1月生まれの女性から、
「誕生石がガーネットっていうのがちょっとアレよね・・・」
みたいな声を聞くことがあります。
ダイヤやエメラルド、ルビー、サファイアなどに比べると、採掘量の多いガーネットは、確かに手に入れやすい価格です。誰かにおねだりしなくても、自分のお小遣いで買えそうです。欠けたり傷ついたりしやすいところも、なんとなく“チープ”な感じがします。
どうせ買ってもらうなら、ダイヤやルビーのほうが良かった!・・・ですか?
それ、大きな間違いです。
ガーネットは、決してチープな石ではありません。
ガーネットってそもそも何?
ひとつの鉱物のことではありせん
ガーネットの原石は、ダイヤやルビーなどと違い、ある特定の1種の鉱石ではありません。結晶構造が等しいけれど成分が違う、幾種類もの鉱石からなるグループ群の宝石の総称です。
科学的にいえば「ネソケイ酸鉱物」の仲間ですが、鉄やマグネシウム、カルシウム、マンガン、などなど、主成分が異なるものごとに14種類に分かれます。成分が違うので、種類によって特性も色も違います。
結晶はだいたい菱形十二面体または四角形の多面体で、非常に整って見えます。みなガラス状の光沢があり透明で、原石の段階ではかなり美しい見栄えです。
深紅の石は最高のクラリティ
最初は、鉄やマグネシウムを主成分とした、紫やオレンジがかった赤色の結晶(鉱物名:アルマンディン、ロードライト、パイロープなど)のことでした。
ザクロのタネに似た色だったので、ラテン語のタネを意味する「グラナタス」が語源となり「ガーネットgarnet」と名付けられました。日本語でも
「柘榴石・石榴石(ざくろいし)」
という和名になっています。
この赤い石は、結晶もクールですが、「インクルージョン」と呼ばれる、目に見えるチリのような不純物がほとんどありません。中にすき間があったり表明がデコボコだったりもしないので、カットして研磨するだけで、非常に高いクラリティ(透明度)の宝石に仕上がります。
ルビーやエメラルドなど天然石の多くは、原石の状態ではインクルージョンや傷が目立つため、一度加熱したり、樹脂やガラスを充填したり、など、不純物をなくし透明度を上げる加工をしてから市場に出します。
- 宝石加工技術が未熟だった大昔は、そのままで十分透明で深みのある輝きのガーネットは、とても高い評価を受けていました。
- 古代エジプトではファラオが身に着ける宝石でした。
- ローマでは重要書類の封蝋用のはんこ(インタリオ)をガーネットで作りました。
また、旧約聖書のノアの箱舟の話では、船の行く手を照らす光を放ったり、十字軍の戦士のお守りとされたり、など、強い力を持つ神秘の石として扱われました。
ガーネットは赤だけじゃない
赤石の衰退
深紅のガーネットは、中世には特に王族や貴族、聖職者がこぞって身に着けました。19世紀のビクトリア朝イギリスではガーネットの大ブームが起きました。しかし、20世紀以後、スリランカやブラジル、アフリカなどで次々鉱山が発見され、採掘量が増えると、加工の手間が少ないことも重なって、どんどん価格が下がっていきました。
安価になるとセレブの人気は衰え、次第に忘れられた宝石のようになりました。
緑色のツァボライト
近代、科学が進むに従い、ガーネットの仲間と呼べる赤以外の色の鉱石が次々判明しました。黄、オレンジ、紫、茶、ピンクなど、青以外の色はほぼありました。特に、緑色に輝くガーネットは、非常に美しく、希少で、高価でした。
「グリーンガーネット」
と呼ばれるのは、カルシウムとアルミニウムを主成分とする緑色の鉱石(鉱物名:グロッシュラー)のことです。1968年、ケニアのツァボ国立公園一帯で発見されたグリーンガーネットに、ティファニーが
「ツァボライト」
と名付けて世界に売り出したことで、緑のガーネットは一気に有名になりました。
ダイヤに負けないデマントイド
1860年、ロシアのウラル山脈で発見された、カルシウムと鉄を主成分とする緑のガーネット(鉱物名:アンドラダイト)は、高い光の屈折率があり、宝石の中で唯一ダイヤモンドを超える光の分散率を持っていました。ダイヤモンドのように、光の当たり方で、七色の光沢(ファイアー)が見える特性もありました。
オランダ語で“ダイヤモンドに似た”という意味の
「デマントイド」
と名付けられました。
これは最も高級品のガーネットです。その輝きの美しさはダイヤにも匹敵し、市場に出回る量はダイヤより希少です。赤石と違い、インクルージョンが含まれますが、それすら希少な「美」として評価されています。
アンドラダイトの中には、他にもファイアーが見える鉱石が多く、
「レインボーガーネット」
と呼ばれ、珍重されています。ちなみに日本の奈良県でも採れます。
プレゼントには緑色を
「ガーネットなんて、持っていても自慢できない」
なんて思わないでください。ガーネットは誇らしい歴史を持つ高品質の宝石です。
加工の必要がないクラリティの高いルビーは「非加熱ルビー」として高級な天然もの扱いされるのに、もともと高いクラリティのガーネットを下に見る必要はありません。
超リッチな彼氏ができた時は、迷わず緑色の高級品をおねだりしてください。
いやほんと、ガーネットいいと思うんだよね~。
採掘量だけで見るんじゃなくて、モノをみてみて。