ネットサーフィンしながらなんとなく「春の話題」を拾っていたら、自然科学系のネタの中に、
“早春の時期に咲く花は黄色が多い”
“理由は、まだ寒い時季に飛んでいるハチは黄色い花が好きだから”
という定説を複数目にしました。
- 福寿草
- 水仙
- ロウバイ
- マンサク
など、まだ雪が残っていたり、雪解け水の川が流れる風景の中で咲くようなイメージの花の例を並べられると、なるほど、黄色い花が多いような気もします。
が、早春の時季の花見といえば筆頭で思い浮かぶ梅は、赤・白・ピンクのイメージです。真冬の時季から咲いている椿やさざんかも赤・白の印象が強く、待雪草(スノードロップ)やクリスマスローズは白です。
ネットには、誰かの思い込みで適当に書いた推測が、真実のように広まってしまった似非科学ネタも多いので、ちょっと調べてみました。
花の色は誰が花粉を運んでくれるかによって決まる?
黄色い花が多いのは本当らしい
「早春には黄色い花が多い」
と書いてあるサイトを検索すると、多くが個人ブログなどでの個人的な感想や感覚的な分析でした。日本人サイトだけでなく、西洋でもそんな話題がありました。
残念ながら綿密な統計データが示された記事は発見できませんでしたが、専門家サイトや大手メディア、自治体が出している情報の中にも「黄色い花」の話はいくつか出ており、概ねの分析だと、こんな数字が並んでいました。
- 日本に自生する花の、3割強が白、3割が黄色、2割が青・紫、1割が赤
- 早春時季については、黄色が突出して多く、白が2位
どうやら、早春に黄色い花が多いことは事実のようです。
なぜ黄色?
黄色が多い理由についても、概ね
“早春の時季に飛んでいる虫は、黄色が好きだから”
という説で共通しています。が、
- 黄色が好きな虫は「ハチ説」と「ハエ説」のふたつに分かれていました。
- 黄色が好きな理由は複数ありました。
どれもデータや科学的な説明が不十分で、どこまで推測なのかよくわからない記事もあります。
送粉シンドローム
虫に花粉を運んでもらっている花を「虫媒花」といいます。
虫媒花は虫に合わせた“好かれる要素”を兼ね備えるように進化してきました。花粉や蜜を食糧として与え、虫に向かって餌のあることをアピールする機能がいろいろあります。
媒介となる虫に合わせ、花の特徴が変わってくる場合もあります。
虫ごとに合わせた進化の形態のことを
「送粉シンドローム」
と呼んで研究している人たちがいます。
送粉シンドロームを決める要素は、花色だけに限らず、形や匂いなど、いろいろな条件が関係してきます。一概に「何の虫は何色の花を好む」とはいえない部分もあります。送粉シンドローム自体、今は研究中の分野で賛否あります。
ただ、早春に限らず、黄色い花には虫が寄ってきやすい傾向があるのは確かなようです。
が、日本の蜂蜜のシェアは、クローバー、レンゲ、アカシアなど、黄色じゃない花が多く、「ハチは特に黄色が好き」という説を裏付ける説明は見つけられませんでした。
虫の目から見る花の色
虫が見る色
実は、虫と人間では、見えている色が同じではありません。人間は、赤から紫までの波長の色しか見えませんが、虫の多くは紫外線が見えます。紫外線が見えると、花粉や蜜のある場所に誘導するサインがついている花が多いそうです。
そして、ハチやハエ・アブを始め多くの虫は、波長の長い赤に近い色が見えない(黒く見える)ことがわかっています。
一方、蝶は人の見える色が全部見えます。送粉シンドロームでは、赤い花に寄っていく虫は蝶が多いとされ、
“赤が見えないためにハチは黄色が好き”
と説明する人もいました。
が、波長の長い色が見えにくいなら、赤の次に波長が長い黄色も、かなり黒っぽく見えるはずです。真っ黒く見える赤は嫌うのに、次に黒っぽい黄色を好む、というのは、なんだかしっくりきません。
黄色はよく見えないのか?
紫外線も見える虫には、本当はどんな色に見えているのか、紫外線写真とカラー写真を重ねて調整して、いろいろな人が「虫の目写真」を作ろうとしています。
左は木イチゴ、右はキンポウゲの花で、下のモノクロ写真は紫外線カメラで撮ったものです。キンポウゲは黄色ですが、花びらは紫外線をたくさん反射するようで、紫外線写真では明るく光っています。真ん中の写真は虫の目写真ですが、赤が見えるので、蝶の目のようです。
イギリスのデイリーメールに載った虫の目写真では、黄色いおしべは真っ黒に写っています。
人間には同じ黄色に見えても、虫から見ると同じとは限らないようです。
“ハチは花粉と同じ色の黄色い花が好き”
という説も多いのですが、やはり怪しいかも・・・。
黄色は虫から嫌われない
結局、黄色が好かれる理由も好いている虫の特定も、調べた範囲では明確にはわかりませんでした。2013年にフジテレビのサイトでは、
「黄色は花粉を運んでくれる様々な虫に嫌われない色」
という専門家の言葉で説明していました。この辺りの表現が、現時点では一番妥当のようです。
情報拡散する皆さん、適当に枝葉の解説を加えて広めないようご注意くださいませ。
お~、つまりまだたしかなことはわかってないんだね。現代社会ってなんでもわかってます感が溢れてるけど、けっこう未知のこと多いよね。ワクワクするね。