お盆休み、いかがおすごしですか?
今年も猛暑や雷雨や熱中症の話題が尽きない夏でしたが、8月のお盆を過ぎると、
ヒグラシの声
が耳につくようになり、吹く風にも秋の匂いを感じるようになりますね。
夕暮れ時、雑木林のほうから響いてくる
というヒグラシの声は、炎天下に響き渡っていた
- アブラゼミ
- ミンミンゼミ
の趣とはまた違う、癒しの中になんとなく物悲しさも感じる、独特の感慨があります。
蝉の声は、日本の夏の風物詩として欠かせない音響ですが、土の中で一生のほとんどを過ごす蝉は、実はその生態の科学については、まだよくわかっていないことも多いらしいです。
神奈川県横浜市にあるテーマパーク
こどもの国
では、里山の自然の環境がいっぱいの園内に6種類の蝉が生息しているそうで、毎年その生態数などを綿密に記録しながら観察をしています。
林の中を飛び回る虫の生態数など、どうやって調べるのかと思ったら、園内隅々まで丹念に探して
蝉の抜け殻
を収集するのだそうです。
抜け殻から、蝉の種類や性別が判別でき、どんな場所でどんな蝉が多く羽化しているのかわかります。
今日は、そんな「蝉の抜け殻」にまつわるお話です。
縁起かつぎやおまじないに使われる蝉の抜け殻
空蝉[うつせみ]は現身[うつしみ]に相通ずる
蝉の抜け殻のことを古語で
空蝉(うつせみ)
と言います。
中世の頃から仏教が社会に根付いてきた日本では、仏教独特の死生観
輪廻転生
という考え方が広く知られていました。
人は、死んだらまた別のものに生まれ変わり、繰り返しこの世に表れ、命はあの世とこの世の間をずっと回っている、という考え方です。
今生きている世を現世といい、
と言います。
抜け殻を残して成虫になった蝉は、たった数週間の命であることから、空蝉は儚い一瞬の時の象徴のように捉えられ、現身と相通ずるもののように言われます。
繰り返す輪廻の中での現身は、困難も幸福も含めて、ほんの一時の儚い時間にすぎない、故に美しく尊いという日本独特の美意識
もののあわれ
に繋がっています。
蝉の抜け殻は縁起のいいおまじない
もののあわれを大事にする日本では、空蝉は縁起のいいものとして扱われている文化があちこちで散見されます。
家の外壁などにくっついている抜け殻を取って片づけようとすると、
とおじいちゃんやおばあちゃんから言われたことのある人はたくさんいます。
地方によっては、衣装持ちのおまじないに使われ
言われています。
枝や壁などに引っ掛かったまま落ちないでくっついているので、最近では受験のお守りにされることもあります。
頭に付けると頭がよくなる、というおまじないもあり、元アイドルのタレントさんが、頭にびっしり抜け殻をくっつけた自撮り写真をSNSに流して話題になったりもしていました。
実は食べられる蝉の抜け殻
蝉退[せんたい]は体を鎮める漢方薬
蝉の抜け殻は食べられるのですか?
という質問をする人がたまにいますが、実際に蝉も蝉の抜け殻も、中国や沖縄では食材として古くから食べられてきました。
アブラゼミは脂っこいのでアブラゼミと言われたとか。
また、抜け殻は漢方の生薬としても古くから使われています。
蝉退(せんたい)
と呼ばれ、解熱作用や鎮静効果があり、
- おできの化膿止めやかぶれのかゆみの緩和などの外用薬
- 解熱や赤ちゃんの夜泣き
- 発熱やのどの痛みを鎮める感冒薬
などの内服にも使われてきました。
蝉の抜け殻料理の究極は、ジャイアンシチュー?!
架空の世界ではありますが、藤子・F・不二雄先生の代表作品ドラえもんに登場するガキ大将“ジャイアン”が作る太陽系最強の殺人的ゲテもの料理
ジャイアンシチュー
には、必ず蝉の抜け殻が入っていることは、ファンにはよく知られているところだそうです。
子どもの頃、虫が怖くて触れない子も、蝉の抜け殻なら持てたのを思い出します。
羽化した後の蝶のさなぎや、孵化後のカマキリの卵も見たことがありますが、それらは別に持って帰りたいとも思いませんでした。
が、蝉の抜け殻には、何かわくわくするような
宝物感
がありましたね。
そっとポケットにしまっておいて、忘れて遊び過ぎ、潰れてしまって泣きべそをかいたことも、懐かしい思い出です。
蝉の抜け殻って、意外と奥深いものなのかもしれません。
セミの抜け殻って無性に集めたくなるやんなぁ~
まさケロンも小さい頃、50個ぐらい集めたことあるわ!