防災・減災

内在するパワーが違う秋台風!秋雨前線とのダブルパンチにご用心

Written by すずき大和

日本の台風シーズンといえば、だいたい7月の終わりから10月上旬の2ヶ月くらいが話題になります。気象庁のデータベースを見ると、発生数では8月のほうが多い年もたくさんありますが、

“本格的な台風シーズンは9月”

という印象があります。

夏の台風と秋の台風では、実は特徴に差があります。早いスピードでやってきて、大きな被害を出すことが多いのは、確かに秋台風のほうなのです。



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秋台風は強くて早くて近くにくる

日本三大台風は秋台風

台風とは、最大風速(10分ごとの平均の最大)が秒速17.2m以上の熱帯低気圧のことです。

風速17.2m/sって、どれくらい強い風でしょうか?

風速10m/sの風で、木々の枝が揺れ始め、傘がさしにくいなぁと感じるようになります。

風速17m/sになると、小枝が折れて飛ばされ、風に向かって歩きづらくなります。

風速20m/sでは、屋根瓦が飛ばされたり看板が落ちたりという被害が出始め、人は何かにつかまっていないと立っていられません。

台風の基準では、

  • 風速33m/s以上で「強い台風」
  • 風速44m/s以上で「非常に強い台風」
  • 風速54m/s以上で「猛烈な台風」

になります。33m/s以下はそれでもまだ「普通の台風」なんです。

これまで、強さだけでなく、大きさ・被害状況など総合して、最も強烈だった台風を

「日本三大台風」

と呼んでいます。いずれも秋台風でした。

『室戸台風』1934年9月21日上陸 

最大風速60m/s、死者不明者3036人

『枕崎台風』1945年9月17日上陸 

最大風速51.3m/s、死者不明者3756人

『伊勢湾台風』1959年9月26日上陸 

最大風速75m/s、死者不明者5098人

台風が発達して移動するしくみ

台風の元となる熱帯低気圧は、熱帯地方の海上で生まれます。高い水温によって温められた熱い空気は、大量の水蒸気を含んで不安定な状態になっています。緯度の高い熱帯地方では、貿易風が吹いており、この風が不安定な熱い空気に吹き込むことで上昇気流を起こします。

上昇した熱い空気は積乱雲を作り、雲が発生する時に出る熱が周囲に拡散されることで、中心の気圧が更に下がり、貿易風の吹き込みが増し、上昇気流の勢いはさらに強くなり、どんどん大きな低気圧に発達していくのです。

発達して台風になった熱帯低気圧は、貿易風と偏西風によって東アジア方面に運ばれていきます。夏場は、日本の下に強い太平洋高気圧があるため、台風を運ぶ風はそれに邪魔されます。結果、高気圧を迂回するように、時計回りにカーブする台風の軌跡が描かれるのです。

秋台風の勢力が強くなる理由

水温や地温は、温まりにくく、冷めにくい性質があるので、日照時間が長く日差しが一番強い季節より、少し遅れて温度のピークが訪れます。最高気温は夏至よりも1ヶ月遅くピークを迎え、水温のピークはそれより遅い9月ころとなります。

海面の温度が高くなるほど、水蒸気が多く発生し、大気は不安定になります。不安定になるほど、熱帯低気圧は大きく発達しやすくなります。そのため、8月より9月の方が、勢力の大きい台風が生まれやすいのです。

また、秋になると太平洋高気圧は弱くなります。その影響で、特に偏西風の威力が強まるため、夏には中国大陸のほうに向かうことが多かった台風の進路が、だんだん東に大きくカーブして、日本列島に接近するコースへ近づいてきます。強い偏西風に煽られて、スピードも速いです。

こうして、「勢力」「進路」「スピード」が夏とは異なる秋台風の特徴が生まれ、日本に影響が及ぶケースが増えるのです。


秋台風は雨台風

秋雨前線との相乗効果

秋台風のもう一つの特徴として、

“大雨の被害が起きやすい”

ということがあります。

太平洋高気圧が弱まると、大陸にある高気圧が勢力を増してきます。秋のはじめ頃、日本列島がちょうどこのふたつの高気圧の谷間になるような気圧配置となります。押し合う高気圧の境目には

「秋雨前線」

が発生し、太平洋高気圧がもっと弱まるまでの間、しばし停滞します。日本は秋の長雨の時期に入ります。

ここに台風が近づくと、台風の渦巻き状の流れが運んでくる湿った空気が、秋雨前線にどんどん補給されるような形になり、大雨をもたらします。まだ暴風の影響を受けないような遠くに台風がいる時でも、南の海上の湿った空気の流れは前線に向かってやってくるのです。

季節を分ける風

日本の暦では、立春から数えて

  • 「二百十日(にひゃくとおか)」・・・9月1日頃
  • 「二百二十日(にひゃくはつか)」・・・9月11日頃

は、台風がよく来る日といい伝えられています。

昔の人はこの時期の台風を

『野分(のわけ・のわき)』 

と呼びました。

秋の台風の暴風の強さを表現して、

“野原の草をまっぷたつに分けるくらい強い風”

というところからきています。

残暑が厳しい日本の秋も、秋口の大きな台風やその影響をうけての大雨を経ると、一気に涼しさを増して秋らしい陽気になります。野分の風が分けるのは、季節の節目でもあります。

秋台風はスピードが速く、大陸に近づいて勢力が衰える前に被害が出てしまいがちです。暴風域内では瞬間的に突風など拭きやすく、思わぬけがをすることも多いです。

「これくらいならまだ大丈夫」

と自己判断して水路を確認したり屋根に上ったりしないように、暴風雨の注意報や警報が出る時はくれぐれもご用心を。

台風を上手にやり過ごし、爽やかな秋を迎えたいものです。

まさケロンのひとこと

6月の梅雨よりも9月の方が雨降ってるイメージ。ただ屈するのもなんだし、このとんでもなく大きなエネルギーをなんとか利用できないものかな!

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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。