2015年現在、一時期よりは景気が上向いてきていると言われています。
が、雇用の不安定化が進み、社会保障がどんどん目減りしています。
今までのやり方では、企業も国の運営もやっていけなくなると、多くの人がなんとなく感じています。
政治や社会のしくみを変えていかないといけない、と思っている人も多いでしょう。
が、選挙に行く人の数は減っています。特に、未来の社会の影響をより多く受けるはずの20代30代の人たちの投票率の低さは、先進国の中でも底辺レベルです。
若い人たちはなぜ選挙に行かないのか
行かない人の本当の理由
若者の選挙についての意識調査が、様々な方面で行われています。
選挙に行かない人たちに理由を聞くと、政治や社会に対する無関心、無気力さが漂う言葉が連なります。
行かない理由ベスト5
- 忙しい、面倒くさい。
- よくわからない、興味がない。
- 自分が投票してもしなくても変わらない。
- 誰が当選しても同じ。
- 投票しても何もメリットがない。
NHKが2014年に大学生ら1万人に対し政治の授業の中で行ったアンケートに、若者の世界観の特徴を表わすデータがありました。
- 学生の76%が「今の生活に満足」と答えています。
- が、今の政治については68%が「満足せず」と答えました。
- にも関わらず、「今から10年後の自分は幸せだと思う」人が、やはり76%もいます。
- そして、54%の人は「日本はこの先良い国になると思う」と答えています。
これは決して、余程自分たちが作る未来に自信がある、ということではないようです。
『自分の幸せと政治は関係ない』と漠然と思っている学生が多いのです。
これがそのまま、「選挙は自分には関係ない」という無関心にも繋がっていそうです。
政治がダメだと一番しわ寄せが行くのは若者なんですが・・・
多くの選挙に行く大人は、この若者の思い込みが幻想だということを知っています。
政治が失敗した結果、経済が悪化し、失業率が上がり、若者が結婚できない・子どもを産めない社会になり、少子化が進むことで更により若い層の経済負担が増える、という状況が拡大していくことを、この30年の歴史の中で目の当たりに見てきました。
日本の若者の自殺率が、諸外国に比べて抜きん出て高いことも知っています。
そして、若者や子どもたちを支援するために使われる税金よりも、高齢者のために使われる税金のほうが何倍も多いのは、高齢者の投票率と投票者数が、圧倒的に多いせいだから、ということも知っています。
「政治が自分の幸せに関係ない」ことはあり得ません。
しかし、多くの若者は、それを伝えようとする大人の言葉に耳を傾けようとはしません。
若者を選挙に行く気にさせる環境
スウェーデンの試み
国政選挙の平均投票率が80%以上、20代でも70%以上を保っている国があります。
北欧のスウェーデンの若者の投票率と政治意識の高さは、世界でも目を見張るものがあります。
なぜそんなに意識が高いかというと、社会をあげて、子どもたちが民主主義について学び、社会参画を体験・体感しながら育つ環境を幅広く用意していることが大きく影響しています。
小さい頃から、ディベートを始め、民主主義のやり方で物事を進めていくプロジェクトを体験する学習が、学校の授業の中に取り入れられています。
中学・高校では、国政選挙が実施される度に「学校選挙」と呼ばれる模擬選挙が行われています。
生徒たちは有権者になるまでに、どんな情報を見てどう考え、どうやって候補者を選んでいったらいいのか、投票のやり方に至るまで、熟知してから大人になります。
日本の若者は何も知らないままいきなり有権者になる
一方、日本の学生は、現在進行形の政治や社会状況について
- どう捉えればいいのか
- 今、何が問題なのか
- 与党と野党のバランスは政策にどう影響するのか
- どういう政策が具体的にどう自分と関係してくるのか
- 100%考えの一致する候補者がいない時は、どうやって選べばいいのか
・・・・などなど、選挙で投票するのに必要な情報は、学校では何も教えてもらえません。
最近、一部の大学で模擬選挙の試みが行われ、また、NGOが未成年者に模擬選挙をやらせようとする動きもいくつかあります。
が、選挙に臨むまでに選ぶ力をつけるにはどうすればいいか、まで踏み込んでいるプロジェクトはまだほとんどありません。
これでは若者が「わからないから」選挙に興味もわかず、政治に参画することが億劫になり、漠然と「関係ない」と思うことで安心しようとするのも、無理はありません。
若者の投票率を上げたかったら、教育を変えていく所から始める必要があります。
投票率が上がることを本当は望んでいない政治家たち
政権の本音は「無党派層には寝ていてほしい」
しかし、日本では、選挙権を18歳からにしようと与党が提案しているにも関わらず、若者の政治意識を育てる教育に取り組む政策が出て来る気配も、政党が若者を対象にした政治集会に力を入れようとするそぶりもあまりありません。
現在の日本の選挙は、多くの高齢者の票によって結果が決まります。高齢者の票はそのほとんどが固定票です。
「組織票」と呼ばれるものも多いです。これらの票は圧倒的に現政権寄りです。
普段選挙に行かない人たち=浮動票は、棄権してくれたほうが与党には都合がいいのです。
若者は浮動票です。そして7割程が棄権します。
与党が選挙年齢を18歳以上にまで広げて若者を増やしたい理由、そして、若者の政治意識を高める教育を制度化しようとしない理由の裏には、そんな構図があります。
「投票しても何も変わらない」ことはない
政権が不動のものなら、投票率が下がっていく社会は変えられないのでしょうか?
近年、浮動票が動いて投票率が高くなった選挙があります。
2005年の郵政民営化選挙、2009年の政権交代選挙では、従来優勢だった勢力と新規勢力の逆転当選劇が日本各地で見られました。
この時の当選者と次点落選者の票差は全国で合計すると約650~800万人でした。
大まかな計算では、毎回20代30代の約1200~1600万人くらいが選挙に行っていません。
この数字を単純に考えれば、若者の投票率が平均投票率程度に高くなれば、その分の票だけで、選挙の結果を逆転することが可能な数になる、ということです。
投票で社会が変わるところを見たい人へ
「自分の1票だけでは変わらない」の本当に意味すること
浮動票の若者の半分が一斉に投票にいけば、「投票しても何も変わらない」ことはありません。
しかし、「自分ひとりだけが1票入れた所で何も変わらない」のは事実です。
が、選挙とは、そもそも自分1人で世の中なんとかするための仕組みではありません。
皆の意見で世の中を動かす仕組みです。
言い換えれば、投票する行為そのものだけで社会を変えるわけではない、ということです。
実は、選挙で一番大事なことは「誰に投票するか考えて、決めるまでの期間に何をするのか」という部分なんです。
- 何をどれだけ一生懸命知ろうとするか
- そのために、どれだけいろんな人の意見や情報を聞くか
- 聞いた結果、自分の意見をどれだけはっきりもつか
これらのことのために費やす時間や他者との関わりの中で、「自分1人の1票」が「みんなの大きな票」に変わっていきます。
それが、選挙で何かを変えるということの本質です。
それは、政党に入って特別な選挙運動をやる、みたいなことをしないといけないのか、という意味ではありません。
- 普通の生活の中で、いろんな人と普通に政治の話をすることです。
- ニュースを見て自分なりの感想や意見を考えたりすることです。
- 「ブサヨ」とか「ネトウヨ」とか言って他の人の口を塞ごうとしないことです。
- 共感できる意見を言っていた人に「イイネ」するだけでもいいんです。
- 皆が気軽に、どんな意見でも質問でも、言いやすくなる雰囲気を作ることです。
それだけのことで、共感の輪が広がり、1票が1票でなくなります。
若者の投票率を上げたいと思っている人へ
現在の日本の政治の構図は、残念ながら、若者の選挙離れが権力者に都合よく働く仕組みになっています。
しかし、このまま自民党一人勝ち政権がずっと続くことを望む人にとっても、先々高齢者の固定票が減っていけば、50歳未満の人たちの“棄権頼み”だけて勝ち続けるのは、いくらなんでも不安定過ぎでしょう。
若者を参画させるように仕向けていくことが、未来へ向かっての必須の課題です。
しかし、アイドルを使って投票を呼び掛けたり投票所で景品を配ったりして「釣ろう」としても、正論を説いて棄権する若者を批判しても、彼らはちっとも選挙に行く気にはなりません。
若者自らが関心を持つようにするためには、やはり彼ら自身が政治について考えたり人と話したりする体験を重ねていくしかないのです。
だからと言って、「自分の1票が皆の大きな票に変わる」選挙の意味をとうとうと説教して、「普段から政治の話をするようにしよう」と言ってもだめです。
「投票するのも面倒臭いのに、そんなこと強制されるなら選挙なんてやりたくない!」と引かれてしまいますよ。
若者に政治に関心を持ってもらいたいと思うのならば、まず、周りの大人のあなたが、
- 日々の生活の中で、政治のことを身近に考えるようにすることです。
- 周りの人に押し付けず、説教がましく思われない言い方で語ることです。
- 軽いノリでサラっと自分の思うことを話せるように、少しずつ努力していきましょう。
- 仲間内で政治の話題をする人がちょっと浮いていても、YK扱いしないようにしましょう。
- 「イイネ」も積極的に押しましょう。
1票を1票でなくする積み重ねの先にしか、若者たちだってつながってはこないのです。
1票を1票でなくするために。さぁ、みんなも「イイネ」を押していこう!