、より大量の上昇気流を生み、ゲリラ豪雨を招いている原因のひとつといわれています。

ゲリラ豪雨を早めに察知して、退避しよう

スコール状態の間は、安全のために雨宿りする

ゲリラ豪雨の最中は、雷や突風も発生しやすい状況です。

また、視界が悪く、足元は水が溢れている状況で移動するのは、事故の確率を高くします。

都市部では、

「もうすぐ夕立ちがきそうだな」

という状況を察知したら、速やかに、うまくやり過ごせる場所に退避することが大事です。

夕立ちの前触れ

積乱雲はあっという間に発達し、降り始める時は一気にきます。うっかりしているとドシャ降りの中につかまりますから、「きそうだな」という前触れを敏感に察知することが大切です。

ということで、どんな前触れがあるかまとめてみました。

1, 風上の空に積乱雲が見えてくる。

2, 急に風が冷たくなる。風向きが変わる。

3, 遠くの景色がなんとなく霞んで見える。

4, 雷の音が聞こえる。光が見える。

5, 雨の匂いがしてくる。

2~5は、すでに近くで驟雨が降り出しており、その雲が近づいていることを表します。

ただこれらは、ちょっと郊外で山や川が近いとか、緑が比較的多い町なら察知しやすいですが、ビルが立て込んでいる都会では、わかりにくい場合もあります。

特に、最近の都会のにわか雨の際は、“雨の匂い”が全然感じられない場合がとても多くなっています。

雨の匂い

山に登る時や、田舎へ遊びに行った時、急に天気が変わって雨が降り出す直前に、辺りに独特の「雨が近づいている匂い」が立ち込めてくるのを体験したことはありませんか?

私は東京で生まれ育ちました。子供時代を過ごしたのは「昭和」と呼ばれた時代です。その頃は、東京の町でも、夕立ちの前には独特の匂いが辺りを包むことがよくありました。

あれ、最近は本当に感じなくなりました。

あれは、植物が空気中に放出している油の匂いや、土の匂い、オゾンの匂いなどが混ざったもので、激しい雨が降ると土壌や岩石の表面に蓄積していたこれらの匂いの成分が舞い上がって香り立たせるのです。局所的な激しい雨を降らせている雲が近づいてくる時、先にこの匂いが押し寄せてくる、というのが雨の匂いの正体です。

今、都会でゲリラ豪雨に合う時、ほとんどこの匂いがしないのは、それだけ土や緑が町から減っているということなのでしょう。それがコンクリートの建物に覆われた町になっていることを意味するならば、まさにヒートアイランド現象が進んでいることを示唆しているわけで・・・・「ゲリラ豪雨には雨の匂いがない」のも納得です。

まさケロンのひとこと

あの独特な雨の匂いってなんだか気持ちが落ち着くんだよね。そのあと大変だけど。

masakeron-love


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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。