年末になると、「第九」を聴きにいくんだ~という声を、周りの人たちからけっこう聞きますよね。
各地のオーケストラや、アマチュアの団体も、一斉にコンサートを開催しますよね。
それを聞くと、そうかぁ~、そんな季節か・・・と思います。
実際、私も、そんな世間の常識(?)につられて、過去、母親と第九のコンサートに出かけていったことがありました。ま、普段、クラッシックを聞き慣れていなかった、この親子、静かな曲調では、そろってウトウト。
大きく、
「ババァ~ン!」
となるたびに、ふたりそろって、
「ハッ!!」
と、飛び起きるを繰り返し・・・。
ちょっと、どうなの、それ?という、カンジの思い出となりました。クラッシックを愛する皆様、大変申し訳ありません。
流行につられた私たち親子はともかく、なぜ、年末に「第九」なのでしょうか?
そこのところを、ちょっと追求してみましょう。
「第九」って、そもそも?
曲名の“第九”は日本での親しみを込めた愛称で、実は、正式には、
『交響曲第9番(こうきょうきょくだい9ばん)ニ短調作品125』
(ドイツ語: Sinfonie Nr. 9 d-moll op. 125)
が本当の作品名となります。
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの9番目にして最後の交響曲として、世界中で愛されている楽曲なんです。
とくに、第4楽章は独唱や合唱を伴って演奏されて、歌詞にはシラーの詩の『歓喜に寄す』が使われています。
第4楽章の主題は『歓喜の歌』としても親しまれているんです。
この「歓喜」の主題は、非常に特別で、欧州評議会において「欧州の歌」としてヨーロッパ全体を称える歌として採択されているんです。
欧州連合においても連合における統一性を象徴するものとして採択されています。
このほか、コソボ共和国の暫定国歌として制定されたり、ローデシアの国歌としても制定されていたんだそうです。
日本で「第九」がはじめて演奏されたのは?
1918年6月1日に、徳島県板東町(現・鳴門市)にあった板東俘虜収容所が、日本の
「第九」
のはじまりの場所でした。
ここで、ドイツ兵捕虜により全曲演奏されたのが、日本における初演だとされています。
この事実は徳川頼貞が書いた『薈庭楽話』で明らかにされていたにもかかわらず長く無視され、1990年代になってようやく脚光を浴びました。
古い映画ですが、映画『バルトの楽園』(出演:ブルーノ・ガンツ、松平健ほか)は、このエピソードに基づくものだそうです。
映画では、一般の人々に披露されたことになっていますが、実際には収容所内の演奏会だったため、「第九」を聴けた日本人は、収容所関係者のみだったようです。
そして1919年12月3日、福岡県の久留米高等女学校(現・福岡県立明善高等学校)に久留米俘虜収容所のオーケストラのメンバーが出張演奏したときに、他の曲に交じって「第九」の第2・第3楽章を女学生達に披露したそうです。
これが一般の日本人が『第九』に触れた最初だと言われているらしいですよ。
この二日後の12月5日、久留米収容所内で男声のみと不完全な楽器編成ですが、収容所関係者の前で全曲演奏されたんだそうです。
なぜ、年末に「第九」なの?
日本で年末に『第九』が頻繁に演奏されるようになった背景には、かなり現実的な事情があったんです。
戦後まもない1940年代後半に、オーケストラの収入が少なく、楽団員たちは、年末年始の生活にも困る状況でした。
それをなんとか改善するために、合唱団も含めて演奏に参加するメンバーが多く、しかも当時(クラシックの演奏の中では)
「必ず(客が)入る曲目」
として人気があった「第九」を日本交響楽団(現在のNHK交響楽団)が年末に演奏するようになったんだそうです。
そして好評を博したそれが、定例となったことが、発端だと言われているんですよ。
当時、ドイツでは大晦日に「第九」を演奏されているという事実に習って、大晦日に生放送をする慣習が定着していたんです。(これ、実は、ドイツでは、夜中に演奏した事実はないんです)
年末の定期演奏会で取り上げても、とても自然に映ったことも一因として挙げられます。
1960年代以降には、国内の年末の『第九』の演奏は急速に広まっていき、現在に至っています。
太平洋戦争の状況が悪化する中で、法文系学生で満20歳に達した者へも徴兵令がくだり、学生達は入営を控えた12月の初旬に、繰り上げ卒業式の音楽会で「第九」の4楽章を演奏したといわれているんです。
年末に「第九」が、演奏されるのは、日本だけ?
実は、年末の時期に、好んで「第九」を演奏するのは、日本だけなんだそうです。
ヨーロッパでは、通称「ハレルヤコーラス」で有名なヘンデル作曲の「メサイア」がよく演奏されるんだそうですよ。
ベートーベンの故郷のドイツのクラッシック音楽関係者も、日本での年末の「第九」の好まれようには、驚いているんだそうです。
また、この曲の中に出てくる「天使」や「歓喜」などのキーワードが、新年に向けての日本人の想いとリンクして、好まれるのではないかとも言われています。
「第九」の裏事情、いかがでしたでしょうか。
でも、一年の終わりに、総仕上げで、ちょっと贅沢な気分で「第九」、そして「歓喜の歌」を聴きに行く・・・
いつのまにか、日本の風物詩になってしまった、この面白い習慣。
まぁ、コンサートまでは足を運ばなくても、自宅でゆっくり鑑賞するのも、わるくないですよね!
まさケロンも、リラックスした時とかにクラシックよう聞くでぇ~
なんか、ホンマに落ち着くねんなぁ~