2016年春、動物園のあるペンギンカップルのニュースが、ネットで話題になっていました。
ドイツのベルリン動物園に、雌と交配するため連れてこられた2匹の雄のキングペンギンが、どうもお互いに愛し合うようになったらしいことが判明し、G(ゲイ)カップル専門のペンギン施設に移されることになった、とのことです。
同性愛は、繁殖の成功を導く?
動物界の同性愛は日常的なこと
これまで世界各地で約1500種の動物に「同性愛行動」が確認されています。動物園の動物にも、野生の群れの中でも観察され、自然界ではそう珍しいことではないようです。
生物は皆、厳しい生存競争の中、繁殖力が弱いものは自然淘汰されていくのが常識だとすると、一定の割合のものが同性愛に向かうのは、異常なことではないのでしょうか。
実は、中には、種の保存を維持するために同性愛行動が行われている、と考えられる例もあります。
モテない雄が雌を振り向かせる作戦
熱帯魚の一種「スリコギモーリー」では、からだが小さい・色が美しくないなど、雌争奪戦で負けてしまうタイプの雄は、からだが大きく色合いも美しいモテ期の雄と交尾するようになる傾向が確認されました。雄と交尾すると、その後、雌が寄ってくるようになるそうです。
魚類の一部では、雌に「他の雌と交尾した雄と交尾したがる」という性質があります。交尾に適した雄と思うのかもしれません。スリコギモーリーの場合、雄同士でも交尾している姿を見せると、雌は魅力を感じてくれるようです。
雄同士カップルでも子育て
「ペンギン」のGカップルは、世界の多くの動物園で報告されています。
雄雌が共に卵を温め子育てするペンギンの場合、Gカップルでも子育て欲求を示す、という特徴があります。有精卵を与えたところ、立派に孵化させて、子どもを育て上げた例もいくつか確認されています。
ペンギンには、何かの理由で卵を放棄してしまう親がたまにいるそうで、もしかしたら、「里親」としてGカップルは必要なのかもしれません。
雌と安心して繁殖するために雄の恋人に守ってもらう
オーストラリアの「黒鳥」の中には、Gカップルに雌も入れて3匹で営巣するケースが見られます。この場合雄は雌とも交配するB(バイセクシュアル)です。雄が2羽で巣を守るほうが、天敵から巣を守る上で安全だからだと考えられています。
雌同士のほうが子育てしやすい
カリフォルニアの水辺にいる「アメリカオオセグロカモメ」の群れの14%はL(レズビアン)カップルです。一緒に営巣して、2羽とも無精卵を産みますが、中には有精卵も交じっていることが多く、雌は雄とも交配していることがわかります。
雄と繁殖はするものの、ヒナを育てていくのは雌2羽で行うほうがうまくできる傾向があるため、雌同士でつがうと考えられています。
異性相手が見つけられなかった個体のハケ口
前述の黒鳥、カモメ以外にも、自然界の鳥の群れに同性カップルが混ざっている例は、多く確認されています。やはり交配はしませんが、一緒に営巣します。
- アンデス山脈の「イワドリ」は雄の40%がG行動をします。
- オアフ島の「アホウドリ」の調査では、60%が雌で、31%はLのつがいでした。
雄雌両方に同性カップルが発生するケースがないため、
と分析する学者もいます。
ありのままを受け入れよう
社会性や知能の高い動物に多い同性愛
社会性の高い哺乳類にも、同性愛行動は多く見られます。
- 「キリン」は雌と交配する前の若い雄の一部に同性愛行動をする時期があります。
- 「ライオン」のGカップルは、雄だけの群れを作り、交配行為も行う例が見られます。
- 「イルカ」は、Gだけの群れも、B行動をとる雄がいる通常の群れもあります。
- 肉食系ではない「羊」の社会でも8%の雄はGカップルになります。
- 霊長類の「ボノボ」には、雄同士・雌同士両方の同性カップルが確認されています。
これらの同性カップルの存在理由については、
- 愛情表現や交配テクニックの練習説
- 群れ内の力バランス調整説
- 快楽説
などがいわれていますが、本当の所はよくわかりません。
昆虫の世界にも同性愛行動をとる種が頻繁に見られますが、哺乳類以上に謎は多いです。
理由を問わず、世界は受け入れる方向に
冒頭のドイツのペンギンの話、日本の記事では概ね、
「ペンギンがGだったことにビックリ!」
と、面白記事としてまとめられていました。海外では、
「愛し合うふたりが引き離されなくてよかった」
と、心温まる話題として取り上げられたものが多いです。
1500種の中には、絶滅が心配な種もあり、なぜ種の保存本能に反するものが発生するのか、神様の考えは計り知れないものがあります。しかし、存在の是非を問わず受け入れ、人間も動物も、それぞれ幸せに生きてほしいと願う人たちが、世界では増えています。
男らしさ・女らしさ(ジェンダー)の束縛が強い人間社会と違い、動物界ではLGBのカップルを異性カップルが迫害する例はなく、T(トランスジェンダー:自分は生物学的性と反対の“らしさ”を持つと自覚する人々)の問題はなさそうです。
もしかしたら、動物界のほうが先進的なのかもしれません。
動物界は「それが?なにか問題でも?」といわんばかりに、自分たちと違うからって迫害したりしないんだもんね。人間界は見習うべきだよね。