「ふるさと納税」が話題になっています。
メディアでも、各地の特産品がお礼にもらえて「こんなにお得!」と絶賛。
お得といっても、それを「お得だ」と思うかどうかはご本人の価値観次第で一概には決めつけられない部分も。
「そもそも、寄付なのにお礼を求めていいものか」
という意見もあるようです。
どんなこともそうかも知れませんが賛否両論のふるさと納税。
お礼ばかりがクローズアップされていますが、ここでは「何に対して寄付をするのか」というところに注目していきたいと思います。
ふるさと納税、おさらいしましょう
ふるさと納税、3つの意義
「ふるさと納税」って聞いたことはあるけど何なの?という方の為に簡単にご説明します。
- 納税者が寄付先を選択する制度。
- 生まれ故郷、お世話になった地域、今から応援したい地域の支えにもなれる制度。
- 選んでもらえる地域になれるよう、その地域の在り方を見直すきっかけにもなる制度。
お礼ばかりが注目されているけれど
要するに
と政府から言われているようなものなのです。
ただ実際には「使い道」より「お礼の特産品」で選んでいる人が圧倒的。
そうなると、どうしても自治体もお礼の商品に力を入れてしまうことになるので、本来の目的意識が薄れつつあるような気がします。
6つの手順で申し込み
この「ふるさと納税」をすることによって、所得税控除額、住民税控除額ともに2,000円を超える部分が対象となり、つまり2,000円の負担でその自治体に貢献した上に特産品までget出来ちゃうというから人気が出るのも頷けます。
「ふるさと納税」の方法は簡単。
- 寄付する自治体を選択。
- 殆どの場合、申し込みはインターネットから。
- 入金はインターネットによるクレジット決済or郵送されてくる振込用紙での入金。
- 自治体が入金を確認、その後希望した特典が届く。
- 寄付受領書が届くので保管しておく。
- 確定申告をすると、控除・還付が受けられる。
ワンストップ特例制度がスタート
こういう手順だったのが平成27年4月1日以降の寄付からは、確定申告が不要になる「ふるさと納税ワンストップ特例制度」なるものがスタート。
寄付した先の自治体から、現在居住している自治体に直接連絡がいく為、確定申告が不要なのです。
但し、全てのケースが適用される訳ではありません。まずは「ふるさと納税」先が5つ以上の場合と、ふるさと納税の有無にかかわらず確定申告を行なう人はこれまでと同様に申告が必要となります。
詳細は「ふるさと納税」のHPにて御確認下さい。
確定申告をしない人が多い!
何だかすごく素敵な制度に見えてしまう「ふるさと納税」なのですが、良く知らない、調べないで利用してしまうと、こんな一面も…。
- 回数制限のある自治体に何度も寄付してしまう
- 話題の特産品、人気商品は売り切れ続出で数か月~1年待ちという物も
- 特産品が届いて満足♪ その後確定申告忘れるケースも続出(お得感ゼロ)
実際に確定申告までちゃんとした人が30%というから驚き。
それじゃあ、普通の通販と変わらなくなってしまいます。そんなこともあって「ワンストップ特例制度」が生まれたのでしょう。
使い道にご注目
どんな使い道に寄付する?
お礼の特産品に目が向いてしまいがちなのは仕方ないことかも知れませんが、本来は「どの自治体のどんな使い道に寄付をするか」が目的。
地域によってそれぞれ特色があり、また珍しい内容もありで、是非こちらもチェックすることをおススメします。
例えば山梨県の場合
まずは「山梨県ふるさと納税」のサイトを開き、「ふるさと応援サイト」へ。
その中の「ふるさと納税はこう活用します」という内容を見ると、ここでは山梨県の取り組みが表示されます。
その中から、「これ!」と思える取り組みをチョイスして申し込みを行なうというシステム。
山梨県では世界遺産でもある
「富士山の保全、環境美化に関する取り組み」
という項目もあり、その地域ならではの使い道が分かるようにもなっています。
都道府県単位のみではなく、市区町村でも行なっています。
自然環境保護に関する使い道
北国から~こんな取り組みやっています。
北海道室蘭市
「ネーチャーウォッチング基金」
イルカ・クジラウォッチングなどの自然環境事業。
北海道夕張市
「幸福の黄色いハンカチ基金」
夕張市の地域再生や福祉、映画ロケセットの施設保全。
北海道沼田町
「雪エネルギーの活用、普及および研究事業」
新潟県津南町
「豪雪でも安心して暮らせるまちづくり」
高齢者世帯等除雪援助事業、冬期高齢者集落維持支援事業など。
雪を何かに利用できれば、豪雪地帯の悩みも解消できるのかも知れません。
除雪作業で命を落とす高齢者が増えているので、人手も十分に確保してほしいものです。
オランダ村の再生も
長崎県西海市
「オランダ村を救おう」
旧長崎オランダ施設の再生を図ります。
この「オランダ村」という施設、「ハウステンボス」が出来る前はこの地域のメインな観光施設だったのです。
長崎県とゆかりのあるオランダの街並みを忠実に再現し、長崎県の目玉スポットだったといえるでしょう。
しかし「ハウステンボス」が開業してからは来園者数が激減し2001年に閉園。
その後も再生を図る取り組みが模索されたものの、なかなか上手くいかず現在に至っているというワケなのです。
山も海も豊かな和歌山県
和歌山県
「大切なふるさとの森を守り育てます」
和歌山県の県土の77%は森林。古くから「木の国」と呼ばれた和歌山県の森林を守り育てる取り組み。
和歌山県串本町
「ラムサール条約登録海域の保全および活用」
美しいサンゴ群を有する豊かな海を守り活用する事業。
ラムサール条約とは「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」です。
自然環境を守り、人も守る
長野県
「山を楽しむ皆さんの安全対策」
登山道、遊歩道の整備や遭難防止対策の充実。
長野県はアルプスを始めとし、山や森林等の自然環境を守るための事業が多くなっています。
鳥取県鳥取市
「鳥取砂丘の自然環境と景観の保全 活性化に関する事業」
近年の環境変化で砂の移動が失われ草原化が進行。
美しい砂丘を取り戻すための砂丘の再生に取り組んでいます。
京都府福知山市
「千年先を見通して後世に語り継ぐことのできる市民参加の森づくり」
ケヤキの千本植樹や森林インストラクターの養成とその活動支援など。
動物のための取り組みもあります
北海道鶴居村
「特別天然記念物タンチョウの愛護に関する事業」
埼玉県鴻巣市
「コウノトリの里づくり基金」
コウノトリの飼育、野生復帰を可能にするための環境作りを推進。
北海道紋別市
「アザラシの保護活動、オホーツク海の海洋環境に関する事業」
広島県神石高原町
「2020年に犬の殺処分ゼロに!」
ドッグトレーナーによるしつけ、獣医師によるワクチン接種などの健康管理を経て、新しい飼い主を募集します。
スポーツ関係にも注目
アスリートの育成
北海道東川町
「こどもプロジェクト オリンピック選手育成事」
ノルディックの選手を育成。またクロスカントリーコースの整備事業も行なっています。
福島県富岡町
「世界で活躍するスポーツスペシャリスト育成事業」
バドミントン、サッカー、ゴルフ等、全国から募集した中高生を育成する事業。寮生活で心身もサポート。
スポーツの環境だって大切です
神奈川県箱根町
「箱根駅伝歓迎事業」
歓迎行事の実施、往路優勝校への記念品贈呈など駅伝への各種協力をするための事業。
真冬のお正月が熱くなる箱根駅伝、手に汗握って見ています。
高知県安芸市
「スポーツキャンプのまちづくり」
阪神タイガースのキャンプ地とである安芸市では、球場施設等を活用したスポーツキャンプのまちづくりに取り組んでいます。
兵庫県西宮市
「ふるさと西宮・甲子園寄付金」
甲子園球場の周辺の環境整備などに活用。
三重県鈴鹿市
「モータースポーツの振興」
鈴鹿サーキット周辺の整備を行ないます。
大阪府東大阪市
「ラグビーのまち 東大阪の推進」
全国高校ラグビーフットボール大会を全面支援。近鉄花園ラグビー場運営補助金の交付など。
歴史や伝統を受け継いでいくために
源氏物語の舞台
京都府宇治市
「源氏物語のまちづくり」
世界最古の長編小説といわれる源氏物語の最後を飾る宇治十帖の主要な舞台となった地域。
- 古跡をめぐる「宇治十帖スタンプラリー」の実施。
- 「宇治市源氏物語ミュージアム」を開館。
- 「源氏物語散策の道」の整備。
- 「宇治田楽まつり」の開催
などに取り組んでいます。
たくさんある歴史と伝統を継承する取り組み
石川県金沢市
「将来を担う人材の育成」
金沢箔をはじめとした伝統工芸品産業、能や素囃子、加賀とびなどの伝統芸能の継承・保存・後継者づくり。
兵庫県太子町
「聖徳太子ゆかりの歴史を継承し、地域文化を振興する」
兵庫県姫路市
「世界文化遺産 姫路城の保存、継承」
日本一の城とも言われています。
広島県広島市
「平和の推進」
核兵器の廃絶と世界恒久平和に向けた取り組み。
原爆展の開催、修学旅行生への被爆証言講和などを行ないます。
被爆証言講和を行なえる人が年々減ってきています。
風化させてはならないことだけに、継承していくことが大きな課題になってくるのかも知れません。
山口県萩市
「萩まちじゅう博物館推進事業」
文化財の保護、歴史的町並みの整備などへの取り組み。幕末の志士の足音が聞こえてきそうな町並みです。
奈良県
「観光の振興」
奈良の鹿の保護や若草焼き、世界遺産の活用。
300年、400年と受け継がれてきたもの
大阪府岸和田市
「約300年の歴史を誇るだんじり祭りの振興」
に関する事業。見ている方はハラハラドキドキの勇壮なお祭りです。
佐賀県有田町
「有田焼創業400年祭記念事業」
日本の陶磁器の歴史を創ってきた有田焼を更に発信していくための取り組み。
東京都新宿区
「夏目漱石記念施設整備基金」
新宿区は漱石が生まれ育ち、そしてその生涯を閉じた町です。
生誕150周年にあたる平成29年2月の開館を目指し、記念館の整備を進めています。
岐阜県高山市
「飛騨高山の町並みと祭礼を世界文化遺産登録にチャレンジしたい」
そして古い町並みや貴重な文化財を守る取り組み。
こちらは期間限定で募っています
富山県高岡市
平成30年3月末までの期間限定
「平成の御車山制作」
高岡地域の名工、職人が一体となって伝統工芸技術を駆使して平成の御車山を完成させる取り組み。
御車山とは天正16年秀吉が後陽成天皇を聚楽第に招待した時に用いられた御所車を前田利家が拝領したものと言われています。
それを2代目利長が高岡に築城する際に城下の町民に与え、それ以来手を加えながら受け継がれてきたものなのです。
豪華絢爛、必見です。
妊娠から子育てまで
子ども達の笑顔が見られる取り組みです
秋田県美郷町
「ホンモノとの出会い感動最大限!!~ドリーム体験!ほんもの講座」
第一線で活躍するアーティストなどを招いて、子ども達を本物の芸術文化に触れさせる取り組み。
「自分らしく、キラキラと輝く~各種大会支援」
様々な大会へ参加する子ども達を支援する取り組み。
野球、バレー、バドミントン、ソフトテニス、マーチング等。こういう取り組みが、子どもの才能を開花させるきっかけになるんです。
京都府木津川市
「子ども達に貴重な夢や体験をあたえてや」
中学生海外派遣事業や宇宙飛行士体験など。
普段は出来ない体験を通して、子どもの夢は更に大きく膨らみます。
北海道下川町
「青少年育成事業」
葛西紀明などのジャンプ選手を輩出した町。選手の育成、図書購入などの取り組み。
千葉県千葉市
「社会福祉基金」
児童養護施設等に入所している子ども達が使用する学用品、スポーツ用品等の充実のため。
施設の子ども達だからこそ、出来るだけ不自由のない生活を送ってほしいと思います。
医療体制もサポート
大阪府泉大津市
「安心して子どもを生み育てられるまちづくり事業」
ハイリスク分娩が増える傾向にある近年、住民が安心して分娩し子育てできる環境整備を行ないます。
三重県
「新生児ドクターカーの運営」
新生児ドクターカーとは、新生児を治療しながら搬送するために高度な医療機器を装備。
ドクターも同乗できる新生児搬送用の救急車。
新生児死亡率の低下や障害、後遺症の重度化防止を目的としています。
埼玉県さいたま市
「小児救急医療事業」
「産科医等確保支援事業」
難しい分野ですが、少子化対策の基本でもある喫緊の課題です。
岡山県美作市
「不妊治療支援事業」
不妊治療を行なう夫婦を対象に治療費の一部を助成。
心身ともにストレスを伴う不妊治療。だからこそ経済面での支えは有難いものです。
個性のある取り組みも
ベンチに自分の名前が!くまモンの将来を保障!?
広島県広島市
「市民ふれあいベンチの設置」
河岸緑地と平和大通りに寄付者のネームプレートを取り付けたベンチを設置する取り組み。
自分の名前がベンチに刻まれるんですね。
熊本県
「くまモン応援分」
100年後も愛されるくまモンを目指す取り組み。
沖縄県沖縄市
「ミュージックタウン応援」
音楽の産業化、人材育成、地域の活性化を図る取り組み。
沖縄出身のミュージシャンはレベルが高いと大人気。
香川県
「さぬきうどん」
県産小麦のブランド化と生産振興を図る取り組み。このうどんは日本の宝と言えそうです。
もったいない運動だけど、寄付はしてね
栃木県宇都宮市
「もったいない運動の推進事業」
もったいない運動とは、「もったいない」という日本特有の言葉を再認識して、「人や物を大切にするこころ」を活動や取り組みの基本とし、その精神が市民の日常生活や事業活動の中で行動に結び付くよう推進されているものです。
海外でも人気、ガタリンピック
佐賀県鹿島市
「ガタリンピックの開催」
鹿島の一大イベントとして今後も継続していくための活動。
ガタリンピックとは、有明海の干潟の上で泥んこになって行なう運動会。
1985年に第一回がスタートしました。
個人種目、団体種目があり、干潟の上に設置された板の上を自転車で渡る競技やターザン、女相撲、小さい子どもでも楽しめる宝探しなどもあります。
外国からの参加も多い人気の高いイベントです。
心に訴えかけています
何だかちょっと印象深いタイトルをつけている自治体があります。
青森県佐井村
「地に足をつけた基盤整備を進めます」
これは道路、交通、通信体制の整備の取り組み。
そしてもうひとつ…
「生まれて、生きてよかったと実感できる村にします」
こちらは保健、福祉、医療の充実の取り組み。
じわっと心に残るタイトルです。
この国の未来へ
ここで紹介したのは、ほんの一部。
「ふるさと納税」の寄付金の使い道は、まだまだたくさんあります。
自然環境の保護や子育て支援、高齢者が安心できる町作りなどは殆どの自治体が行なっている取り組みです。
殆どの自治体が行なっているということは、この国そのものが行なっていると言ってもいいでしょう。
「ふるさと納税」はこの国を見つめ直し、その未来をより良い方向に導いていくことに繋がるものなのかも知れません。
100年後も愛されるまさケロンを目指すふるさと納税もそのうちできるかな〜。