幼稚園や保育園に通っていた頃、手の洗い方を懇切丁寧に教わりませんでしたか?
「バイキンは水でジャブジャブ流しただけでは落ちないから」
と、丁寧にきちんと洗うことの重要性をしつこく教わった人は、少なくないでしょう。
小さい時、流しの前で石鹸の泡をたくさん飛ばしながら、時間をかけて手を洗っていませんでしたか?
それが、おとなになるにつれ、だんだん丁寧な手洗いが面倒臭くなる人が多いようです。
適当に洗っても洗わなくても、誰にも怒られなくなると、手抜きがすっかり当り前化して、いつしかそれが“フツー”になっていきます。
全然綺麗になっていないのに、自分の中では「ちゃんと洗っている」つもりになっているおとなが、実はとってもたくさんいるようです。
日本人の手の洗わなさ加減が衝撃的だった件
手、どのくらい丁寧に洗いますか?
私は自分では比較的大雑把な人間だと思います。が、手洗いに関しては、
「石鹸を良く泡立てて洗わないと、バイキンは落とせない」
という“三つ子の教え”が、よほど強く心に沁みついてしまったようです。
外出やトイレの後はもちろん、ドアノブやパソコンのキーボード、お金など、手で触られることが多い物を触れた後は、石鹸を十分に泡立てながら丁寧に手を洗う習慣が、おとなの今でもずっと続いています。
しかし、社会に出てオフィスや商業施設などのトイレに入った時に、他の人の手洗いの様子を見ると、石鹸を泡立てて洗っている人がほとんどいないことに気付きました。
まず皆さん、ほぼ石鹸は使いません。使っても泡立てません。だいたい3秒くらい流水の下に手をかざして、手のひらを数回こすりあわせるだけ、というのが平均的な手の洗い方のようです。
1秒くらい手先だけぬらして、パッパッと水を切っておしまい、という人も決して珍しくありません。
丁寧に洗うのは恥ずかしい?
トイレの後には丁寧な手洗い、という感覚が“フツー”になっていた私には、これは衝撃的なことでした。
私は女性なので、女子トイレの様子しかわかりませんでしたが、男性でもだいたい同じなのでしょうか・・・。
噂によると、女性は手荒れしやすい人が多く、できるだけ石鹸で手洗いしないように気を付けている、なんてことも聞きますが、だとしたら、料理する時や食器を並べる時も、その程度しか洗っていないっていうこと???
私の周囲の女性だけが特別なわけでは、多分ないと思われます。
以前何かのTV番組で、モニターの人たちに手を洗ってもらう実験をしていました。
やはり9割方の人が石鹸を泡立てることなく、手のひらでちっょとヌルヌルを広げるだけですぐ流していました。
女性は確かに、荒れやすい手の甲は濡らすだけで済ます人が多数でした。
やっぱり石鹸泡立て派は一般的ではないようです。
別の街頭インタビューの中では
「トイレの後丁寧に手を洗っていると『大きい方したんだ』と思われそうで恥ずかしい」
と答えていた女性もいました。
「手を洗わないことのほうが恥ずかしい」
という感覚が一般的ではないことにもまた、愕然としました。
感染症の予防と手洗いの関係
手を洗う習慣の有無と風邪のかかりやすさは比例する?
私が会社の手洗い光景を見て気付いたことは、もうひとつありました。
ちなみに、私はすごく風邪をひきにくいタイプです。
5年か10年に1回、何か体力や抵抗力がひどく落ち込む理由があった時にたまたまひくくらいです。
インフルエンザも、予防接種を一度も受けたことがないのに、かかったことはありません。
子ども時代に学校閉鎖になる程流行した時も、毎日満員電車で長時間通勤をして、不特定多数の人が大勢出入りする職場に長く勤めていた時も、周囲が次々罹患する中、私だけ感染しませんでした。
私だけ生まれながらに特別免疫力が強かった、なんてことはないでしょう。これはやはり、ウイルスによる感染症の予防には、手洗いがとても大きな効果を発揮していることの表れではないでしょうか。
ウイルス感染の経路
風邪(普通感冒)の6割程度は
「ライノウイルス」
という種類のウイルスが原因です。
これはのど・鼻の粘膜を刺激して鼻水を発生させるウイルスです。これはインフルエンザウイルスも同じですね。
のどが荒れて鼻水が出ると、咳やくしゃみが出ます。すると、空気中にウイルスがたくさん含まれる唾液や鼻水の飛沫が飛ばされます。
それを直接吸い込んで感染する「飛沫感染」ももちろんありますが、飛散する距離には限りがあり、飛沫がいつまでも空気中を漂い続けはしません。
多くが、飛沫が飛んでくっついたところを触って、その触った手で別のものを触って、そこをまた別の人が触って・・・・手指による「接触感染」によって拡散されていきます。
身体から出て物に付着したウイルスは2時間以上も感染力を保って生き続けるそうです。2時間前に感染した誰かが触った所を後から来て知らずに触ってしまい、その手で目や口や鼻や食べ物に触ると、感染してしまいます。
ウイルスを身体に摂りこまないことが重要
ウイルスを持っている人(風邪をひいている人)が咳やくしゃみでウイルスを飛散することを完全に防ぐのは難しく、鼻をかんだティッシュを持った手で他のものを触らずにいることもなかなかできません。ひいていない人も、空気を吸わず、どこにも触らずにいることもできません。
電車のつり革や手すり、蛇口、椅子の背もたれ、ドアノブ、エレベーターのボタンなど、触らないわけにいかないことが、世の中にはたくさんあります。大事なのは、
- 触って自分の手指にくっついたウイルスを口や鼻から摂りこまないこと
- 口や鼻から入ったウイルスがのどや鼻に留まっている間に外に出すこと
の2点です。
鼻はすすらずによくかんで、ガラガラうがいを良くすることと同時に、とにかくきちんとウイルスを洗い落とす、手洗いの習慣がとても大事です。
手洗いのポイントは「ハッピーバースデー♪」
20秒以上泡立てながら石鹸で手を洗おう
正しい手洗いについて、幼稚園や小学校低学年の時に習ったことをもう一度、ポイントを絞って簡単にまとめてみました。
- 石鹸をよく泡立てるように洗う(最低20秒以上洗う)
- 手の甲、爪、手首、親指、指の間をよく洗う
- よくすすいで洗い流し、よく乾かす
ウイルスは、手のシワの隙間や爪と肉の間、指と指の間など、微妙な凸凹の中に潜り込み、隠れてしがみついています。
爪ブラシなどでこすっても隙間の奥には届きませんが、石鹸の泡の力で汚れと一緒に浮き上がらせて落とすことができます。
よりきめの細かい泡で指先や手の平、関節のシワの部分を包み込んでしまうことが重要です。
きめ細かい泡を作り、バイキンを浮き上がらせるには、ある程度の時間くしゅくしゅと泡立てながら洗うことが必要です。その時間が“最低20秒間”なのだそうです。
毎日「ハッピーバースデー トゥーユー ♪」
アメリカで始まった20秒の手洗い呼びかけの方法が、最近は日本の保健所などでも盛んに啓発されています。それは、
というものです。
この長さが、丁度20秒くらいになるのだとか。最近は幼稚園での手洗い呼びかけにも使われ、外遊びの後に水場に並んで、みんなで「ハッピーバースデー トゥーユー・・・♪」と歌いながら手を洗う子どもたちの様子が見られます。
おとなの皆さんがいきなり会社のトイレで歌っているとちょっと怪しいですから(笑)、どうぞ心の中で密かに歌いながら、しっかり20秒間くしゅくしゅしてください。
予防接種より、その方が風邪予防効果は絶大です。手荒れが気になる人はクリームなどでケアすることも風邪予防のうちです。
皆さん、風邪を防いで、元気な秋冬を過ごしましょう。
秋冬は乾燥もするし、風邪予防ちゃんとやらないと簡単に風邪ひいちゃうからね。その日誕生日の人をネットで検索してみたりして、その人にハッピーバースデーしたらなんだか自分までハッピーになれるかも。