季節の暦「七十二候」によると、太陽黄経が100度になる日から5日間ほどを
半夏生(はんげしょう)
と呼んでいます。
太陽暦でだいたい7月2~6日くらいになります。
中国から伝わった暦なので、漢語で「半夏(はんげ)」と呼ばれる雑草が畑に出始める頃を意味する
という漢文になっています。
半夏は日本語ではカラスビシャクと言う草です。
ところが、一般に「半夏生」と聞くと、多くの人は違う草を連想します。
今回は、暦の「半夏」とは違う、「半夏生」の名で親しまれている植物のお話です。
湿地や水辺に広がる白い絨緞
半夏生の頃に咲き乱れる白い葉っぱ
丁度、暦の上の半夏生の頃、湿地や水辺に群生しているカタシログサという草が開花します。
日本に昔から自生している野草で、花の時期に花穂のすぐ下の葉だけ雪のように真っ白く変色し、まるで白い大きな花が咲き乱れているように見えるため、この時季の風物詩として人々の目を楽しませていました。
葉の先端のほうは緑色が残るように変色することが多いので
の意味も含め、咲く時季の暦と同じ名半夏生と呼ばれるようになりました。
私たちが連想する半夏生はだいたいこの草です。
群生地は全国に散見、観光名所にもなってます
湿気を好み、地下に広がる根茎で増えるので、湿地や水辺に群生することが多いです。
緑色の雑草地のような繁殖地が、この時季だけ急に真っ白い絨緞のように様変わりします。
飛鳥路や伊豆半島の自然公園などの群生地には、この季節半夏生を見に来る人がたくさん訪れています。
京都祇園の両足院も、庭の池の周りに植えられた半夏生が有名なお寺です。
強健で手間がかからない園芸植物
水が大好き、太陽も大好き
湿気を好み乾燥に弱い草ですが、日光も大好きで
水が近くて土が湿っているけれど日当たり良好な開けた場所
などによく繁殖します。
腰水にしても水に浸さなくても、根が水分をどんどん吸い込める条件があればどこでも順応して元気に育ちます。
元来強健で繁殖力が強いので、日が当たって水やりさえちゃんとすれば、他の手間はあまり必要なく、園芸植物として、街なかでも路肩のプランターや庭草として植えられているのを時々見ます。
丈夫で繁殖力があるのに減少ぎみ
そんな風に強くて育ちやすい種であるにも関わらず、自生の半夏生は近年減ってきています。
自然の湿地や水辺が開拓により減少しているせいです。
地域によっては絶滅しそうな所もあるとか。
梅雨のうっとおしい時期に、本格的な夏の訪れをいち早く告げてくれる、とても風流な在来の植物ですから、人の手を入れながらでも、残していけたらいいですね。
半夏生を育ててみよう
初心者でも簡単に育てられます
水辺でなくとも身近な場所で育てられる人は、栽培にも挑戦してみてください。
前述の通り、丈夫で手間いらずの草なので、初心者にも難しくありません。
園芸店でも買えますが、自生のものを抜いてきて植えてもちゃんと根付きます。
繰り返しますが、
乾燥は禁物
なので、土がいつも湿っているように気をつけて水やりしてください。
地面に植えるとあっという間に増えます。
玄関先や庭に直接植える時は、繁殖しすぎたら間引いてください。
根が広がりますから、鉢植えにする時はちょっと大き目なものにゆったり植えて、やはり増えたら間引いたり株分けしたりしましょう。
植栽時と開花前に肥料を入れますが、下記のように、成分とやり過ぎには注意しましょう。
失敗の原因は肥料に注意
ので、花をつけないと葉は変色しません。
時々、葉が白くならない、という失敗を聞きますが、そういう時は花穂がついていません。
花が付きにくくなる原因として一番多いのは、窒素肥料が過剰になっている場合だそうです。
ぐんぐん育つ種なので肥料もよく効き、あげるほど繁殖しますが、油粕などの窒素肥料をやり過ぎると、蕾がつかないことがあるそうです。
半夏生はドクダミ科なので、茎や葉を傷つけた時に、ドクダミっぽい強い匂いがしますが、生えているだけならそれほど匂いません。
増えたら分けて、屋内の窓辺などに小さい鉢植えを置いて楽しんでもいいですね。
白く映える時季はほんの短い期間ですが、季節感を存分に楽しめる半夏生を身近に置いて、おしゃれに夏を迎えてください。
初心者でも、育てることが出来るって良えな!
園芸に興味がある人は、半夏生から入ってみたら良えんとちゃうか?