だいぶ認知度は高くなり、殆どの人が耳にしたことがある筈のジェネリック医薬品。
でもそれがどんな医薬品であるかを正確に知らない人が意外と多いのです。
先発医薬品のことを「新薬」と呼ぶせいかも知れませんが、ジェネリック医薬品を「古い薬」や「中古の薬」と思い込んでしまっている人もいます。
病院にかかる可能性がある以上、自分とは関係ないことではなくなったジェネリック医薬品。
大切なことだからこそ、正しい知識を身に付けておきましょう。
先発?後発?一体、なに?
医薬品とひとくちに言っても
医薬品はドラッグストアなどで店頭販売されている「一般用医薬品」と、医師から処方される「医療用医薬品」に分けられ、この医療用医薬品の中に「先発医薬品(新薬)」と「後発医薬品(ジェネリック医薬品)」があるのです。
先発医薬品のことを「新薬」と呼ぶことで、ジェネリック医薬品が「古い薬=効果が薄れてしまっている」という誤ったイメージを持っている人がいます。
「新しい方がいい」という理由からジェネリック医薬品をNGにしてしまう人もいるのです。
それは全くの誤解!一旦リセットして、医薬品に対する正確な知識、情報を入れ直しましょう。
先発医薬品とは
まずは「先発医薬品」を知ることからスタート。
先発医薬品とは10年~15年かけて開発された新薬のこと。
開発されるまでの費用は数百億円とも言われています。その先発医薬品を開発した会社は、特許によって権利と利益が守られます。
この特許権の存続期間満了までが原則20年。最大で25年となっています。
ジェネリック医薬品が安い理由
その期間が過ぎると、ほかの製薬会社も同じ有効成分を使った薬を製造販売出来るようになります。
これがジェネリック医薬品(後発医薬品)なのです(ジェネリック医薬品がない薬もあります)。
先発医薬品によって、安全性や有効性が確認されている成分を使用しているので、ジェネリック医薬品は開発されるまでに3年程度しかかかりません。
当然費用も抑えられることから、価格も安くなるという訳なのです。
この価格が安くなるということが大きなポイント。
高齢化社会に伴い増大する国の医療費の削減、そしてもちろん患者さん本人の負担額も抑えられるということなのです。
ジェネリック医薬品の問題点
安くなるって、どれくらい?
実際に処方箋を持って薬局へ行って聞いてみれば分かることなのですが、忙しそうにしている薬剤師にはなかなか聞きにくいもの。
そんな人の為に日本ジェネリック製薬協会のサイトでは、先発医薬品とジェネリック医薬品の差額をサクサク計算してくれる
「簡単差額計算」
というページを設けています。
薬の製品名と1日の服用数(量)、処方日数を入力するだけ。
3割負担、1割負担のそれぞれの金額を表示してくれるだけでなく、1年間でどれくらいの金額になるかまで計算してくれるのです。
これは参考になるので、ぜひ一度試してみてほしいと思います。
考え方が左右する
アメリカやイギリスではジェネリック医薬品のシェアが60%を超えるほど、その利用者が多くなっています。
日本ではジェネリック医薬品に対する認知度が今ひとつで、10代~50代には理解している人の割合が多いのですが、薬の使用が多くなる60代~90代の人達は「医師が決めた薬を変えるべきではない」と考える人が結構いるようです。
薬剤師にもリスクが…?
確かに薬局側にも強く薦められない理由のひとつにそれがあります。
医師が処方した薬を薬局で「変更する」というのは、薬剤師がリスクを負うことに繋がる可能性もあります。
ジェネリック医薬品を推奨するには、それを裏付け出来るデータ等があればいいのですが、現状ではまだありません。
薦める為には
ジェネリック医薬品に変更することに伴うリスクを誰が負うのかも曖昧な為、積極的に薦められないでいるケースもあるそうです。
「この医薬品は、ほかの医療機関ではどれくらい使用されているのか」
といった、ジェネリック医薬品の全国もしくは自治体レベル等などでの使用状況を、薬局や医療機関に情報提供してくれるシステムがあれば不安も解消されてくるのではないでしょうか。
ジェネリック医薬品は在庫を増やす?
そしてジェネリック医薬品のもうひとつのデメリットが在庫の問題。
薬の種類が増えれば、それだけ薬局が多くの在庫を確保しなければならなくなります。
また、いつどんな症状の患者さんが来るか分からないので、需要が少ない薬だからといって置かない訳にもいきません。
更には多くのジェネリック医薬品メーカーが参入したことにより、その販売競争も激化。
売れないと分かると、急に製造を中止するメーカーもあって、現場の薬局側は混乱する事態に。
これらによって在庫過多になってしまっている薬局が増えているのです。
実行しなくちゃ始まらない
医療費の抑制に
この薬局の問題も含め、ジェネリック医薬品を上手く使っているのが広島県呉市。
市町村国保としては全国で初めて「差額通知」を行なった自治体です。
呉市では少子高齢化の進み方が著しく、医療費の支出が増大。
これが市の財政を圧迫し、財政破綻の危機に直面しました。
このままでは膨らみ続けてしまう医療費を抑える為に、ジェネリック医薬品の普及を積極的に進めることにしたのです。
理解しようとする姿勢
ジェネリック医薬品に切り替えることによって、一定以上の医療費の負担軽減効果が見られる人に「ジェネリック医薬品促進通知サービス」を実施。
「あなたの使っているお薬をジェネリック医薬品にすると、これだけの差額が出ますよ」
という通知が届くというシステム。
この地域でも例外なく、高齢者はジェネリック医薬品に対する慎重論が強い傾向があったものの、
という老人クラブの代表のひとことで空気が一変。ジェネリック医薬品に対するイメージを変えるきっかけになったそうです。
県の薬剤師協会が薬局をフォロー
ジェネリック医薬品への理解が進み、利用者も増えてくると、どうしても薬の在庫が増え、薬局側もその管理が大変になってきます。
それを県の薬剤師協会による備蓄管理システムを使って、近隣の薬局から医薬品の調達をすることが可能な仕組みを作り、無理な在庫を抱える必要がなくなりました。
1億円も!?
通知サービスがスタートしたことによって、自分の薬代の差額を知り、それをきっかけにジェネリック医薬品に切り替える人が多くなったこと。
また併せてレセプトの電子データベース化なども行なった結果、平成22年度の医療費は取り組み前の医療費より1億円以上の削減に成功。
自治体と市民が一丸となって成し得たことと言えるでしょう。
出来ることから
高齢化が急速に進む日本にとって、医療費の節約は大きな課題。
そうはいっても、医療の質を落としてはいけません。
専門的な分野になってきてしまうので、素人には判断出来ない部分が多いのも事実です。
でも自分の保険証等に「ジェネリック医薬品希望シール」などを貼って、医療費の節約を促すことなどは、私達が今すぐにでも出来ること。
特に生活習慣病などで継続的に薬を服用する人はぜひ薬局で相談することをおススメします。
質は落とさず、無駄を省ける取り組みを考え、それをカタチにしていく努力を国全体で進めていくことが急務だと言えそうです。
ジェネリック医薬品は「古い薬」ってわけじゃなくて、先発医薬品の特許権が期間満了してつくられたものなんだね。
まさケロンはガンガンつかっていくよ〜。