最近時々見かける街なかでの猫の不審死事件のニュース・・・・屋外に自由に出かけられる環境で猫ちゃんを飼っている人には、気が気ではないですね。
社会や周囲への不満や不安が、身近な小動物の虐待という方向に向いてしまう人たちは、昔から少なからず発生していました。
心配な人は、もう、猫ちゃんを家から出さないようにするしかない、と思うかもしれません。
が、家の中なら安心安全か?というと実はそうでもなかったことを突き止めた研究が、2015年4月に海外の専門筋から相次いで発表されました。
家の中で、しかも大好きな飼い主さんの日常的な行為の中に、猫ちゃんの命や安全を脅かす危険が隠れていた、というちょっとショッキングな報告です。
肩こり・腰痛・筋肉痛の薬が大事な家族の命を奪う
アメリカの家庭で相次いだ猫の不審死
4月17日、アメリカ政府の食品医薬品局(FDA)が発表した安全情報に、自宅でペットを飼う人たちへのドキッとするような呼びかけがありました。
ある2ヶ所の家庭で飼われていた複数の猫に、腎不全や食欲不振、無気力、嘔吐、血便などが見られ、そのうち3匹が死亡したそうです。
突然の不審死の原因を究明しようと、死亡した猫を解剖した結果、「フルルビプロフェン」という非ステロイド性消炎鎮痛剤の中毒が死因であることがわかりました。
患部や薬のついた指を猫ちゃんがペロペロすると大変!
「非ステロイド性消炎鎮痛剤」というのは、運動した後の腕や肩やふくらはぎなどにスプレーしたり塗ったりすると気持ちいいアレです。
日本でも、このフルルビプロフェンが入った湿布や塗り薬がたくさん売られています。
非ステロイド剤は、規定の使用量を超えて使うと人間でも中毒症状が出る物質ですが、猫などの小動物にとっては、ごく少量でも死んでしまうかもしれない劇薬になります。
猫に直接湿布を貼る飼い主さんはいませんが、自分自身、肩こり・腰痛・筋肉痛を和らげるためにこれらの薬を使っている人は多いでしょう。
足の疲れを取るのに、家に帰ると土踏まずやふくらはぎにに湿布を貼ってくつろぐ人もいます。
薬を塗った患部や、湿布のビニールを剥がした指についた薬剤成分を猫ちゃんがうっかり舐めたりすると、それこそ猛毒をもられたのと同じことになります。
FDAは、飼い主に対して、医薬品をペットの届かないところに置くことや、お医者さんに塗り薬を塗った箇所を覆う相談をすることなどを呼びかけています。
高齢の猫はカンカン・キンキン・カチャカチャ音で豹変する
FARS「猫科動物聴覚原性反射発作」・・・ん?
4月27日には、国際猫医学界(ISFM)の学会誌に、高齢の猫と音の関係を表わす論文が発表されました。
これは、イギリスの慈善団体「インターナショナル・キャット・ケア(ICC)」に寄せられた猫の異常な発作の報告がきっかけとなって始まった研究でした。
調べると、多くの飼い主さんたちのもとで、飼い猫のけいれん発作などの原因がわからず、獣医師たちも判断を下せないでいる例があることがわかりました。
世界中から寄せられた飼い主さんたちのアンケート調査のデータを調べ上げた結果、
ことがわかりました。
「猫科動物聴覚原性反射発作(FARS)」と名付けられたこの症状は、特定の音を聞くことによって、体の動きが突然停止する場合もあれば、短時間のけいれんを引き起こすこともあり、時にけいれんについては数分間継続する可能性もあるそうです。
ちょうど人間の「てんかん」発作に似た症状で、一時的な意識消失が起きた例もありました。
発作の引き金となる音
「ある種の甲高い音」とは、キンキンした金属音のようなものが多いようです。
論文では、
- 鍵の束をチャリチャリ鳴らす音
- アルミホイルをクシャクシャ丸める音
- 金属スプーンで餌の皿をカンカン打つ音
- コンピューターのキーボードを叩く音
- 金づちで釘を打つ音
- 舌打ちする音
などが例として挙げられています。
この論文を紹介した記事を見た人たちのネット内でのつぶやきの声を見ると、かつて飼い猫に口笛を吹くと、異常にフーッと威嚇反応を示したことがあった、などという体験談も寄せられていました。
要因や治療法はまだ解明されず、研究中
調査によると、雄雌や純血種・雑種の別なく起きていて、症例となった猫たちはみな10歳を過ぎた高齢猫でした。
シャム猫に似た品種「バーマン」という種類の症例が比較的多いので、遺伝的要因も考えられ、研究チームは現在原因遺伝子の解明に取り組んでいます。
猫はもともと狩猟本能があり、ネズミ類の鳴き声を超音波まで聞き分けることができます。
特に高温だけよく聞こえる能力があるために、高齢になってそんな過敏反応症状が起きてしまうのではないか、という見方もされているようです。
中には、人間の抗てんかん剤「レベチラセタム」という薬が効いて発作を鎮められたケースもありました。
発症を防ぐには、今の所、原因となる音を聞かせないように配慮することしか手立てがないそうです。
が、具体的にどの音が引き金になってしまうかは、猫によって微妙に違っています。
そろそろ10歳になるくらいの猫の飼い主さんとしては、いったい何の音に気を付ければいいのか、戸惑ってしまう人もいるでしょう。
やたらに試してみて、いきなり後遺症がでるくらいの大きな発作なんか起こされても困ります。
過剰に神経質になりすぎず、猫ちゃんたちを思いやる
現代人は、多かれ少なかれ肩こり・腰痛・筋肉痛に悩まされる経験を持ち、家庭に湿布薬や筋肉消炎スプレーのひとつやふたつが置いてあるのは当たり前です。
また、日常生活においてカンカン・カチャカチャ音を出すものなど無数にあります。
薬については、重々気をつけて遠ざけることができるかもしれませんが、音はなかなか抑制しきれない場合もあるでしょう。
大きな音をいきなり出さないよう気をつけることはできるでしょう。
が、パソコンのキーボードのカチャカチャ音くらいで発作がおきてしまうとなると、普通に生活することが怖くなってしまいそうです。
もう何をするにも抜き足・差し足・忍び足、ひそひそ声で、まるでナチスに隠れて屋根裏で暮らすアンネのようにビクビクとしてしまうかもしれません。
しかし、それでは逆に飼い主さんにストレスが溜まり、イライラから猫ちゃんに当たってしまったり、無気力な鬱状態になって世話を放置したりするようになっては、元も子もありません。
長年一緒に暮らしてきた猫ちゃんが、安心して年をとっていけるためには、飼い主さんが幸せそうに遊んでくれることが、何より嬉しい生きがいになります。
過剰に神経質になりすぎず、猫ちゃんとのいい家族関係を保ちながら、お互いを大事にしていけるといいですね。
猫ちゃんには、人とは違う「毒」があったり、人とは違う「音」があるんだ。
出来る範囲のことをしてあげて、一緒に長生きしよう!