親を、どうする? (小林 裕美子著:コンペイトウ書房)
という介護を主題としたコミックエッセイの1ページにこんなせりふがあります。
(自分の母を介護してくれる妻に対して夫が)もしかしてオレ、母親の老いをみとめたくなかったのかもしれない。(中略)最近、忘れっぽくなっている母の変化にうすうす気付いてはいたけど(中略)しっかりして欲しいと思う母親像があったからぼけただなんて思いたくなかったんだ。
厚生労働省を始め、たくさんの医療、介護の関連機関から認知症の早期発見が大切だと主張しています。しかし実際にはこのせりふのように、なかなか認められない、認めたくないのが親の認知症です。
しかし、それが発見、発症を遅らせることになりかねません。大切な両親に人間らしい生き方を全うさせてあげたいと思うなら、早期発見はとても大切なことです。
認知症を正しく理解する
認知症は加齢による脳の老化だと思い込んでいませんか?老化だから治らない、ただ見守り、介護するしかできない、そんな風に思っていませんか?
病気や一時的な症状の場合がある
脳外科の手術、治療で回復するケースがあります。
1.正常庄水頭症
60歳以降に発症しやすく、足に力が入らない、よく転ぶようになる、物忘れがひどくなる、トイレが近くなる、といった歩行障害や尿失禁の兆候があります。
2.脳腫瘍
注意力の低下、さっき言われたことを忘れる、など記憶が飛んだりすることがあります。
3.慢性硬膜下血腫
治療が可能な認知症の代表とも言えます。(Wikipedia慢性硬膜下血腫より)高齢の男性によく見られ、体の片側のまひ、失語症、失禁などが特徴です。
これらの場合、治療で劇的に良くなる場合もあります。
内科的な治療で良くなるケース
甲状腺ホルモンの異常の場合、誤った、または症例にあっていない薬の服用が原因で、認知症のような症状がでることがあります。この場合、薬をやめるか調整すれば回復します。
<注意!>
長期間放置すると危険です。脳の細胞が深刻なダメージを受け、回復が難しくなります。一日も早く受診を!
早期発見には医療機関の受診を
しかし、実際には認知症の早期発見は初期であるほど難しいのが現状です。専門の医療機関ですと、検査機器がしっかりとそろっており、知識と技能を備えた専門家による検査が可能です。
早期発見のメリット
進行を遅らせることができる。
認知症の代表例であるアルツハイマー病は、発症してから早いタイミングで薬と使い始めると健康な時間を長くできます。
発症後のトラブルを減らすことができる
早期発見によって、
1.後見人を自分で決めることができる
残念ながら認知症が進行し、寝たきりになると自分で介護や医療に関することの決定ができなくなります。そうなる前に自分の状況や価値観を理解してくれる代行者を選び、よく話合うことができます。
2.介護の方針を自分で決めることができる
自宅介護にするか施設に入るか、病気になったとき、の方針などを自分で決めることができます。
3.自分に関わる専門家を早くに探すことができる
専門医やケアマネージャーなどの専門家を早くに見つけ、信頼関係を築くことができます。
以上のように、住まい、財産、介護と治療の方針を長いスパンで計画をたてることができます。
本人と家族の生活を守るため
また認知症が軽症で、自分の状況が理解できる早期の受診は、本人と家族が認知症を受け入れ、理解を深めていくことができます。その結果、さまざまなトラブルの回避につながります。
認知症の兆候が見られても、動揺したり、不安から認知症患者を叱咤(しった)したりするようなことはせず、まずは専門家のもとに足を運びましょう。
「早期発見」か「そうじゃないか」で全然違う未来だよね。つらいけど向き合えば最悪にはならないはず!