「梅暦」って知っていますか?
[ばいれき]とも[うめごよみ]とも読みます。
まだ寒い早春の時季に開花した梅の花を見て、「春が来たんだなぁ~」と感じることです。
季節の移ろいに敏感に反応し、自然の営みを愛でる文化の強い日本人にとって、寒さに耐えて凛と咲く梅の花は、美学心くすぐる天然のカレンダーだったのです。
あなたの今年の梅暦はもう訪れましたか?
梅の花の見頃時季と人気の名所
開花後半月から一か月半くらいが最も見ごろ
梅の花の開花時季は、最も早い沖縄県では1月の半ばくらい、東京では1月終わりから2月初めくらい、最も遅い北海道の網走市では5月中頃になります。
梅は桜と違って種類や個体によって開花期にズレがあり、開花期間も長いので、名所となっている梅園では、最初の花が開花してから2ヶ月弱くらい、観梅を楽しめます。
香りも花付きも見ごろとなるのは、開花後半月くらいしてからです。
関西では2月中旬頃から3月上旬頃まで、関東では2月下旬に入る頃から3月中旬頃まで、「梅まつり」の声が聞かれます。
遅咲きの種があれば、桜まつりの頃までまだ咲いているものもあります。
関西は梅の名所の宝庫
梅はもともと中国原産のものです。
遣隋使・遣唐使の時代、数々の中国の文化や物が到来した中に混じって、生薬としての梅の実と梅の木もやってきました。
特に、中国の唐の時代は「梅の時代」と言われるくらい、盛んに梅を愛でる文化が横行していました。
杜甫[とほ]や李白[りはく]などの名だたる詩人は、梅を題材に実にたくさんの漢詩を詠んでいます。
宮廷などでは観梅の宴も盛んに行われていました。
梅が伝わったばかりの奈良時代の日本は、何でも中国の影響を強く受けていました。
公家屋敷では梅を愛でる宴が行われ、万葉集の歌の中で萩に次いでたくさん詠まれている花は梅でした。
万葉の香りが残る近畿地方一帯では、京都御所や大阪城公園など1000本を超える名所だけでなく、200本、500本くらいの小さな梅林を伴っている神社やお寺や御苑もあちこちあります。
関東の名所といえば、全国でも一番人気「水戸偕楽園」
梅といえば偕楽園という程、全国でダントツの知名度と人気を誇る梅観どころです。
日本三大名園に名を連ねる広大な日本庭園には、100種3000本の梅が植えられています。
例年、2月下旬から3月下旬にかけて「水戸の梅まつり」が開催されています。
キャンドルライトで梅をライトアップする「夜梅祭」や庭園内で行われる茶会など、多彩な催しものが行われます。
古より続く梅を愛でる和の心
奈良時代は花見といえば梅のこと
前述の通り、奈良時代は公家の間では、早春に開花する梅の花を愛でる宴が流行っていました。
和歌だけでなく、能などの舞いや、家紋などの意匠の題材にも梅がたくさん使われるようになりました。
近代戦争の時代以降は、日本を象徴する花といえば「桜」のように言われていますが、古代・万葉の時代は花といえば「梅」だったようです。
今より自然環境が厳しかった時代、寒さを乗り越えて春一番に咲く梅への思いは、春爛漫の中での桜に対するものよりも、強かったのかもしれません。
天神様のシンボルも梅
天満天神として祀られている菅原道真は、平安時代、平安京で帝に仕えた貴族でした。
死後、学問の神様として祀られるほど、広く深く学問を修めた天才学者だった道真は、自然も愛する人でした。
平安京の屋敷に植えられていた庭木をとても大事にしていました。
ことに梅の木をこよなく愛していたことで知られ、天満宮のシンボルも梅となっています。
全国の天神様の神社の境内には梅の木があり、梅林が名所になっている所も多いです。
福岡の大宰府天満宮には、菅原道真ゆかりの伝説が残る樹齢1000年以上の梅の木も含め、6000本の梅が紅白の美しい花姿を競っています。
春の香りを感じに、梅を観に行きませんか
春の到来を知らせる梅の花には、「春告花」の別名もちゃんと付いています。
寒の戻りが来たり来なかったりしていた時季もだんだんに落ち着いてくる頃、家にこもりがちだった皆さんも、年度末の忙しさに突入する前に、ちょっとお近くの梅林まで足を伸ばしてみませんか。
梅の香にほっこりして、寒さに負けずに咲く姿に元気をもらいに行きましょう。
まだ寒いな~なんて思ってる時に、ふと開花した梅の花を見て「もう春かぁ~」なんて感じる。これを「梅暦(うめごよみ)」っていうんだね。
これから春がやってきますよ~って伝えてくれる梅の花、見てるとなんだか元気が湧いてくるね!